その1421ー2017年  長月


東の高芝山の上に、大きなおおきな虹が架かりました。
むんずと山荘を鷲掴みにして、虹は寝ている仙人もろとも空高く持ち上げ、えいっ、とばかり投げ飛ばしたのです。
モクモクと湧き上がる入道雲を超えて、薄っすらと広がり始めた羊雲を突き抜け、やがて落下。
山荘は悪名高い東の魔女の上にドサリ。

確かドロシーの時は東の魔女が履いていた靴は銀だったのですが、ありゃ、海と宇宙を映した碧になっているでは!
いいものの北の魔女が云うのです。
≪この碧い魔法の靴を履かせてあげよう。さあ靴を履いたら左手を延ばし、いっぱいに広げて、虹の丘に載せてご覧≫

 
山荘と共に魔法の国オズへちた仙人
ドサリと落ちて山荘は東の悪い魔女を殺し、魔女の銀の靴を・・・

ひんやりとしてとても柔らかくて、よーく耳を澄ますとドッキンどっきん虹の彩が流れ、
微かなかすかな響きが、掌へ伝わってきました。
暫くその鼓動を聴いていると、ゆらゆらとニューロンのような水草が漂い出し、お話を始めるではありませんか!
水草は絡み合ったり離れたり、離合集散を繰り返しながら、
混沌仙人の嘗ての存在から分泌された、静霊であるカオスのカオちゃんを生き生きと語るのでした。

覚えてましたか、そうあの7月の夏休みの自由研究で現われたカオちゃんです。
カオちゃんは仙人の動脈に潜り込んできて、
夜明けには仙人の体内を駆け巡り、260種類もの細胞扉の彼方此方をドンドン叩いては
≪起きろ、夜明けだ!≫と叫び、
激しく生命を揺り動かすのです。


 


橙色の彼岸花(狐の剃刀)

食卓にも秋気配
恐るべき軍団

熟す直前の唐黍が
やられてしまった。

甘くて柔らかくてジューシーで
すっかり魅了されていた唐黍。

その美味しい黄金の宝石が、
烏軍団に襲われた。

根元から倒され、観るも無残に
食い荒らされた。
辛うじて立っているものも
啄まれて白い芯を剥き出しにし、
甘い実は、影を留めない。


恐るべき
烏の軍団がやって来たのだ。
ほぼ収穫の終った
西畑の唐黍も十数本が、烏に
喰われたが
畑で姿を観ることは無く、
被害もそれ以上には
広がらなかったので安心していた。

しかし先々週あたりから
烏の軍団が山荘下の
里人の葡萄畑を飛び回り、
桃や葡萄を狙っている。

西畑ではコスモス満開

船宮神社で初めて逢った花(狐の剃刀)


1カ月程前から
林檎畑の唐黍も
被害に
遭い始めていたが、
西畑の唐黍のように
やがて襲撃は
下火になるだろうと
期待を込めて
楽観していた。

黄金の光を放つ極上とんもころし
で、昨日、
生り過ぎた林檎の
摘果に行ったら、
新たに数十本の
未だ熟してない
唐黍が
食い散らかされて
いるでは!



溶接した耕耘機

遅れた収穫ゴーヤー
今週はそろそろ収穫出来るかなと
愉しみにしていただけに、
悔しいの何の!

敵は上空から襲って来るので、
さしあたりテープを
唐黍の上に張り巡らしたが、
効果は期待できない。
最初は何の罠かと警戒するだろうが、
2,3日もすれば無害と判断し
襲撃を再開すること間違いなし。

林檎畑上の全面に
ネットを張り巡らせば防げるだろうが、
手間暇、費用を考えたら、
そこまでは出来かねる。
あの美味しい
唐黍の収穫を断念するしかない。

早熟林檎の収穫

復活した耕耘機の回転刃




秋冬用のレタス発芽
更に折角発芽した白菜のポット苗が
目白に帰っている間に全滅。
直射日光に直撃され
水分不足で枯れてしまわぬ様に、
わざわざ苗を日陰に移動して置いたが
その努力も水の泡。

発芽率の良いレタスと
播種した半分ほどが発芽した
ブロッコリーは、
幸い枯れなかった。
差し当たり大きく育ったレタスのみ
西畑と葡萄畑に移植。

直播きした西畑の大根と蕪は
勢いよく発芽し、
うーん、今秋は霜の降りる前に
大きく育ったのを
収穫出来そうとほくそ笑んでいた。

しかし発芽後暑い日が3日程続き
先ず大根が全滅、
何とか頑張っていた蕪も枯れ果て、
最初から仕切り直し。
前途多難じゃ!

