その146の5ー2018年 睦月
この上なく美しい山荘の雪の夜明け 2018年1月23日月 晴 1階テラスの夜明け 美とは、知覚・感覚・情感を刺激して内的快感をひきおこすもの(広辞苑)。 感覚、特に視聴を媒介として得られる喜悦・快楽の根源的体験のひとつ(ブリタニカ)。 この上なく美しい山荘の雪の夜明けを、飽くことなく待ち続ける仙人は、唯ひたすらに超越美としての 究極の快感、喜悦、快楽を追っていたのか! プラトンは精神美を超越美と呼び、個々の美は超越美の分有とし、この世に実在するのはイデアで、 我々が肉体的に感覚している対象や世界は、イデアの似像でしかないと述べてる。 となると≪この上なく美しい山荘の雪の夜明け≫は、仙人の心象スケッチそのものだということなのか! 実在するのは、この光景を認識する仙人のイデアだけ! |
ゲートに雪降り積む |
脚立を支柱にして屋根補強 |
津々と雪が降る 1月22日 夜 イマヌエル・カントは イデアの深奥に踏み込み、 美の認識論的把握の頂点に立ち こう述べる。 |
≪美しいものとは 認識能力の 自由な戯れを引き起こすもの≫ ≪認識能力の自由な戯れ≫とは 良くぞ言ったり! 認識能力の自由な戯れに 現を抜かす仙人は カントに拍手大喝采! |
箆鹿も雪化粧 |
カロスキューマも雪塗れ |
去来する雲海・書斎のカーテンを開けた瞬間! 2018年1月23日月 晴 2階テラスの夜明け つまりだ、カーテンを開けた瞬間、眼前に展開したこの光景は仙人の ≪認識能力の自由な戯れ≫そのものなのだ。 なーんて御託を並べて一人悦に入る仙人。 ははーん、それで解った。 どうもいつも観ている富士山より大きいような気がしたが、さては仙人めカントから美は ≪構想力と悟性の自由な戯れ≫に帰着するなんて言葉を引っ張り出して、 勝手に富士山を拡大したな! どうも仙人には困ったもんだ。 |
カロスの夜明け |
密教仮面も雪に吃驚! |
蒼い眠りから覚める里 |
カロスが夜明けの 太陽を浴びて喋り出す。 「カロスの意味はギリシャ語で≪美≫。 古典ギリシア語では「カロン」と 云うのはご存知?」 プラトンのカロン・美 κάλλος (kállos)についての 概念が2400年を経て 仙人の動脈血に憑依し騒がせる。 |
前庭のラッセル |
動脈血は60兆個の細胞を使嗾し 構想力と悟性の自由な 戯れにいざなう。 で、あたしにまで カロスなんて名前着けて 自ら創り出した幻想美に耽溺して いると云う訳ね」 |
ふかふかの雪のカーペット |
雪霧の彼方に高芝山 |
奥庭も雪国に! |
雪に塗れたボン・シルバー 確かに森に野晒しになっていた この俺様のしゃれこうべを拾ってきて、山荘の奥庭に オブジェとして立ててくれた時は、 此処こそが俺の真の居場所だと歓喜したもんだ。 しかしそれは本当に仙人のイデアなのか?」 |
重い雪帽子を被せられ、お得意のサングラスまで 雪に覆われたボン・シルバーも喋る。 「プラトンとかカントとか大昔の亡霊を甦らせ、 何を云うかと思えば、結局なにか、この俺様も仙人の 構想力と悟性の自由な戯れの産物と云う訳か! |
雪が重いぜ!白い太陽じゃ雪は融けないかな |
湯に浸かって雪景色 |
山荘の部屋達までがしゃしゃり出る。 「いいこと、確かに仙人がこの 風呂場もテラスも書斎も廊下の出窓も 設計したでしょうが、 その窓々から観える雄大な借景は、 仙人のイデアには 組み込まれていなかった筈よ。 |
居間からの雪と雲海もいいな! |
どう、湯船にどっぷり浸かり乍ら 眺める雪景色、 昏い居間から雪原となった 白銀のテラスにそのまま連なる光景。 テラスの先に渺茫と広がる 躍動的な雲海。 そして雲海を抱く蒼い山脈。 |
中央アジアの壺と雪森 |
