その1461ー2018年  睦月

森深き山寺での仙人初修行じゃ!
2018年1月1日(月)晴 山寺・足和田山蓮華寺で元旦の鐘を衝く混沌仙人

一目で惚れ込んでしまうしまう瞬間を失って久しい。
鋭い感性は客観性を求める知の前に平伏し、≪ごもっともでございます≫とばかり萎縮し続け、やがて姿を消す。
老化と共にその傾向は強まり、最近は望遠レンズで覗いても顕微鏡で探しても痕跡すらない。
それがどうだ、訪れる人も見当たらない苔生した石段を登り、
森の奥に進んだ途端、ドシンと心象風景に飛び込んできたのは寂びれた鐘撞堂。

撞木は緑に苔生し年輪は腐り始め、鐘を衝いたら折れるか粉砕してしまうのではとさえ思われる。
そいつが、ずかずかと土足で仙人の心象風景に入り込み、感性を酷く揺さぶり、一瞬にして心を奪ったのだ。
こいつ何者なんだ!


苔生した蓮華寺
重さと形状を失い
肉体が昇華し森に漂い、
稜線に舞い上がる西高東低の風に
拡散し、感性と意識だけが残る。

残された形而上だけが
黙々と冬の森を歩む。

稜線上の大嵐天神社
森の木立を透かして
見え隠れしていた黒い湖が、
高度を上げるに連れて
黒に蒼を加える。

≪黒い湖と云えば
マッターホルン山麓の
シュワルツゼーを思い出すね。 

道案内してくれた優しいおばあちゃん 
光が湖に差し込んで蒼が混ると、
アフガニスタンの蒼い湖
バンディアミールそっくり≫。 

稜線左の森は
雪富士を背景にして、
絵筆の様に風に葉を揺らせ
絵描きにでもなったつもり。 

天神社で初詣

あれっ、山荘と同じ龍だ!

蓮華寺にも参詣




共鳴窟で反響され山々へ響く



雪と岩、そして風下に巻き上がる白龍の
様相を帯びた雲を纏う富士。
重く暗鬱な肉体を捨てた意識と感性が、
嬉々として、
森と湖そして山を飛び回る。

こんな風に肉体を昇華させ、
森や空と一体化してしまう様な逍遥は
随分久しぶり。
時々、さあご覧とばかり森を開き、
空間を埋め尽くす雄大な雪富士を垣間見せる。
キャンパスでありながら、
ふと絵筆を振るいアーティストになったりする
足和田の森。

湖の奥深く光を咥え込み自在に彩を蠢かし
湖面に絵画を描く河口湖。
優美な曲線を左右対称に伸ばし、

山深き蓮華寺の静寂破る鐘 


足和田山の優雅なる散歩道


木の間越しの湖
一緒に写真撮ってもいい?
と訊いたら含羞みながら
「こんなおばあちゃんでいいかしら!」
と横に並んでくれた。

登山口が解らず彼方此方
走り回り、人に尋ねようと試みるが、
元旦の家々は何処も
門扉を閉ざし、人影無し。

駐在所を見つけたので
駆け込んだが、ドアを開け声を掛けても
しーんと静まり返り
人の気配はまったく無し。


湖の背景に三つ峠が

森の倒木に跨って!

右に湖、左に雪富士を眺めながら

森が開けると富士が
 
足和田山の四阿
 
此処は東海道自然歩道じゃ!
 
静寂の中に初めて現われた2人の登山者

頂から眼下に河口湖、遠くに精進湖
 林道より更に細い道が
森の奥へと延びる。
この四駆ランドベンチャーなら
全く問題なく登れる。

が、問題は路の終点にUターン出来る
スペースがあるかどうか。
無ければバックで長い山道を
下らねばならない。
そうなるとかなりしんどい。

ま、いいかその時はその時だ。
とばかり突き進んだ終点に
ニコニコと太陽の様な笑みを浮かべた
おばーちゃんが出迎えてくれた。

そう、出迎えてくれたとしか
思えないような暖かい笑みだったのだ。
待ってましたとばかり、
おばーちゃんは足和田山への途を
嬉しそうに詳しく話してくれた。

おばーちゃんには男の子と娘がいて
2人とも結婚して孫も居て、
お正月には還ってきてくれるに
違いないと思っているのだ。

白龍の如く這い上がる雲

竜ヶ岳下の精進湖 
 
南アルプス赤石岳


漆黒の口を開き猛る白龍は何処へ!
2018年1月1日(月)晴 足和田山の山巓からの富士

この画像が時空洞窟を成し、もう1つの心象風景に連なるに違いないと秘かに熱望していることに気付く。
冬将軍の激しい息吹は富士山頂でキャビテーションを生じ、風下の蒼穹を切り取る。
負圧となった風下に生み出されるのは白い龍。
白い龍を捉えるにはどうしたらいいのか、望遠レンズを構えながらウロウロ、うろうろシャッターを切り続ける。

もし荒々しく猛り狂う白龍を捉えたらなら、時空洞窟を手に入れることが出来るかも知れない。
蒼穹から光を奪えば、あいつ正体を見せるに違いない。
そら、これでどうだ!駄目だ、もっともっと絞り光をビームにして白龍を捕まえろ。
さて仙人はもう1つの心象風景に連なる時空洞窟を、穿つことが出来るのでしょうか!




