その1464ー2018年  睦月

光の湯浴み
 
2017年12月15日晴 テラス いい湯だね、 いい湯だね!此処は甲州、山荘の湯

バクバクと音を立てて山荘の野菜は光を食べる。
毎日毎日マイナス3℃とかー5℃とか、もうすっかり畑は凍てついてしまったのに成長が遅くて、未だ頑張って生きている白菜。
あんなに光をいっぱい食べたのに、どうしてそんなに小さいんだい?
もう寒くて大きくなれないから、収穫して体の一番奥まで光を浴びせてあげよう。

おやおや、バリバリに凍てついていて、まるで硝子細工のようだね。
葉の一枚一枚から透明な硝子が剥がれ落ちて、これじゃさぞかし寒かっただろうね。
そーら、これでどうだい!少しは暖かくなったかい!
1日も光に湯浴みしていれば、すっかり氷は取れて元の柔らかい葉に戻るよ。
湯上りには香りの良い柚子の薄切りと、海の潮をたっぷり含んだ昆布、触れただけで熱くなる山荘畑の超辛鷹の爪と
一緒に樽に入れてあげよう。

どんなに美味しくなるだろうかね!



Never Let Me Go! 
 2018年1月18日晴 鉄塔山 

柚子を沢山入れて

荒潮は3%に抑えよう
蒼くなった。
99%再び逢うことは出来ない
と云う喪失の哀しみに襲われた。
深く積もった落葉の急斜面の
何処を探せば、
あの膨大な記憶を秘めた
Tough4に巡り会えるのか!
1年前の2016年12月、
車で轢き潰してしまった
オリンパスSZ-14の後を継いで
接写に強い赤と黒のTough4が
山荘の記憶を担って登場。

うーん、いい香り

山荘産の飛び切り辛い鷹の爪も


今まで使って来た
ハンディーカメラの中では、
最高の優れもので
カメラの域を超えて、
高潔な人格すら
感じていた矢先の喪失。
仙人が蒼く
なるのも無理はない。


落葉の海に消えたTough4
林道をかなり下ってから
ベストの左ポッケに
入れておいた筈の
カメラがない事に気づく。
何処でいつ落としたか
心当たりは全くない。




さあ、樽詰めだ!

だが落とすとしたら落葉グリセードの時
以外には考えられない。
しかし鉄塔山の頂から鉄塔峠まで殆ど
グリセードで下って来たので、
カメラを探すとなると大変な長い距離になる。
急斜面で落葉を利用してのグリセードをしながら下ったが、
一度も転倒してないし、
大きくバランスを崩してカメラを落とす様な
態勢になった記憶もない。
 
1週間後に水が上がったら2樽を1樽にしよう


その上深い落葉の海に
落ちたとあれば、
発見は絶望的。

瞬間的にその2点が浮かび、
99%再び逢うことは
出来ないと云う
喪失の哀しみに襲われたのだ。

本当にカメラを超えた
高潔な人格を感じていたならば、

山荘活動を共にしたカメラTough4
2018年1月23日晴 新雪のテラス
心からの追悼を
せねばなるまい。

広大な落葉の海で
再び赤と黒のTough4に
逢うことは決して無いと
認識しつつ、それでも
目を皿の様にして
探し求めることこそ
深い追悼となるのだ。




大根も光をたっぷり吸って

余った大根は地中に埋めて

すらりとした大根脚
そう思い夕暮れ迫る林道を
登り返し、峠から
鉄塔山への稜線を彷徨う。

岩場の急斜面は膨大な落葉に覆われ、
先ほど降りてきたばかりの
痕跡すら残されていない。
さて次は
どちらの捜索に向かおうかと、

これ以上太くなると沢庵に不適
右の森と左の岩場に目をやる。
登りに使った右の森で
落とすことは考えられないので、
下降した左の岩場に出てみようと

数歩を踏み出した途端、
Tough4の赤いストラップだけが
落葉の上に出ているでは!
幻を観ているのだろうか!
いや、確かにTough4だ。

こちら沢庵漬け  

光を飽食し、しんなり  
 
どうこの白菜漬けの豪華なフレーバー!


