1602ー2019年  弥生

3か月れの大掃除じゃ!
忙しくてなんて言い訳して怠けていた大掃除

左手にスプレーワックスを翳し、時折プシュ、ぷしゅーとフローリングに吹きかけては何やら床上の仏陀に
語り掛けている様な、独り言を言ってるような、はたまた脳内で勝手に言葉が踊ってる様な仙人。
ちょっと踊り子を、とっ捕まえて聴き出してみっか!

機能を失った結のアウフヘーベン
螺子山が磨り減り最早ボルトを差し込んで回しても、締まらなくなってしまったナットは結としての機能を失っている。
ボルトの螺子山も摩耗していたら悲惨な結果になることは火を見るよりも明らかである。
路上を疾駆する車のタイアが外れたり、波を劈き大洋を渡る船の隔壁が剥がれたり、高度1万mを飛ぶ飛行機の翼が捥げたり。

数千個に及ぶナットで造形された仏陀は、総て廃棄処分となり機能を失った結のアウフヘーベンなのだろうか!



使用頻度の激しい食卓下床は念入りに!

眠る努力何て糞くらえだとばかり、ベッド照明を点け
フォーサイスの「コブラ」の
下巻を読み始めたら止まらない。
世界の麻薬市場を牛耳るコロンビアの
コカイン・カルテル「兄弟団」を撲滅するための
用意周到な準備が終わり、
いよいよカルテルへの≪威喝≫、≪攻撃≫更には
≪猛毒≫の仕込みが開始される。

緻密な下調べと詳細なデーターを元に描かれた
フォーサイスの7年前の最近作。
今年81歳になるフォーサイスがこれまで
培ってきた新聞記者や戦闘機乗りとしの体験と、
溢れんばかりの知的好奇心を
織り込んだ作品が、ヤク効果を完全に封殺。
今夜も眠れないぜ!

あれっ、もしや仙人の常習してるヤクって、
まさかコカインじゃないよね。
仙人はゾビクロン10mgとか云ってるけど!
そうであるなら例え螺子山が
磨り減りナットとしての機能を失っていても、より高次で
結としての意味を発揮するのではと、
2倍のヤクを呑んで
仏陀の顔を仰ぎ見てやろうと企図したが
寝ぼけて3倍のヤクをゴックン。

あれ3粒あるんじゃないかと口の中に入れてから
気づいたが既に遅し。
まっ、いっか、
よく眠れて仏陀の顔を仰ぎ見ながら、
アウフヘーベンした涅槃を観られるかもなんぞと
いつもの楽天主義に身を委ねベッドに
ドボンと飛び込んだが眠れない。
ヤクの役立たずめと罵りながら輾転反側を
繰り返すこと2時間。

 
外は雨だし山トレ止めてプールに行こう!



結と化す森(上条の森)
形而上へ

2つの鋼体を堅く結びつける
機能を失ったナットとボルトが
思索に耽る。

確かにこの連綿たる無数の結は
時には大地を疾駆し、
大海原を奔り天空を劈く機能を持った
巨大マシーンを生み出したりする。


結合を試みる森(上条の森)
しかしそれらは総て形而下の結。
形而下の世界で
磨り減ったりし役に立たなくなった
ナットを集積し、
新たに仏陀として再生させられるなら、
若しや形而上の結への
アウフヘーベンが可能になるのでは!

結としての記憶をとどめた儘、
1つの造型に繰り込まれた
自らに気づき、機能を失ったナットは
形而下を超えるのだ。

形而下から形而上へ(船宮神社)
小倉山から上条山、
更に船宮神社、読書の丘へと逍遥。
4時間ほどの散歩の
心地よい疲労とゾビクロンが
やっと相乗効果を齎し眠りの世界へ。

朽ち果てた森の老巨樹の
モノローグが子守歌となって波打つ。
結と化した老樹、森にアートを描き
形而上化を試みる倒木、
虚ろな内部を曝す神となった巨木。

それらが本年81歳となった
フォーサイスに重なる。
それでは眠りの世界でフォーサイスと
涅槃を夢見るか!

大地に還る(上条稜線)

フォーサイスを語る上で欠かせない逸話として、
赤道ギニアのクーデター支援がある。
『ジャッカルの日』の印税により、
ナイジェリアでの内戦に敗れ祖国を失った
ビアフラ人のために傭兵部隊を雇い、
赤道ギニア共和国に対しクーデターによる
政権転覆を1972年に企てた。



80歳のフォーサイス
(wikipedia)

朽ちた巨木の祠(船宮神社)




時を超える結
2016年12月30日


≪ 結≫としての記憶をとどめた儘、森羅万象の輪廻に繰り込まれた自らに気づき、
機能を失った廃屋は形而下を超えるのだ。
嘗て森の樹木として天空の高みへと、限りない飛翔を試みていた檜は伐採され板や柱にメタモルされ、
新たな造型に組み込まれ家屋となり、人と人を緊密に結びつける≪結≫となった。

幾多の星霜は板や柱にゆっくりと忍び込み解体を促し、≪結≫としての家屋の機能を奪っていく。
支える力を失い朽ちた柱は屋根を崩壊させ、茅葺屋根の骨組みを露わにする。
如何に熱情に溢れた若い夫婦といえども、最早この廃屋の中で日々媾い新たな生命を生み出すことは叶わぬ。
しかし≪結≫としての記憶の刻印は、朽ち果て森羅万象の輪廻に繰り込まれ、
大地への回帰を認識し、形而上の≪結≫へのアウフヘーベンを可能にするのでは!