中央アジアの壺を前景にして 雪の森が雪化粧して ログハウスを抱え込み、 雲海に漂うカロスキューマが、 構想力と悟性の自由な 戯れを謳歌する。 これ総て仙人のイデアだと云うの?」 |
雲海に漂うカロス |
「カロン・美しいもの」の根拠である 「美」についての思索や、 「美の概念」の規定は、プラトンの 古典ギリシアを濫觴とする。 (wikipedia) |
書斎からの雪富士と雲海 |
室内の花鉢も凍り付く寒さ! こうなるとタイアは横滑りを始め、 車はずるずると下方に向かい ハンドル操作は出来なくなる。 脱輪して溝に落ちてしまったら、いくら強力な 4駆Lを操作しても脱出出来ない。 脱輪を恐れて 雪の無い安全な冬駐車場へ回るのが賢明。 しかしランドヴェンチャーなら 運転次第で登れるかも知れない。 ここで逃げてしまったら、いつまで経っても ランドヴェンチャーの能力を試すチャンスは訪れない。 |
寒波襲来で大洪水 1月27日(土)晴 -10.0℃ 大雪の降った後、連日記録的寒さが続いているので 山荘急坂路の雪は全く解けず、 表面は凍てつき最悪状態と予想。 当然チェーン無しの車で登るなんてあり得ない。 しかしランドヴェンチャーは4駆だけでなく もっと強力な4駆Lに切り替えることも出来るので、 スタッドレスタイヤだけでも登れるかも! 凍てついた急坂は途中で 右に折れつつ登る部分が2か所あり、 タイアが斜面に対して横向きになってしまう。 |
それじゃ鉢氷で飾ってあげよう! |
奥庭の龍の滝も凍てついて! |
4駆Lに切り替え慎重に凍てついた雪の急斜面に突っ込む。 4つのタイアがしっかり雪と氷を捉える。 よし、いいぞその調子。最大斜度の氷の轍に差し掛かると左車輪が数回空転したが、 右車輪がグイグイと引き上げ、その後は僅かなスリップもなく急坂を通過。やったぜ! で、無事山荘に着いたのだが、新たな問題発生。 水道バルブを開くと即ウィーンとモーターが鳴り始め、水抜きしておいた トイレタンクや夫々の蛇口に水が流れる揚水ポンプの音が消える。 ところが、バルブを開けてもうんともすんとも云わず沈黙したまま。 ヤベー、揚水ポンプが凍り付いてしまったのだ。 となると暖かくなって氷が融けるまで山荘では、生活できないことになる。 お湯を沸かして揚水ポンプや屋外タンクに掛けて、凍結を解くにしても、 肝心の水が出ないのでは打つ手は無い。 だいたい数百㍑もある凍てついた屋外タンクに 湯なんぞを掛けたって、容易に解けるとは思えない。 先ず揚水ポンプとタンクに掛けた防寒シートを剥がして、 ポンプの自動稼動を解除しテスト稼働のスイッチを入れてみる。 |
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これで始動しなかったら、ポンプそのものが 凍結による破損を受けているので 専門業者に来てもらうしかない。 勿論業者の車では 山荘の凍り付いた急坂を登れないので、 業者が来られるのは氷が融ける4月。 となると山荘活動は3か月以上出来なくなる。 緊張の一瞬、スイッチオン! ウィーンとモーター音が鳴ったでは! こうなりゃこっちのもん. テスト稼働から自動稼動への 切り替えにも成功し、 氷柱の下がっていたキッチンの蛇口からも、 トイレのタンクからも 水が流れ出しヤッターと大喜び! しかし床下や室内に配管された水道管が 凍結していることは確かなので、 管内の氷が完全に解け切るまで 暫くは水の出は悪い。 それは覚悟していたがまさか1階が 大洪水に襲われるとは青天の霹靂! |
よくぞ生き延びたね! |
