その146の4ー2018年 睦月
光の湯浴み 2017年12月15日晴 テラス いい湯だね、 いい湯だね!此処は甲州、山荘の湯! バクバクと音を立てて山荘の野菜は光を食べる。 毎日毎日マイナス3℃とかー5℃とか、もうすっかり畑は凍てついてしまったのに成長が遅くて、未だ頑張って生きている白菜。 あんなに光をいっぱい食べたのに、どうしてそんなに小さいんだい? もう寒くて大きくなれないから、収穫して体の一番奥まで光を浴びせてあげよう。 おやおや、バリバリに凍てついていて、まるで硝子細工のようだね。 葉の一枚一枚から透明な硝子が剥がれ落ちて、これじゃさぞかし寒かっただろうね。 そーら、これでどうだい!少しは暖かくなったかい! 1日も光に湯浴みしていれば、すっかり氷は取れて元の柔らかい葉に戻るよ。 湯上りには香りの良い柚子の薄切りと、海の潮をたっぷり含んだ昆布、触れただけで熱くなる山荘畑の超辛鷹の爪と 一緒に樽に入れてあげよう。 どんなに美味しくなるだろうかね! |
2018年1月18日晴 鉄塔山 |
柚子を沢山入れて |
荒潮は3%に抑えよう |
蒼くなった。 99%再び逢うことは出来ない と云う喪失の哀しみに襲われた。 深く積もった落葉の急斜面の 何処を探せば、 あの膨大な記憶を秘めた Tough4に巡り会えるのか! |
1年前の2016年12月、 車で轢き潰してしまった オリンパスSZ-14の後を継いで 接写に強い赤と黒のTough4が 山荘の記憶を担って登場。 |
うーん、いい香り |
山荘産の飛び切り辛い鷹の爪も |
今まで使って来た ハンディーカメラの中では、 最高の優れもので カメラの域を超えて、 高潔な人格すら 感じていた矢先の喪失。 仙人が蒼く なるのも無理はない。 |
落葉の海に消えたTough4 |
林道をかなり下ってから ベストの左ポッケに 入れておいた筈の カメラがない事に気づく。 何処でいつ落としたか 心当たりは全くない。 |
さあ、樽詰めだ! だが落とすとしたら落葉グリセードの時 以外には考えられない。 しかし鉄塔山の頂から鉄塔峠まで殆ど グリセードで下って来たので、 カメラを探すとなると大変な長い距離になる。 |
急斜面で落葉を利用してのグリセードをしながら下ったが、 一度も転倒してないし、 大きくバランスを崩してカメラを落とす様な 態勢になった記憶もない。 |
1週間後に水が上がったら2樽を1樽にしよう |
その上深い落葉の海に 落ちたとあれば、 発見は絶望的。 瞬間的にその2点が浮かび、 99%再び逢うことは 出来ないと云う 喪失の哀しみに襲われたのだ。 本当にカメラを超えた 高潔な人格を感じていたならば、 |
山荘活動を共にしたカメラTough4 2018年1月23日晴 新雪のテラス |
心からの追悼を せねばなるまい。 広大な落葉の海で 再び赤と黒のTough4に 逢うことは決して無いと 認識しつつ、それでも 目を皿の様にして 探し求めることこそ 深い追悼となるのだ。 |
大根も光をたっぷり吸って |
余った大根は地中に埋めて |
すらりとした大根脚 |
そう思い夕暮れ迫る林道を 登り返し、峠から 鉄塔山への稜線を彷徨う。 岩場の急斜面は膨大な落葉に覆われ、 先ほど降りてきたばかりの 痕跡すら残されていない。 さて次は どちらの捜索に向かおうかと、 |
これ以上太くなると沢庵に不適 |
右の森と左の岩場に目をやる。 登りに使った右の森で 落とすことは考えられないので、 下降した左の岩場に出てみようと 数歩を踏み出した途端、 Tough4の赤いストラップだけが 落葉の上に出ているでは! 幻を観ているのだろうか! いや、確かにTough4だ。 |
こちら沢庵漬け |
光を飽食し、しんなり |
どうこの白菜漬けの豪華なフレーバー! |
