233の1ー2025年 卯月
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スゲー!仙人さま大変だ!山が燃えてるよ! 4月1日(火) 早春の山荘にサクがやってきた |
![]() 木瓜満開(奥庭) |
![]() 錨草池際) |
![]() 水仙(前庭) |
![]() 葉の出た座禅草 |
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![]() 紅白椿(奥庭倉庫) |
![]() 水仙群落(前庭) |
![]() 白椿(奥庭) |
春合宿・シーシュポスの神話 久々にゆっくりした日程で訪れた山荘では、仙人が大歓迎してくれた。 それもその筈、実はシーシュポス並みの苦行を伴う、ビッグイベントが計画されていたからだ。 仙人山は名も無き山頂であったのだが、測量標識から知った標高が何と1002m、 そのまんま『仙人山』と命名されたのは 偶然と必然の果実としか言いようがない程の奇跡の頂なのだ。 今ではグーグルマップで検索さえできる。 森の動物たちの憩いの場であるように切り株のテーブルと椅子も設えられ、 いかにも心地良さげな小広場になっている。 仙人はその頂にケルンの建立を思い立ったという訳だ。初日の散歩は早速仙人山へ。 山頂にはいくつかの岩が集められ、その中でもひと際大きく山型の岩が目立つ。 実はこの石を見つけて、ケルン建立の閃きが舞い降りたらしい。 仙人山山頂は、平らかで柔らかな地面なので岩の欠片も無い。先ずはケルンを立てるための岩が必要になるわけだ。 というわけで、明日から石運びが始まる。 |
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ありゃ、土の中から葉っぱが出てきたぞ! ずいぶん小さいね、畑の春菊の芽に眼を耀かせるサク君です 夜から雪予報だったのを思い出し、発芽したばかりの春野菜が全滅してしまうと気付き 大慌てでベッドから跳び起き、 ヘッドランプを点け、ブルーシートを抱えて葡萄畑に降りる。 ぶつくさ文句を垂れるかと思った傷付いた右腕は、痛みなんぞどこ吹く風。 何とかシートを広げ終わってふと耳をすませば、何か忘れていないかいとの問いかけ! そうか、シートで防寒対策は出来るが雪が降るとその重さで、シートが地面に押し付けられ、 小さな芽が圧し潰されてしまうでは! 傷付いた右腕が教えてくれるなんて、これじゃ益々断裂した肩腱板の棘上筋腱は 痛みが広がるのに、ありがとう! |
![]() 芝桜(前庭) |
![]() 躑躅(中庭) |
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![]() 大根草(池端) |
![]() 山吹(池上) |
![]() チューリップ(奥庭) |
![]() 番う斑猫(ハンミョウ) |
![]() こちらでも斑猫が春を告げる |
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![]() 木蓮前庭) |
「リュカ数9」と名付けられた特別な時計 翌日は天気予報通り朝から雨で山へは入れない。 一日中降り続く雨に、外での活動が出来ないので、思い切って時計作りに取り掛かる。 仙人の手ほどきに従って、部品を組み立て、文字盤に小さなクリスタルを張り付け、 気がついたら素敵な時計が完成した。 蒼い海の中、宇宙の青のようでもある、その深い蒼はロタブルーと呼ばれる。 嘗てダイビングで訪れたロタ島の洞窟の中の画像が時計の文字盤となって、 何ともいえぬ不思議な作品を生み出した。 「リュカ数9」と名付けられた特別な時計。まるで海の中のように、時を刻む時計は無音なのだ。 見つめていると吸い込まれそうな深い蒼の世界。 其処に過去・現在・未来へと螺旋状に描かれ続ける時が流れる。 さて、未来にフィボナッチ11を描くことが出来るであろうか? |