夕飯の支度をせねばと 書斎から出て階段を降りると、 階段下の廊下が川になっているでは! 瞬間的には理解できず、一体いつから 廊下が川になてしまったのかと 不思議に思っただけ。 次にスリッパを脱いで降りるべきか、 靴下も脱ぐべきかとか迷い、 脱いだら冷たいだろうとそのままジャブジャブ。 川となった廊下を歩いて居間に出てみると、 大変だ!広い居間全体が 湖になっているでは! ここで初めてこれが山荘始まって以来の 緊急事態であると気づいたのだ。 キッチンも当然水浸し。 出水源は何処だと蛇口のある浴室、 トイレに飛び込むと、 トイレタンクに接続する排水管の 接合部から激しく水が噴き出しているでは! |
急いで外に飛び出し、屋外貯水槽のバルブを閉める。 これで排水管から噴き出す水は止められたが、 この排水管の修理に掛かる前に、この川と湖の排水をせねば! これだけ大量の水をどうやって排水すればいいのか? 先ず雨靴に履き替え、水浸しになった居間の6枚、キッチン2枚、トイレ2枚の カーペットを脱水機に無理やり突っ込み脱水し、テラスに干す。 次にありったけのバスタオルを出して、漏水源のトイレ床の水を吸わせる。 全くの徒労で大量の水がそんなもんで取れるとは思えない。 しかしモップなんぞで室外に掃き出そうにも窓枠の桟が、 堰となって排水出来ない。 効率は悪いが大量のバスタオルで 時間をかけて拭き取るしか手はない。 延々3時間、どうにか排水の目処が立ったので、 水を噴き出した排水管を恐る恐る観察。 トイレ貯水タンクと屋外貯水槽を繋ぐ接合部のパッキンが、 凍結膨張により破損したのかと思ったら、 そうではなく排水管そのものが外れている。 |
太陽を浴びても融けず! |
谷の流れがそのまま氷に! しかし水道管内に 残っている水までも抜くことは出来ない。 が、打つ手がない訳では無い。 屋外貯水槽の弁を開く前に 凍結した水道管を温めておけばいいのだが、 これはこれで大変時間がかかり、 数時間の忍耐強い作業を甘受せねばならない。 風呂場のボイラーとキッチンを結ぶ水道管は、 距離が長く冷たい床下経由なので センサー付きのヒーターを巻き付けてある。 他の室内水道管はヒーターが付いてないので マイナス5℃以下になると凍結が始まる。 6年前の洪水事件 (ー11.6℃(外)朝6時53分 -4,5℃(室内)朝7時13分 2012年2月3日(金)晴 キッチン、トイレ) |
屋外貯水槽からの給水は 床から垂直に立ち上がり、途中で トイレ貯水タンクに接合しているので、 この部分が外れると、当然ながら屋外貯水槽からの水が 盛大に噴き上げることになる。 従ってトイレは単に水浸しになっただけでなく、 本棚の本、多くの陶芸の壺、 トイレットペーパーなんぞもびちょびちょ。 陶芸の壺なんぞ中にたっぷり水が溜っている始末。 そういえば、このトイレの水道管は以前にも 寒波襲来で破裂し洪水事件を起こしたことがあった。 同じ過ちを犯すなんて愚かであったとは思うが、 勿論山荘を出る前は完全に水抜きはしている。 |
竹森川そのものが凍るなんてね! |
屋根が潰れる前に! |
ポリカ波板を傷つけぬ様デッキブラシで! |
特にトイレ、キッチン、化粧室に連なる 水道管は無防備なのだ。 何故もっと早く 水道管の破裂に気付かなかったか! 屋外貯水槽の弁を開いて 最初のチェックで、 トイレタンクのレバーを引いたら 便器内にタンクの水が 排水されたのだ。 |
という事は 確かに水は流れていた筈である。 山荘を出る前の水抜きで トイレタンクは 空になっているので、レバーを引いて 排水されたと云うことは、 屋外貯水槽と トイレタンクを結ぶ水道管は完全には 凍結していないことを意味する。 |
屋根から雪崩じゃ! |
そーら次は大きいぜ! |
怖えーの何の!滑り台に乗ってるよ様だぜ! |
しかし実は凍結していたが 中心部に僅かに未凍結部分があり、 屋外貯水槽の弁を 開くことによって水圧が高まり、 未凍結部分から水は流れた。 が、その流れによって 未凍結部分が拡大される程 暖かい水では無かったので、 水圧は益々高まり 遂に接合部が破裂したのだろう。 トイレ以外では幸いなことに破裂せず。 が、どの蛇口も凍結を示す 赤錆を吐き出したり断水したりが、 2日間も続いたのだ。 |