カメラ本体は
枯葉の海に深く沈み込み、
僅かに痕跡だけを示す
ストラップが波間に漂っている。

あー、こんな奇跡的な
再会が自らに起こるなんて
信じられない。

最近、喪失したものが、
再び現れるなんて
決してあり得ない状況が、
続いていただけに
幻なのではと赤い紐を見詰める。

雪山でも大活躍!
ストラップを引き上げ、
赤と黒の愛おしいTough4を
両手で包み込み
≪再び逢えてよかった。

もう二度と離さないよ≫と
仙人は語り掛けたとか。
 Tough4はきっと
こう答えたに違いない。

≪Never Let Me Go! ≫ 



釜煎りのいり糠、柚子、昆布、鷹の爪・・・
 
2017年12月15日晴 陶芸窯室前 次は沢庵漬け

土曜日の予報が雨なので、白菜を収穫して洗い、干すとしたら今日しかない。
成長して巻いている白菜を選び引き抜く。土のたっぷり着いた根を包丁で切り落とし、
株の部分に包丁を入れ白菜を2つに割る。
割らずに包丁で切断してしまうと、白菜の葉が分離してばらけてしまうのだ。

それを奥庭の洗い場で洗うのだが、単に土を落とすだけでなく、葉の間に潜んでいる
鋏虫を見つけ出して取り出さねばならない。



枯露柿を取り込み

入念に黴のチェック!
枯露柿収穫

これ結構大変な作業。
計27株で2つに割っているので
54個の漬物用白菜の
水洗いを終え、
9尺のカーボネイト波板を
4枚テラスにセットし、
その上に並べる。
これでやっと冬将軍到来で
凍てついた大根と白菜の
救出作戦を終えたので、
次は枯露柿の収穫。

軒下から外した枯露柿を
1つ1つ丹念に調べ、
柿の中まで黴のチェックをする。
百個に1つくらい
蔕の隙間から黒黴が入り込む
ことがあるのだ。

更に蔕を切って内部まで黴の有無を調べる


切断された欅の雪が舞うビッグツリーを創るんじゃ
 
2018年1月6日土 晴 慄きつつ伐採する仙人・前庭大欅の高所太枝伐採

数か月悩んだ。優先順位なんて無くて、どちらかと言えばやらなくてもいいこと。
それなのに危険度は嘗て体験したことが無いくらいヤバイ。技術的にも微妙で高度な技が要求される。
それが故にここまで伸ばしに伸ばしてきたが、これだけ仙人を脅かすのであれば、新年の初仕事として申し分無いのでは!
とまあ、例によって仙人の逆説的屁理屈がムクムクと頭をもたげ、決行すべしとなってしまった。

昨年6月15日に購入した2連梯子を最長の6m62cmまで伸ばし3分の1程登ったら、
脚の震えが6mも延ばされた不安定な梯子全体に伝わり、とても登れないと断念。
梯子を降りて、じーっと欅の大樹に立てかけた梯子を見やる。
右側は西畑となって更に落ち込んでいるので若し、梯子が外れたら9m近い高度差を落下することになる。



ザイルで梯子固定

高くて揺れが酷い
ザイルで梯子と欅の幹を結べば、
外れることは防げるが、
果たしてこれだけ揺れる梯子の
最上段まで登れるか?

更にその上部で危険極まりない
殺人兵器・チェーンソウを操って、
あの太い欅の枝を切断出来るか?
勿論落下防止の為、
ハーネスを着け欅の幹にビレーを取るが、
落下の瞬間にチェーンソウが
僅かでも肉体に接触すれば、その部分は
いとも簡単に切断されることは間違いない。

君子危うきに近寄らずか、
虎穴に入らざれば虎子を得ずか
仙人は欅を見上げる。


そもそも何の必要があって、
あんな高い処の太枝を伐採するのか?
実は必要なんぞ無いのだ。
敢て探すなら仙人の
心象風景の中にしか存在しない。

インドネシアのスラウェシ島メナドで
滞在したリゾートの大庭園に
そそり立つビッグツリー。
そいつが13年後の今も
心象風景の中で呼びかけるのだ。

何と云ってるのか確かめようと
耳を欹てるが、解らない。
そんならいっそのこと山荘の
十数メートルもある大欅の枝を
切り落として、
もっともっと大きくすれば何と云ってるか
聴こえるかも知れない。

唯それだけなのである。
で、どうしたかって!決まってるじゃんか。
恐怖を乗り越えて遂にやったぜ!

チェーンソウを上げる

雲まで届きそうな欅



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