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うーん、微かに匂う早春の香り! 前庭から採ってきて食卓に飾った山茱萸(サンシュユ) にうっとりするモモ君でした どうしたらいいのか、シートの下にブロックを入れたらどうか?いやブロックでは低すぎて駄目、 そんなら買い物かごならどうだ! そこで広い2枚のシートの下に籠を6個入れてみた。で今朝起きたら雨で雪の降った形跡なし。 となると芽に光が届かなくなり、折角の恵みの雨も注がれ無くなるので、今度はシートの撤去。 撤去始めた途端、雨に雪が混じり始め焦る。 あっという間に雪景色となった前庭では、真っ先に咲き始めた早春を告げる花・山茱萸が 仄かな香りを雪に載せてモモに呼びかける。《仙人が呼んでいるわよ!》 遥か離れた高層パークタワーから駆けつけたモモ。あら、あたしもお手伝いするわ! |
![]() これが時計!(TV下) |
![]() これも時計か(ピアノ上) |
![]() 海の洞窟(卓上) |
![]() ロタホールDV(上の光は洞窟出口) |
岩を拾い集め、山頂に運び上げる 3日目は晴れた。いよいよケルン建立に取り掛かる日だ。 雨上がりの山道は、一昨日よりほんの少しだが明らかに育った木々の新芽が日に透けて実に美しい。 森全体が淡い黄緑がかったベールを纏っているかのようだ。 小さなザックを空身で背負い、竹森山の先の斜面にて、ケルンに使用出そうな岩を拾い集め、 山頂に運び上げる大小さまざまな岩を 次々とザックに放り込んだはいいが、何しろ石ころである。 いざザックを持ち上げて背負う段になると重いのなんの。 荷を背負って登ること自体が久しぶりの行為であるのに、いきなり重量が ずっしっと肩と背に食い込み、 ヨタヨタとバランスを崩さぬように最後の急斜面を登った。 山頂には既にメインになる岩が待っている。形の良い三角形の大きめな岩だ。 その岩を中心に据え、小さくとも形の良いケルンを作ろうとの目論見、次回はセメントなどを運び上げるらしい。 山頂標識に取り付けてある、陶板の仙人山標識を外し持ち帰る。 仙人の頭の中には完成図がすでに描かれているのだろう。 下山は空身に戻ってだから、楽なことこの上ないが、 途中で形のよさそうな岩や、使えそうな岩をキープして分かりやすいように寄せて置く。 |
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凄い!この大きな蛙どんどん卵を産んでる 4月5日(土)晴 山荘の池は蛙の卵でいっぱいだよ! 仙人山から扇山に連なる広大な森には1つも池が無い。 肉食の大きな蝦蟇は森に棲んでいて昆虫やミミズを食べ、池が必要な繁殖期の早春にだけ森から山荘池に大集合。 凄いんだぜ、夜になると池から奥庭に上陸して一斉に交尾を始めるんだ。 雄はなんでも構わず動くものに抱き着き、一度抱き着くと二度と離すまいと雌を絞め殺しちゃうこともあるんだってさ! 夜、奥庭の灯りを付けて生ごみをコンポストに捨てに行くと、足場の無い程群れていて仙人もびっくら! この蝦蟇、交尾後に再び池に戻って産卵を始めるんだけど、驚くなかれ1回に 1500~1万4千個も産むんだってさ! それが何十匹も池に産むと池がどうなるか想像出来るかい。2つの池を結ぶ水路は卵の氾濫! |
![]() おや産卵かいと錦鯉 |
![]() 産卵中でーす! |
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![]() 次々出てくる卵 |
![]() このゼリー層は多精受精の防止だぜ! |
重荷を背負って歩くことに少し喜びを 4日目。朝9時過ぎ出発を目指したが、用意するものが多くて、出発したのは10時を過ぎていた。 今日は最初からリュックの中身は重い。セメント。砂。水。シャベル。 陶板を嵌め込んだ正方形のコンクリートの塊。 セメントを混ぜるための桶。それらを分担して背負うので、昨日よりは大きいザックに入れる。 途中で昨日集めた大小の岩を更に詰め込むのだから、最終的な重さは考えるだけでぞっとする。 昔の山行で、30キロのザックを背負ったことがあったが、家の玄関で立ち上がれなくて焦ったことを思い出す。 10キロも無いだろうに、セメントやら水やらは異常に重く感じられ、嘗ての山行を想い出しながら、 なんとまあ昔は元気だったのかと呆れる思いだ。 それだけ酷使したのだから、今足やら腰やら痛かったり不調だったりするのは無理もないことだと妙に納得しながら、 重荷を背負って歩くことに少し喜びを感じている。 |
