１１月１週

蒼褪め怯える晩秋の向日葵
迫りくる雪を孕んだ昏い雲を見据え・・・

凍てつく大地に真夏の大輪を開かせようと、山荘の庭や畑に数百粒の向日葵の種を蒔いた。
その内の１粒でも仙人の望み通り、もしや咲いてはくれぬか！
西畑には冬野菜をそっちのけにして、２畝に向日葵の種を蒔き、せっせと散水し発芽を待った。
1カ月が過ぎ更に2週間が過ぎ、やはり秋に蒔いても発芽しないかと諦めかけた9月。

蕪や大根が青々と芽吹いた畝と離れ、ポツンと１本の小さな芽。
≪やったー向日葵だ！≫と大喜びし、連日散水し大切に育ててきた。
2週連続してやってきた台風に倒されたが、支柱を立てしっかり茎を支え≪負けるなよ！≫と激励。
そいつがどうだ。前庭の真っ赤に紅葉した楓に負けじと、雪雲を背景に凛と咲いたでは！
夏の花の常識を超え敢然と寒さに対峙し、種子に刻まれた記憶が新たな決意を抱き、死に勝利した瞬間だね。

霜降山茶花（テラス）

人体の細胞更新速度
(Cell update rate of the human body)

１．新陳代謝
人体は、1日で
1兆個もの細胞を入れ替えています。
不要になった細胞は死んで、
その近辺の元気な細胞を
細胞分裂させて2個にし、
その一つを失った細胞に
入れ替えて成長させます。

人体の細胞の数は、
約60兆個で、単純計算すれば、
毎日1兆個の細胞が入れ替わり、
1ヶ月で30兆個、2ヶ月で60兆個が
新しい細胞になっていきます。

耳型天南星（座禅森）

肌：10歳代で約 20日周期、
　　　20歳代で約 28日周期、
　　　30歳代で約 40日周期、
　　　40歳代で約 55日周期、
　　　50歳代で約 75日周期、
　　　　　　　　60歳代で約100日周期で全て入れ替わる。
（googie sites）

アンネ薔薇（奥庭）

２．細胞
人体を構成している細胞は、
約250種であり、その更新速度は、
各々の組織や臓器によって、
次の4つに大別されます。
　
　①速やかに更新される細胞：
表皮，角膜，消化器系上皮組織，
精巣上皮，造血組織，リンパ組織など
　
　②ゆっくり更新される細胞：
呼吸器上皮，尿細管上皮，
肝細胞，膵臓，結合組織細胞，
胃の壁細胞，副腎皮質細胞など
　
　③生涯に一部しか更新されない細胞：
平滑筋細胞，脳神経膠細胞，
骨芽細胞，副腎髄質細胞，
褐色脂肪細胞など
　　
④生涯更新されない細胞：
神経細胞，心筋細胞，セルトリ細胞など

３．主な細胞の更新速度
　　脳：早い細胞は1ヶ月で約40％、
遅い細胞は約1年で全て入れ替わる。
　　胃の粘膜　：約3日で全て入れ替わる。
　　腸の微絨毛：約1日で全て入れ替わる。
　
　肝臓：早い細胞は1ヶ月で約96％、
遅い細胞は約1年で全て入れ替わる。
　　
腎臓：早い細胞は1ヶ月で約90％、
遅い細胞は約1年で全て入れ替わる。
　　
筋肉：早い細胞は1ヶ月で約60％、
遅い細胞は約200日で全て入れ替わる。
　　
皮膚：約1ヶ月で全て入れ替わる。
　　
血液：4.5～5.0リットルの血液は
100～120日間で全て入れ替わる。
　　
骨：幼児期は約1年半、成長期は
約2年未満、成人は約2年半、70歳以上は
約3年で全て入れ替わる。
　　

アンネ薔薇（小滝落ち口）

向日葵（西畑）

仙人草と牡丹蔓も紅葉
複雑に絡み合い羽毛のような種を成し冬を迎える（林檎畑）

６０兆個しかない人間の細胞は、１日で１兆個が入れ替わり２ヶ月で６０兆個が更新される。
神経細胞や心筋細胞など更新されない細胞や、更新速度の違いにより完全に総てが入れ替わる訳では無いが、
それでも骨まで含め成人は、約２年半で人体のほぼ総てを別の物質に置き換えてしまう。

人体は１兆個÷２４時間÷６０分÷６０秒≒１１５７４０７４個　
たったの１秒で１千万個以上の細胞が入れ替わっていることになる。

*冬仕度じゃ！*	*この位置邪魔か！*	*寒いトイレを暖房*
つまり秒速１千万個の速度で人体は激しく流れ続けているのだ。ほぼ総てが入れ替わる２年半後、人体は別人になっているかと云うと、同じ人間である。		絶え間なき細胞の合成と分解と云う、真逆の過程が同じ速度で進行することにより、人間全体としては時間変化せず平衡に達している。
*配線カバーを取付*		*ウーん、暖かい！*

栃黄葉アーチと満開の山茶花

入れ替わる前の細胞の記憶が、
動的平衡を可能ならしめているとの
直感を齎したのは、大菩薩の
紅葉の森で聴いた
バロックの音色であった。

≪不要になった細胞は死んで、
その近辺の元気な細胞を
細胞分裂させて２個にし、
その一つを失った細胞に入れ替えて
成長させる≫

これに物理学や化学で使われる
動的平衡と云う言葉を当て嵌め、
動的平衡の生命観が
語られるようになって久しい。

さて人体は如何にして
細胞のほぼ総入れ替えする
激流の真っ只中にあって、
人間全体としては時間変化せず
平衡に達しているのか？

さて紅葉の森へ出発！

動的平衡を為す蒼の記憶
大菩薩嶺神成岩に立つ

ほぼ総入れ替えの為された約２年半後、物理学、化学の云う
完全なる平衡とは異なり、
ほんの僅か感情や精神は変化してはいるが、人体そのものは動的平衡にあると云っても過言ではない。
勿論死んだ細胞は復活しないが、死に対する部分的勝利を収めたのだ。

カズオ・イシグロが福岡伸一と対談した際に語られた言葉≪記憶は死に対する部分的勝利である≫に触発され、
仙人は細胞分裂する２個の細胞の１つになって、蒼の記憶を、
チベット密教仮面から蒼のランドヴェンチャーに託し、新たな動的平衡へと旅立つのだ。

*いきなり流れ出す音色*	産み出された細胞は不要になった細胞の記憶を、刻み込み記憶は、死に対して敢然と立ち向かうのだ。	*何処から湧いて来るのか！*
重傷の左脚を庇いながらの登山
*重く昏い光が・・*	*唐松のワルツ*	*森の動的平衡*