カメラ本体は 枯葉の海に深く沈み込み、 僅かに痕跡だけを示す ストラップが波間に漂っている。 あー、こんな奇跡的な 再会が自らに起こるなんて 信じられない。 最近、喪失したものが、 再び現れるなんて 決してあり得ない状況が、 続いていただけに 幻なのではと赤い紐を見詰める。 |
雪山でも大活躍! |
ストラップを引き上げ、 赤と黒の愛おしいTough4を 両手で包み込み ≪再び逢えてよかった。 もう二度と離さないよ≫と 仙人は語り掛けたとか。 Tough4はきっと こう答えたに違いない。 ≪Never Let Me Go! ≫ |
釜煎りのいり糠、柚子、昆布、鷹の爪・・・ 2017年12月15日晴 陶芸窯室前 次は沢庵漬け 土曜日の予報が雨なので、白菜を収穫して洗い、干すとしたら今日しかない。 成長して巻いている白菜を選び引き抜く。土のたっぷり着いた根を包丁で切り落とし、 株の部分に包丁を入れ白菜を2つに割る。 割らずに包丁で切断してしまうと、白菜の葉が分離してばらけてしまうのだ。 それを奥庭の洗い場で洗うのだが、単に土を落とすだけでなく、葉の間に潜んでいる 鋏虫を見つけ出して取り出さねばならない。 |
枯露柿を取り込み |
入念に黴のチェック! |
枯露柿収穫 これ結構大変な作業。 計27株で2つに割っているので 54個の漬物用白菜の 水洗いを終え、 9尺のカーボネイト波板を 4枚テラスにセットし、 その上に並べる。 |
これでやっと冬将軍到来で 凍てついた大根と白菜の 救出作戦を終えたので、 次は枯露柿の収穫。 軒下から外した枯露柿を 1つ1つ丹念に調べ、 柿の中まで黴のチェックをする。 百個に1つくらい 蔕の隙間から黒黴が入り込む ことがあるのだ。 |
更に蔕を切って内部まで黴の有無を調べる |
切断された欅の雪が舞うビッグツリーを創るんじゃ! 2018年1月6日土 晴 慄きつつ伐採する仙人・前庭大欅の高所太枝伐採 数か月悩んだ。優先順位なんて無くて、どちらかと言えばやらなくてもいいこと。 それなのに危険度は嘗て体験したことが無いくらいヤバイ。技術的にも微妙で高度な技が要求される。 それが故にここまで伸ばしに伸ばしてきたが、これだけ仙人を脅かすのであれば、新年の初仕事として申し分無いのでは! とまあ、例によって仙人の逆説的屁理屈がムクムクと頭をもたげ、決行すべしとなってしまった。 昨年6月15日に購入した2連梯子を最長の6m62cmまで伸ばし3分の1程登ったら、 脚の震えが6mも延ばされた不安定な梯子全体に伝わり、とても登れないと断念。 梯子を降りて、じーっと欅の大樹に立てかけた梯子を見やる。 右側は西畑となって更に落ち込んでいるので若し、梯子が外れたら9m近い高度差を落下することになる。 |
ザイルで梯子固定 |
高くて揺れが酷い |
ザイルで梯子と欅の幹を結べば、 外れることは防げるが、 果たしてこれだけ揺れる梯子の 最上段まで登れるか? 更にその上部で危険極まりない 殺人兵器・チェーンソウを操って、 あの太い欅の枝を切断出来るか? 勿論落下防止の為、 ハーネスを着け欅の幹にビレーを取るが、 落下の瞬間にチェーンソウが 僅かでも肉体に接触すれば、その部分は いとも簡単に切断されることは間違いない。 君子危うきに近寄らずか、 虎穴に入らざれば虎子を得ずか 仙人は欅を見上げる。 |
そもそも何の必要があって、 あんな高い処の太枝を伐採するのか? 実は必要なんぞ無いのだ。 敢て探すなら仙人の 心象風景の中にしか存在しない。 インドネシアのスラウェシ島メナドで 滞在したリゾートの大庭園に そそり立つビッグツリー。 そいつが13年後の今も 心象風景の中で呼びかけるのだ。 何と云ってるのか確かめようと 耳を欹てるが、解らない。 そんならいっそのこと山荘の 十数メートルもある大欅の枝を 切り落として、 もっともっと大きくすれば何と云ってるか 聴こえるかも知れない。 唯それだけなのである。 で、どうしたかって!決まってるじゃんか。 恐怖を乗り越えて遂にやったぜ! |
チェーンソウを上げる |
雲まで届きそうな欅 |