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きゃー!卵に吸い込まれちゃうよ! 朝日を浴びて産まれたての卵が揺らめく 個々の感性は長く培われてきた体験と経験を分析する思惟によって形成されるので、 容易に変えることは出来ない。 それを充分認識しながら敢えて仙人は蝦蟇の卵を光に晒してみた。 生まれたばかりの朝の光を吸い込み燃え上がる漆黒の卵は、 無限の螺旋を描きながら次元の異なる世界へと連なる回廊となり、妖しく生命をいざなう。 蝦蟇が未来へと送り出す生命はなにゆえ漆黒なのか! 夫々の感性に訴え投げかけながら、そこに投入された美しい少女の微笑みが、 忌み嫌われがちな蝦蟇の卵を至高の高みへと導き、 もしや僅かな人の感性に変化の兆しを与えはせぬか! |
![]() 光を浴びる漆黒の卵 |
![]() 1回に1万個前後も産卵 |
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![]() 蛙卵に圧倒される鯉 |
![]() 光に浮かび上がる卵 |
ザックの重みでバランスを崩し 仙人も途中で泣き言を言いながらも、さすが超人、 最後は重い岩を加えて無事に頂上まで登り切った。 私は途中の岩を詰め込んだ後、更に一つ拾おうかと斜面に屈もうとしたら、 ザックの重みでバランスを崩し思い切り転んでしまった。 転んだあと立ち上がるのが大変で、斜面で体勢を立て直しやっとのことで起き上がり、頂上へ。 取り出したプラスチック桶にセメント、砂、水を加えしっかりと撹拌。 ケルンの真上に陶板標識を設置、岩の隙間にどろりとしたセメントを流し込み、 シャベルやスプーンを使って上手く接着剤になるように整える。 すべての材料を使用してどうにかケルンらしくなった。 でもそれは正面から見た時の話し、バックがセメント剥き出しで物足りない。 もう少し岩が必要だ。次回に課題持越し。 |
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うあーお尻から出てきた卵に潰されるよ! サク君はギブアップと叫びながらも何だか嬉しそう! 仙人のそんな一縷の身勝手な願いが互いの感性に回廊を開くなら、1年に1度訪れるか否かの、 この蝦蟇の生命の祭典の瞬間に立ち合わせたいと仙人は、 12日の山荘訪問を企画したのかも知れない。 そんなメッセージが作成画像 《きゃー!卵に吸い込まれちゃうよ!朝日を浴びて産まれたての卵が揺らめく》には 込められていたのかな!と仙人は想ったりもするのです。 早春12日の集いは中止。 晩秋の集いにもそんなインパクトのある画像が提供出来たらお逢いしましょう。 |
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へなちょこ仙人さんらしいわね! 4月10日(木)晴曇 奥庭の杏子が散り始めました! 高層タワーマンションの14階12号部屋から遥々と早春の風に載って、 山荘の森まで流れてきたのは確かにあの少女の声。 あら微笑んでいるだなんて、へなちょこ仙人さんらしいわね! でもあんな大きな口を開いて瞳をキラキラさせて微笑んでいるなんてちょっと無理があると思いませんか! あれはどう観ても吸い込まれているのではなく、 生まれ出づる悦びを叫び溢れる生命の光を瞳から発しているのです。 ですから吸い込まれているのではなく、 漆黒の卵から羽搏いて、光り輝く世界へ飛び立つ瞬間なのですよ。 |
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仙人の心象風景と少女との回廊! 4月10日(木)晴曇 奥庭のチューリップが咲きました! へなちょこ仙人さん、未だ襁褓をしている美しい少女本人が云ってるのですから間違いありません。 仙人の歓びは一気に沸騰したものの幻聴かも! あの少女があんな遠くから風に載せて、自らの想いを伝える能力を持っているなんて! 森を静かに揺らす風に耳を傾け、全身全霊を込めて少女の声を聴き取ろうと試みましたが、 やはり幻聴だったのでしょうか最早やわらかな風のそよぎしか聴こえません。 しかし聡明な少女が仙人のさり気無く投げかけた《微笑み》に敏感に反応し、 すぐさま自らと仙人の心象風景に回廊を開いたのではと、仙人は想ったのでした。 |
神を欺くシシュポスとなって世界に反抗し自由を得るんじや!