風呂水など途中で給水が 完全に止まり ボイラー管まで水位が達せず 湯沸かしも出来ず。 教訓! 一度流れたからと安心せず、 数時間は 各蛇口、1,2階のトイレなどを こまめに見回ること! 完全に凍結を防ぐには、 室内の水道管にも総てヒーターを 着けるか、寒波襲来で ―10℃が予想されるときは、 山荘に滞在し 建物を温め常に水を使い続け、 建物内部の給排水管の 凍結を防止すること以外にない。 |
雪はこれ程重かったかと唖然! |
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屋根に打った笠釘に乗って落下防止! その巧妙な仕組みに感嘆! が、同時にナットを締め付けすぎると逆に 下部の水道管の縁に乗っている薄手の ゴムパッキンを傷めて漏水を引き起こす。 従って絶妙な締め具合が 要求されるであろうと、不安が募る。 で、そのゴムパッキンの傷みが酷く 交換しなければならないと解ったが、 果たしてそんな専門的な細かい部品を ホームセンターで売っているのだろうか? 早速電話してみると、置いてはあるが同じものが あるかどうかは解らないと云う。 接合部を外して破損部品持参で、合うものを探すしかないが、 問題は雪と氷で閉ざされた山荘急坂路を チェーン無しのランドヴェンチャーで往復できるかである。 少し気温が上昇する午後ならまだしも、 早朝のこの時間では 急坂路はバリバリのつるつる。 やるっかない! これが解決しなければ、ジュゴンを求めて 熱帯の海へ旅立つことは出来まい。 |
再び洪水じゃ! 1月29日(月)晴 -8.1℃ 朝からまたまた大騒動。 ぽったんぽったん、接合部から水が漏れているでは! もしやと心配して水道管接合部の真下に 大きなビアジョッキーを置いておいたが、そこから溢れ出し トイレの床は、再び洪水。 アリエネー!と叫んでみても何にもなりはしない。 屋外貯水槽の弁を閉めて、接合部を外して点検。 厚めのゴムパッキンの下に割れ目の入った 漏斗状の真鍮リングがあり、その下に 薄手のゴムパッキンが下部の水道管の 縁に乗るようになっている。 螺子で締めることにより、上部の管の縁が このゴムパッキンに喰い込み漏水を防ぐ 仕組みになっていると判明。 |
右の脚立の出番で大活躍! |
ちょっと 人魚の 島まで 出張 |
ブスアンガ島のエル・リオ・イ・マールリゾート内にジュゴン・ダイビング・センターがあると知ってから、 秘かにチャンスを伺っていた。 Dugongとはマレー語のDuyungが語源で「海の貴婦人」(lady of the sea)を意味しているとか。 人と同じく2つの乳頭が胸びれの付け根にあり、これが隆起し乳房のように見えたり、 ひれ状の前肢で子を抱いて、立った形で海上に浮く姿が観察されたりと ジュゴンは人魚の伝説を掻き立ててきたのだ。 1月31日からならエル・リオ・イ・マールリゾートのCasa morenaが7日間取れそうとのメールが入り、即決断。 南シナ海とスール海に挟まれたパラワン島北部にあるブスアンガ島は道路が未発達で、 空港からリゾートまで陸続きなのに、車では行けない。 空港近くのサン・ホセ地区の海辺まで車で行き、そこからボートに乗ってマリカバン湾を横切って、 対岸のエル・リオ・イ・マールリゾートに行くしかない。 つまりリゾートは完全に、海とジャングルに囲まれた陸の孤島である。 だからこそ絶滅危惧種となった伝説のジュゴンは、今でもひっそりと生きていけるのであろう。 30頭ほどの棲息が確認されているらしいが、若しかすると逢えるかもと想うだけでいい。 伝説に触れるだけで、干乾び老衰した感性が潤う気がするのだ。 |