白菜は2日後に発芽

レタスは畑に移植 

白菜は2週間後に枯れる 



夏を惜しみピアノ協奏曲第五番変ホ長調でる高砂百合と吾亦紅
一人慎ましやかに踊る高砂百合

『さよならドビュッシー』で第8回このミステリーがすごい!大賞を受賞、48歳での小説家デビューとなった中山七里。
1961年岐阜県出身現在56歳、既婚者で、家族構成はエレクトーン教師の妻と息子と娘。
岬洋介シリーズはクラシック音楽を題材とした作品であるが、中山本人は音楽に関して素人であり、楽器も何も演奏できない。
調べたが本名はネットでは見つからなかった。
『さよならドビュッシー』では「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第五番変ホ長調 皇帝」の第二楽章をこんな風に描写する。


受精した雌蕊は歓びを謳う

新たなる生命が光を発する
 
アダージョ、ロ短調。
まず第一バイオリンの弱音が
緩やかに歌い始める。
ピアノがそれを追って、
ゆっくりと
下降するカーブを描きながら
主題を変奏する。

弦楽器の音が
休息するように
横たわる中、ピアノは
一人慎ましやかに踊る。

第一楽章で
昂った気分を平穏に
戻そうとでもしているのだろうか、
そのメロディーはどこまでも
沈着でこの上なく詩的だ。



5本の雄蕊が雌蕊に迫る
奥さんがエレクトーン教師
だとしても譜面が読めないと
中々此処までの
描写は難しい。

ミステリーであることに
主力が注がれ、登場人物の
内的描写が物足りない。
読んでいて何処か
登場人物に隙間風が吹いていて、
文学としての愉しみが
期待できない。

音楽描写だけでもこれだけ
力を注いでいるのだから、
もう一歩人間の内面に
踏み込んで登場人物を描いたら、
ミステリーとしての
面白しろさと共鳴して
素晴らしい作品になるのだが・・・。





秋の実

 ガシャーン、ドタッ、ガツン
脚立が倒れ、その勢いで私がひっくり返り、脚立に後頭部をぶつけた音。痛―いっ!
りんごの木はなかなか手ごわい。
かわいい実を守るために、堅い枝を張り出して邪魔をするから、脚立を置くスペースが見つからない。おまけに地面は緩やかな斜面ときた。
あそこの実が重なっているから木に近寄りたいのだけれど・・・
入り組んだ枝の間に入り込んで脚立を立てるのは至難の業だ。
枝に邪魔されて身動きが取れなくなる。もう少し・・と頑張ったとたんバランスが崩れ、派手な音がリンゴ畑に響き渡った。
しばらくそのままひっくり返って空を見上げる。

ああ、羊雲だ。
草原のような筋雲が広がる脇に羊の群れが遊んでいる。秋なんだ。 涼しい風が汗を乾かして吹き過ぎて行く。
秋の風だ。ツクツクオーシ が鳴きだした。
「つくづくお―し つくづく惜―し うつくし―  美し― 」
と聞こえる。秋の虫まで声をそろえて鳴きだした。
またとない美しい初秋のひととき。つくづく惜しい。
大きくなり始めた実を残そうと、隣の小さく形も良くない実を採ろうと手を伸ばすと、
触れてもいないのに大きな実の方が落ちてしまう。
「え――っ!君じゃないんだよ―。」と言っても遅い。「いいんです、そっちの小さな妹をよろしく」泣ける。
みんな大きくしてあげたいのに。
この秋の実がすっかり大きくなって収穫する日も遠くはない。
秋は足早に深まっていくだろう。

 
鈴木敬信教授リーマン空間講座受講生の30年前と悠樹(7歳)
ナンガ遠征本隊出発日1987年7月21日の会食 成田空港Avionにて17人参集し乾杯!

驚いた!まさか脚立から落ちてひっくり返っていたとは!
頑張ったとたんバランスが崩れ、派手な音がリンゴ畑に響き渡った。しばらくそのままひっくり返って空を見上げる≫

ヒマラヤ遠征登山のデジタル化を進めている最中で、1987年の第2回ナンガ・パルバット峰
画像を編集して入たら、30年も昔の冨美代さんと悠樹の写真が飛び出してきた。
書斎から西畑、中畑、葡萄畑はよーく見下ろせるのだが、一番遠い林檎畑は葡萄畑の繁りに遮られ全く観えない。
従って当然、脚立のひっくり返る音も、叫びも書斎からは聞こえない。

「林檎、欲しいなら自分で好きなだけ採っておいで!」
と云って一人で林檎畑に向かわせ、仙人は書斎に籠もり、パソコンに向かって編集作業に熱中。
さてこの懐かしい30年前の写真、何か伝えたがっているような・・・。
なんぞと眺めている最中に、画像から30年後の当の本人は、誰も居ない林檎畑でひっくり返って、
群れて遊ぶ羊雲やツクツク法師、秋の虫たちの合唱に聞き入り、またとない美しい初秋のひとときを堪能していたとは!

それにしても後頭部の打撲は、どうなったのかな。えっ、ショックで30年前に全記憶がリセットされたって!


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