![]() 岩、セメント、機材の荷上げ! |
![]() やっと竹森山到着! |
![]() 重くてギブアップじゃ! |
![]() 仙人山まで荷上げした台座! |
![]() 岩とコンクリ台座の取付! |
森全体が明るい緑に包まれ 5日目。最終日にも関わらず、今朝も早くから追加のセメントや砂をザックに詰め、仙人山を目指す。 昨日に比べれば楽勝と言いながらも、連日の荷揚げ(石揚げ?)に足取りはやや重い。 仙人は「今日は景色を見る余裕がある、昨日は重すぎて足元しか見れなかった」と余裕だ。 森の新芽はいよいよ育ち、森全体が明るい緑に包まれ始めている。 未だ新緑の森というには早すぎるこの時期には、何とも言えない透明感に満ちた緑の空気が流れる。 芽吹く木々にはまるでDNAの形が見えるようで、生まれたばかりの小さな葉っぱは、 それぞれの個性を発揮して、色も形も実に様々でついつい見惚れてしまう。 特記すべきは、三つ葉躑躅の鮮やかなピンクだ。 早春の森をいち早く彩る三つ葉躑躅、今回この花に毎回出会えるのが最高のご褒美だ。 仙人山の頂までは、南斜面のずっと下まで三つ葉躑躅のピンクが彩っている。 |
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小さなケルンにピッケル立てて! 4月18日(金)曇 やっと山巓らしくなったね! |
ケルンらしく頂上に 毎日登っていると、日ごとにその色がより鮮やかさを増して行くのが分かる。 山荘から見える範囲の桃の花は、以前に比べると本当に少なくなってしまった。 盆地全体には、桃の絨毯が煙ったように見渡せるけれど、 山荘直下に咲き誇っていた桃畑は縮小されてしまったので、それは何とも淋しい。 今回はひたすら仙人山へ通ったので、村の桃畑を鑑賞する暇もなかった。 それだけに、稜線から見る満開の三つ葉躑躅の美しさが殊更心に深く染み入ってきた。 山荘に来る途中で、玉宮小学校の近くに見事な枝垂れ桜があり、車を止めて見物した。 真下から見上げると、まるで花の滝のようで圧倒される美しさだった。 どれも、ピンクの美しい花だが、桃の里はやはり桃色の花の絨毯であって欲しい。 3度目の石運びをして、仙人山の頂に。 全部の石を積み上げたケルンは、苦労した甲斐があって後姿も含め、 かっこよくなり、ケルンらしく頂上に違和感なく収まった。 |
![]() ここにも岩が欲しい! 4月21日(月)晴 仙人山の頂き |
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![]() これでよろしいでしょうか‼ 越冬した緋縅蝶もケルン建立に参画 |
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![]() 岩、セメント、水を運び! |
![]() 可愛いケルン完成! |
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![]() 痛てて腰痛じゃ! |
![]() コンクリ台座に乗った標識 |
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![]() やったー! |
次にこのケルンに逢えるのはいつ 私達が観ることのできない遠い未来を、このケルンは静かに見つめ続けるのだろう。 下山時に、仙人が嬉しそうに叫ぶ。「ここまで来て振り返って!」 急いでその場所まで下って振り返ると、 ケルンの上の陶板が、まるで呼びかけるかのように真っ白に光っている。 そうか、下から登ってくると、まずこんな風にしてケルンの存在と出逢うんだ。いいなあ。 次にこのケルンに逢えるのはいつのことか分からない。 もしかしたら、もう仙人山に登る体力が残っているかどうかも分からない。 だとしても、初めの一歩のケルンとの出逢いはくっきりとイメージできる。 今はそれだけでも満足だ。 いつかこの景色をまた自分の足で観たいと願いつつ、ゆっくりと下山した。 |