その1423ー2017年  長月

雌花の柱頭が開き妖艶に舞う雌花期の桔梗
雄性先塾で雌蕊は他の花の花粉しか受け入れない

 花弁に閉ざされた小さな宇宙に男達と女が居た。
花弁が開き外界と通ずるや否や、待ちきれんとばかり男たちは無数の精子を放ち濡れた雌蕊に群がろうとする。
しかし女は開かず濡れもせず、花弁に棲む男達の精子の放たれるが儘を見下す。
やがて精子は放出され尽くし、萎びてヨレヨレになった雄蕊は小さな宇宙に黄色い屍を曝す。

それを見届けた女は微かな微笑みを浮かべ自ら開き、
ぬるりと捕獲の汁を滴らせ他の宇宙から飛来する花粉を待つ。
この小さな同じ宇宙の男どもの遺伝子を受け入れても、未来の時間に飛び出せないと桔梗女は知っているのだ。
その逆、つまり雌性先熟を行う女も居る。

その女の多くは最初雌でいて、生殖後に雄に性転換し更に子孫繁栄に励む。
一夫多妻の繁殖形態を持つ動物種や、風媒花の植物種は雌が先ず発情し雄を受け入れやがて自ら雄になる。
異なる宇宙の遺伝子を求める事こそが未来を得る唯一の術であると、生命には刷り込まれているのだ。
なんぞと独り言ちながら、仙人は桔梗の花芯を見詰めるのであった。



窯室の上に咲く桔梗
夏との別 

烏滸がましくも混沌仙人を
名乗るからには、晩夏から初秋に
銀の光を放ち山荘を彩る≪仙人草≫を、
真っ先に山荘住人として
HPに紹介せねば!

と思いつつ
実は大昔に一度だけ載せ、
あとは横目でチラリと眺めては
観て観ぬふりをしてきた。
これには深い訳がある。

恥ずかしいながら仙人の無知そのものを
物語ることになるので、
今まではジロリ横目視しては
語るのを避けていた。

其の気になって一歩突っ込んで、
調べれば快刀乱麻を断つが如く
一瞬にして疑問は解け、
無知は知識へと、いとも簡単に
変容を遂げた筈なのだ。

開花時期の春と秋が縺れ、
同じ蔓性のスイカズラ科と
キンポウゲ科が互いに絡み合い、
銀の光を放つ
吸葛と牡丹蔓と仙人草の3種が、
山荘建設以来20数年も
山荘の森や庭に蔓延っていたのだ。

その3種を無知なるが故に
区別出来なかったにも拘わらず、
澄ました顔してその時の気分次第で
「吸葛」になったり「仙人草」になったり。

落日を浴びて、あんまりにも
凌霄花が美しかったので、
序に仙人草も
HPに載せてやろうと意気込み、
しみじみ観察し植物図鑑と見比べ、
気づいたのだ。

桔梗の雌蕊

ワインセラー横に咲く空色朝顔

朝顔花芯
 
輝く露草雄蕊
 
ゴーヤーに群がる蟻



ゲートに仙人草と咲き競う牡丹蔓


が、何と云っても仙人草よりも牡丹蔓の方が
花芯が多く華やかで光り輝いているので
違いは一目瞭然。
あー勿論吸葛とは春と秋と季節が異なるので、
較べる可くもない。

つまり今まで仙人は春に吸葛を観ると、
「うーん、仙人草が咲いたか」と思い、
秋になって牡丹蔓が咲くと、何の臆面もなく
「うーん、仙人草が咲いたか!」
と、無知を曝け出していたのだ。 
これぞ仙人草!
と思っていたら牡丹蔓とは!

あれっ、これ仙人草ではない。
雄蕊と雌蕊の数が圧倒的に異なる。
牡丹蔓は仙人草と間違え易いが、
葉の形が牡丹に似ているので区別できる。とある。

葉の形を比べてみたが、仙人草は
奇数羽状複葉で牡丹蔓は1回3出複葉で、
見た目にはそう大した違いはない。

 
仙人草はこの牡丹蔓より雄蕊が短い




陶芸窯煙突工事


やべー梁が燃えたぜ!

煙突を直に繋げねば
煙をくゆらし梁が焼き焦げ始め、
慌てふためいてスプレーで水を吹きかけた。
窯の温度を下げたいが
現在1200度、
あと30度は窯の温度を上げないと
作品が生焼けになる懼れあり、
窯の温度を下げる訳にはいかない。

が、このまま簗に水を掛けながら
温度をあげ続けるのは、極めて危険。
落ちた水滴が灼熱した煙突や窯に落下し
瞬時に爆発的に蒸発するのだ。

煙突が透明な赤に灼熱しているのだから、
その煙突から25cmしか離れていない簗が
燃え上がるのは当然としても、
今までに一度も
燃えなかったのはなぜか?

 答えは明瞭な筈、
つまり今まで窯はこれ程までに
温度が上がったことは無いのだ。
しかし窯の温度計は
1200度を示し続けている。
そこで総てが読めた。

作品が大きすぎて、窯詰めの時に
長い窯温度測定器を
窯の外に半分程引き出して、
火入れしたのだ。

それには直径を小さくして

どうだいこんなもんで!



屋根と煙突の隙間を埋めねば雨で窯がれる
屋根の葺き替えと耐熱パテ
コンクリート縁で対処出来るか?

 
つまりセンサーの半分は外気温に晒されているのでセンサーが冷めて、正確な窯温度を伝えていない。
つまり現在の窯温度は、温度計が示している1200度を遥かに超えているのだ。
即、火を止めたのが7月1日、翌日窯出ししてみて、やはり推察は正しく作品は完全に焼き上がり1250度を超えていると判明。
7月26日には、危険なので窯を20cm移動したが、煙突が直角に曲がり簗の下を通っていることには変わりない。
そこで何とか窯と屋根の穴を真っ直ぐに繋げないかと、7月以来考え続けていた。

例によって閃くのを待っていたが、遅れに遅れ2ヶ月以上経った昨日、遂に閃いたのだ。
最大の問題は3点。1つは煙突の穴開き屋根下まで窯を移動できるか、2つ目は直に煙突を繋げるか?
そして何よりも直に繋いだ場合、最大の心配は屋根を伝わり煙突と屋根の穴の隙間から流れ落ちる雨が、
窯室に入り込みはしないか?ということである。
少しでも雨が入り込むようであれば、窯の傷みは加速し、稼働してなくても壊れてしまう。
そこで考えに考え、昨日いよいよ作業開始。



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