優雅な散歩道に立つ山頂標識

登山を終え再び登山口に戻ると
おばーちゃんが迎えてくれた。
「だーれも居なくてとてもいい山でした」
とお礼を述べたら、ふたたび太陽の笑顔が。

そうだったのか!
こんな寒い山の中、家の前でおばーちゃんが
待っていたのは、連絡さえくれぬ
息子と娘、その孫たちだったのだ。
≪きっと来てくれるよ、おばーちゃん!≫
そうしたらきっと、笑顔の写真が撮れるね!
優しいおばーちゃんの画像を観て吃驚!
直前まで振りまいていた太陽の様な微笑みなんぞ
何処を探してみ見当たらない。
それどころか、
眼差しは暗く、カメラを突き刺す様な鋭さ。

 
5つの湖が観えるので5湖台とも



蔦葉と氷柱のコラボレーション
2018年1月1日(月)晴 素晴らしい元旦夜明けを山荘氷滝の龍に言祝ぐ

あー、あなたにはこの黄ばんだ蔦の葉と氷柱が、闇に捉われつつ呟く声が聴こえるだろうか!
聴こえていて欲しいと切に願い、凍てついた葉に記された茶の紋様に語り掛けました。
そんな風に氷に捉われてしまって、それでも未だ生きているのかい?
この氷が解けたなら再び緑を取り戻し、明るく風に戦いだりするのだろうか!



タラバ蟹で正月気分を
森に肉体を解かし
山稜で光を思う存分呑込み、
ひっそりとした山寺で
一目惚れした鐘撞堂の共鳴窟を
覗き込み白龍と語らう。


山荘野菜もたっぷり!

先ずは日本酒から

夕陽の部屋イオもいいな!

木星と足和田山に乾杯!

さよなら山荘ピーマン
そんな豊穣な時が
再び訪れることは無いかもと
2階のイオが囁く。
囁きに釣られてイオに上がると
未だ足和田山の太陽が
部屋に満ちているでは!

そんなら元旦の乾杯をしようぜ!

キウイ、枯露柿、林檎最高!
ふんふん、
HP画像では如何にも
元気もりもりに写ってるが、
あれは虚像、実は真っ赤な偽者。
真の仙人はこの通り。

既に時間・空間での
姿も留めることすら儘ならず、
形而下の存在を捏造。
針金でグルグル巻きにして、
崩壊する形状を押さえ、
虚像を作り上げ
さあ、どうだとばかり。

おやおや、
口から垂れ流しているのは
凍てついた動脈血では!
 
ぐるぐる巻きの凍てついた山荘
2018年1月1日(月)晴 こうしないと山荘龍は最早姿を保てないのです
  お前さんの動脈血は
赤血球に含まれる
ヘモグロビンさえ失って、
透明になり
その上、凍てついて
流れることすら
出来ないでは! 

左手で
持ち上げているのは、
嘗て存在した
赤血球のヘモグロビンかい。

それとも真っ赤な偽者への
アンチテーゼのつもり?
となると仙人は、
偽者・影武者の暗殺指令を
この紅玉に・・・。


高芝山に掛かる元旦の満月
(山荘居間から16時56分 甲府方位65.8度
月齢14.02日 輝面比99.04% 月拡大)


まさか元旦に満月だなんてウッソー!
慌てて望遠レンズを出して
三脚にセットしようとカメラに台座を取り付けようと焦る。
しかしこんな時に限って、
三脚の台座は上手く三脚に嵌らず、
満月は高芝山の稜線からグングン離れてしまう。



水晶峠からの初日の出
(奥庭のボン・シルバーから 1月1日甲府日の出6時55分
 山荘日の出7時45分 甲府方位
118.1度)

居間の灯りを消してガラス戸を開けて
シャッターを切り続ける。
山頂の右に鉄塔が影を落としている。
数年前にこの鉄塔の真後ろから満月が昇った記憶が
ふと甦る。

ボン・シルバーを満月に入れて撮れないかと
庭に降りてカメラをセットしている内に
満月は稜線を離れてしまった。
天体の動きの早さに自らの生を重ね、
仙人は唯たじろぐのみ。



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