154の3ページー2018年 長月
褐色の肌に滴る煌めく汗 9月9日(日)晴 ラケットから打ち出される7つの光球はテラスのソーラー灯へと連なり神龍を呼ぶ ≪迸る生命の激しい美しさに息を呑む≫なんて瞬間は滅多にありはしない。 疾うの昔に喪失した情感が滴る汗に触発され、仙人を揉みくちゃに揺さぶる。 白や黄色の肌に透明な光を乱反射する汗が滴っても、それは単に肉体から吐き出された水分に過ぎず存在感は薄い。 それがどうだ、大坂なおみの褐色の肌に踊る汗の何と美しい事! 唐突に甦った情感が汗に一目惚れしたのか、 汗が新たな情感を産み出したのか、兎に角仙人は息を呑んでしまったのだ。 |
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両肩から噴き出す光 こりゃ山荘にとってはビッグニュースで、 ボン・シルバーを始めとして山荘住人は大騒ぎ! 先週は台風、地震で死者続出の昏いニュースに覆われ、 どうしたことか、そいつと シンクロした仙人も2度にわたる腰と頭の負傷。 さて次こそワクワクする愉しいニュースをHPに 載せようとニューヨークで試合の始まった 夜明け前のテラスに出てみた。 オリャ、誰か居るでは! ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター から13時間の時差を超えて ≪なおみ≫が、山荘テラスに出現か! 確かこの時間、ニューヨークでは なおみはセリーナと闘っている筈だが! |
肉体をフル稼働させ汗が吹きだすのを 極上の歓びとしている仙人が、 スポーツを好むのは当然だが、仙人がスポーツ観戦を したなんぞと云う話はとんと聞いたことが無い。 そりゃそうだ。スポーツ観てたって汗はかかんからね! 従ってニュースで試合を観ることはあっても、 1つのゲームを最初から最後まで観るなんてことはない。 その仙人がだ、ビデオではあったが、なおみの 全米オープンテニスの決勝戦を通して観たのだ。 |
汗と光が球になって飛ぶ! |
球に映し出されたイオ |
職人が何やら部材表検討 |
やや、なおみがラケットを くるくる回しながら動きだしたぞ! なおみの打ち出す光の球は、 緩やかなカーブを描きながら、 山荘テラスのソーラー灯に吸い込まれ、 3人の職人を映し出す。 |
そうか先週が余りにも 昏いニュースが続いたので、 仙人め、なおみに便乗して 明るい兆しを齎そうと 夜明けのテラスなんぞに ノコノコ出てきて 何か企んでいるな! |
部屋を見回し思案 |
さては仙人め≪なおみ≫に触発されたか! |
強烈バックハンド |
どうですか、この強烈な バックハンド! こいつが13時間の時差を超えて 山荘テラスにやって来るもんだから、 そりゃ仙人も大喜び! 輝く球はまるで悟空の元気玉。 ≪大地よ 海よ そして 生きているすべての みんな……… このオラに ほんのちょっとずつだけ 元気をわけてくれ…!!!≫ |
ラケットを回しながら剛球を迎え撃つ |
このテニスセンターから 元気玉は打ち出されたんだぜ。 さて、なおみが山荘テラスに送った 元気玉の数いくつある? そう7つだ。 と云うことは、シェンロン(神龍)が お出でましになるんだ。 |
ビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター |
神龍のお告げ 徒労に終わる予感に 怯えながらもコツコツと努力を積み重ね、 苦しみに耐え 膨大な時間を注ぎ込み、 遂に成し遂げた自らの成果を 手中に収めた瞬間、 間違いなくそれは ゴールであった筈なのだ。 |
コーチングされてないと主審ラモスに抗議するセリーナ! |
そのゴールが 出発点でしかなかったと悟り、 次のゴールを目指して 再び歩み始める。 シーシュポスのように。 最初のゴールを踏んだ時、 意識下にさえ 明確な死の認識は刻まれない。 幾つかのゴールを経て、 究極のゴールが死であり、 その死こそが活動の原動力であり、 成し遂げた自らの成果は 死の認識の大きさと バランスを保っていることに気づく。 勿論、真に優れた アインシュタインのような知力は、 最初のゴール以前に 余りにも短い死のゴールを看破し、 目前に死を見据えながら 活動することもある。 |
会場はブーイングの嵐(セリーナとラモス) |
優勝トロフィーにキッス! |
流る輝く涙 |
全米オープンでセリーナに「盗人」呼ばわりされるなど、再三の暴言を浴びたラモス主審。
適切なペナルティを下したのだが、試合中はセリーナ贔屓のファンからブーイングを浴び、試合後も波紋が広がっていた。 だが、本当にラモス主審に過ちはあったのか。ここにきて47歳のポルトガル人主審を擁護する声が高まりを見せているようだ。 「カルロスは厳格だが、フェアだという最高の評判を持つアンパイアだ。 私の言うフェアとはアンパイアとしてプレッシャーに打ち勝てることを意味している。 彼は選手を公平に扱っている。予選から勝ち上がった選手だろうが、第1シードだろうが、チャンピオンだろうが、 グランドスラム初出場の選手だろうが、だ」 (au Webポータル) |