試しに廃屋に呼びかけてみる。
その途端、今まで静寂の背後に潜んでいた上条の森の木々、山荘で厳しい冬を耐えた白菜、青梗菜、ブロッコリーなどが
一斉に大地讃頌の詩を騒がしく朗々と謳い始めたでは!
本当に大切な記憶の刻印は如何なる風雪にも耐え、永劫に消えることなくアウフヘーベンされるんだね。




暖かな日差しに送られて
帰りの電車に乗りました。
(全く何でこんなに厚着で来てしまったのか。)
お土産のキュウイと干し柿で
重くなったバックと、
もこもこコートを
網棚に上げます。

車窓に寄りアッという間に
去ってしまう山荘を目で追うと、
この3日間の事が甦り
自然と腿の辺りに力が入ります。

そして今回のいろいろなことを
反芻してみると、
ぬくぬくとした日差しとは別の
暖かいものが
身内から湧き出します



上条森入口の廃屋

苦痛でしかなかった山歩きが
楽しくなってきたのは
やっと最近のこと。
しかしいつでも何らかの困難が
私に襲いかかり、その時は必死です。

今回の小倉山の水晶峠ルートは
谷からの挑戦のはずでした。
キラキラした石に驚いていると
傍には本当の水晶が!
水晶があるとは聞いていましたが、
こんなにあるなんて
思いもよらないことでした。

欲張りな私は次々にセーターの
ポケットに入れていきます。
おや、もっときれいな水晶がある、
今度はもっと綺麗だ。
なんて言っているとポケットは
水晶で一杯です。



茅葺屋根の骨組み 

二階が潰れた!
 


でも私は一度手にしたものは
捨てません。
セーターがおかしな形に伸びています。

体重の重みに水晶の重みを
加えた私はますます上へあがる力が
無くなっていきました。
ヨイコラショ、
急斜面で身体が上がりません。


赤いトタン屋根崩壊

足場が悪いと
ズルズル滑り落ちていきます。

仙人様から
トランシーバーの声が聞こえます。
え~こんな所で
返事しないといけないの?
急斜面でトランシーバーを
取り出し応答します。
今何処にいる?



台所のみ姿を留める

と言われても・・・
いったい私は何処にいる?

さっきより水晶峠は
遠くなってきています。
谷を登っているはずでしたが、
今は何処?尾根のようですが、
これは水晶峠には通じていません。
説明もできません。




上条森の生命力

登り損なんという言葉があるなら
正しくそれです。

やっと仙人様の
姿が見えてきました。
しかし近づけません。
急斜面を登れていないのです。
下半身に力を入れて登らなくては、
今頃思っても遅いのです。


折れても生きる!

毎日訓練しなくてはいけないのです。
重い身体を持ち上げる為
腿を上げるのです。
苦手でも身体を鍛えるのです。
そしてルンルンのスイスイで
あのお日様の
出て来る水晶峠に行くのです


啄木鳥に抉られ


山荘から見える水晶峠は
新生児の頭のようにぽわぽわして
気持ち良さそうなのです。
でも赤ちゃんと言っても侮れません。
そこで私は腿に力を入れて
登る訓練をしますと
ここに誓うのであります。

2日目は残照の扇山。
登り始めから木々を照らす光は
最後の挨拶をしているようでした。


 根の一部が大地に在る限り

早く登らなくては
太陽が沈んでしまう。
ポケットに忍ばせた小さな懐中電灯を
手で確かめます。急がなくては。
扇山への最後の登りでは
太陽が待ち構えていて
目も開けていられない程でした。

今私を照らしているこの輝く太陽は
もう少しすると、知らん顔して
次の誰かの所へ行ってしまうのです。


 
捩じ曲げられても



長い冬をえた山荘白菜

その時ふと向こうの針葉樹の森を見ると、
奥は真っ暗になってきていました。
以前下る道がわからず、日が沈んだ後に
下山したことがありました。

その時は針葉樹の森を青白い月の光が差し、
それは幻想的な下山でした。
その同じ森なのに今回はただ無気味です。



登りの時夕日を受けて輝いていた麓の村はもう山々の影に
入りくすんでしまいました。
急がなくては、山荘に来て何度か登っている扇山です。

何とか帰れそうです。
落葉樹の森はまだ明るく道も大体思い通りに下れました。
私を誘う遠回りルートも回避できそうでした。
太陽が今私のところにいる内に登って下りなくては。
頂上到着、即下ります

 
 
凍てつき枯死した葉の下からが!



生き延びた青梗菜

自分が光を受けている道に
居るからでしょうか。
光のささない針葉樹の森は
決して踏み入れてはいけない場所、
しかし私を誘っている
ようにも見えます。

子どもの頃、シクシク私を
泣かせていた夢と同じ闇が
そこにありました。
この闇の中で熊と出会ったとしても
嬉しくて身を投げ出すことでしょう。


雄蕊も雌蕊も光を浴びて!

レタスまで冬越しなんて!

大きなブロッコリーが沢山

秋蒔き大根も冬越成功

背中がゾクゾクしてきました。
パニックを起こしそうです。
とにかく下ります。
山荘になかなか着きません。

闇はもうそこまで迫って来ています。
あー、それなのにまた道を間違えた。
もっと左の方なのだ。
がむしゃらに進みます。

なんとか最初と同じ
ゲートから戻れました。
今回襲ってきた闇の克服は無理でしょう。


法蓮草なんぞ元気盛りもり


克服できないならば、速く、
とにかく速く行動するしかないのです。
何度挑戦しても山荘の山歩きに

余裕のあったことはありません。

必死だからこそ
その心情は鮮やかに刻まれこうして
何度も思い出す楽しみが
あるのかもしれません。

しかし、たまには楽しいだけで
登ってみたいものです。
もっと速く、もっと腿を上げて!
新年にあたり再度決心するのです。

 



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