無数の透き通った龍球が仙人草を飾る 9月16日(日)晴 前庭で咲き乱れる仙人草 鼻孔に常に死の臭いを嗅ぎながら成し遂げられる営為は、 時代の手枷足枷を何の抵抗もなくすり抜け、社会の要求する他者思考にも制約されることなく 唯ひたすらに真でありたいと願う。 その営為に絵画の技術、文章を操る能力、数理的感覚の鋭さ、造形の才能、音感と一体化出来る感性などが 加わると、時を超えた智の遺産となり、人々を捉えて離さない作品に結晶することもある。 |
咲き出した曼珠沙華 |
今年のオクラは柔らかくて美味しい |
加えるべき才能は 完全に欠如しているが、 鼻孔に常に死の臭いを 嗅ぎ続けるお前が為しうることは、 生(死)を嘆きながら せめて山に登ったり 畑を耕すことしかない。 |
それがお前の仙人願望となって 今日に至っていることは言うまでもない。 その死をコアにして 活動し続けたいとの試みを 破壊願望と指弾されると、 仙人願望のお前は 寡黙にならざるを得ない。 お前の願望とはそんなもんなのだ。 仙人とは既に老いており、 死んでしまっている意識者。 であるからこそ、不老不死となる。 お前はそんなことすら知らない。 この戯けもん! |
山荘庭は仙人草満開 |
パイオニアの萩も花盛り |
夏眠から覚めた大裏銀豹紋(西畑の向日葵) |
山荘住人の嘆き! ≪ 山荘テラスのソーラー灯に 吸い込まれた 3人の職人は何処へ 行っちまったんだい?≫ 大裏銀豹紋蝶が向日葵の 上から訊ねかける。 銅金ぶいぶいなんぞ 事もあろうか食欲と性欲を 同時に満たしながら 2匹で唱和するでは! ≪なおみに何を 触発されたって云うんだい。 どうも仙人はいつも 中途半端でいい加減だね!≫ |
花粉を食べながら交尾する銅金ぶいぶい!(奥庭のアンネ薔薇) |
≪挵≫こんな漢字 みたことないのでは! ≪挵る≫ 小刻みな動作を せわしなく繰り返す。 ささいなことまで細かく干渉し、 責める。 更にはからかう、もてあそぶ、 なんて意味もあるとか。 (大辞林) この一文字挵が、お家芸だと ばかりしゃしゃり出て来て 大裏銀豹紋蝶や 銅金ぶいぶいに便乗して 忙しなく繰り返す。 ≪仙人のイイカラカゲンな 言動に断固反対!≫ |
白点4つ並ぶ一文字挵(セセリ)(葡萄畑の向日葵) |
今年4回目のサニーレタス栽培 |
驚いたことに 山荘住人たちの問いかけや シュプレヒコールを全く無視して 仙人は独り言ちる。 ≪それにしてもなんだな、 日本人史上初だとか やたらと日本人を強調するけど 強調すればするほど、 白けやしないかい?≫ |
太り過ぎ胡瓜 |
葡萄畑はゴーヤーだらけ |
鷹の爪も色付いて |
生まれも育ちも愛知県の サニーレタスがポツリ。 ≪名前は英語だけど 生まれも育ちも日本のあたしと反対に、 なおみは、和名だけど 3歳で日本を離れ ニューヨーク、フロリダで育ち 小、中、高を卒業。 テニスの技も米国で研鑽。 となると、なおみの中身は米国人?≫ |
初めての秋じゃが芋栽培 |
蔓茘枝がしゃしゃり出る。 ≪勿論、日本国籍を持っていて 本人も日本人として 試合に臨んでいるんだから 大歓迎ていうか、寧ろ とても嬉しくて益々親しみが湧くけど、 それって回りが 日本人を強調し過ぎると、 ヤバくない? 排他主義に連なるきな臭さ。 育ててくれた米国を無視し、 大きく熟れた果実だけを 横取りしてるみたい。 世界のなおみが一番自然だな!≫ |
角型より丸型が柔らかい |
神龍の使徒となって神託を告げる玉虫 9月16日(日)晴 大欅の下に咲き乱れる花を褥に番う玉虫 変だぞ! 上から圧し掛かる玉虫には、確かに大きな黒い複眼があるけれど下の玉虫には頭部そのものが欠落している。 大欅の真下に咲き誇る仙人草の放つ白銀の光に吸い込まれて降下し、光に抱かれた玉虫は、 葉裏に潜む蟷螂に気づかず、長く鋭い鎌で頭部を切り落されてしまった。 危機に気づいた欅上の玉虫の恋人は、上翅を開くと同時に素早く下翅を開き一瞬にして降下。 玉虫は上翅と下翅のサイズが同じで下翅は畳まれておらず、一瞬にして飛び立つことが出来るのだ。 しかしその早業を為しても、恋人の死を食い止めることは出来なかった。 頭部を失った恋人に寄り添い、宝石の様に光り輝く上翅に乗って最後の願いを聴き取ろうと懸命に耳を欹てる。 ≪光眠る喜马拉雅の西壁テラスがお前を待っている。 しかしお前には最早そのテラスまで登攀する力は残されていない。ならばどうする! そう、お前自身が心象キャンバスにテラスを創り上げるしかないのだ。≫ その声は神龍の声ではないか! そうかそれで解った。何故、玉虫はあんなにも高い欅の天辺に棲んでいたのか。 龍球が7つ揃わないと出現出来ない神龍に成り代わり、あいつは天空に近い欅の梢に侍り、 神龍の神託を告げる使徒だったんだ! |