桜銀河の蝦蟇アートマンと化す混沌仙人


その1373ー2017年  卯月

虚空に漂う無数の櫻花弁に載って何処へ
4月14日(金)晴 神田川駒塚橋下に現れた山荘蝦蟇

≪神田川がインダス河になりおったぜ!≫
そう嘯きながらインダス川に流れる無数の花弁に身を委ね、彼岸の地・ヒンドゥー教徒の大地を観やる蝦蟇。
ペルシャから東方に向かうと、ヒマラヤの大山脈を切り裂き滔々と流れる激流インダス河に
総ての旅人は行く手を阻まれる。
その激流の彼方、彼岸の地に棲む人々をペルシャ人は彼岸の人・シンドゥ(sindhu )と呼んだ。

Sindhu は西欧に渡りIndiaとなり激流大河はインダス河と云われ、やがてこの地を植民地として支配した大英帝国は
彼岸の地に棲む人々の土着宗教をSindhu の地名からHindu と記し、ヒンドゥー教は世界に認知されたとか。
なるほど、それで蝦蟇の奴、神田川なんぞを強引にインダス河に見立て
恰好つけてヒンドゥー教のシヴァと戯れていると云うわけか。
処で蝦蟇の観てる彼岸の地・ヒンドゥー教徒の大地とは、一体何処にあるんだ?



花吹雪変化して花筏に

まーそう興奮するな!

インダス河は仙人が何度も挑み続けた
ナンガ・パルバット峰を巡る河で、
仙人とは切っても切れない赤い糸で
結ばれていると蝦蟇の奴、知ってるもんだから、
敢て知ったかぶりして云ってるだけのことさ。
≪大変だ!どうやら格上げされて
かの有名なインダス河になっちまったらしいぜ!≫
蝦蟇の太々しい嘯きを聴きつけて
叫ぶのは神田川か?

 
銀河となって流れる花弁



花の銀河が光を孕み耀く


神田川め、その気になって
花弁を銀河と化し
すっかりコスモスになりきっているでは!
あれっ、ちゃっかし太陽まで
呼び込んで、いっちょ前のブラフマン気取りだぜ。
それにしても今日の神田川は
随分綺麗だぜ!
いや、綺麗と云うよりか、芸術作品の風情すら
漂わせていて、
うんにゃ、哲学的ですらあるような!
 
天空に放たれた蝦蟇のアートマン


2億年の須臾


大地を位相変換
褶曲ヒマラヤ断層直下のBC(左から田村、坂原、山口)

ハラッパーを生みモヘンジョダロを
築いたインダス文明の光の帯だ。
北緯35度29分、東経74度36分
インダス河上流、
ナンガ―パルバッド(8126m)直下、
インダスの光の帯にかかるラキオト橋。

 初登頂までに31人の生命を
奪った魔の山ナンガ―北面の
キャラバンルートは、
この橋から始まり煌く谷の流れを
追ってラキオト氷河に至る。


大気の底に眠る単調な広漠たる大地に
S字形の氷河が迫る。
自らの重圧で雪が氷と化した氷河は
すざましい力で山稜を刻み、
累々たる氷の巨塊を
遥か下方まで連ねている。

何の潤いも無い赤茶けた大地。
剥き出しの地表を熱射が焼く。
大気は
寡黙(かもく)に燃え上がり、ゆらめき、
大地を位相変換し地平線を歪める。

 大地の隆起断面に生じた海の断層が、
かつて生命が存在したことをわずかに示す。
何の救いもない無機質だけの赤茶けた
この大地は、ついこの間、
そう二億年程前まではティティス海だったのだ。
『二億年の
須臾(しゅゆ)目前にして
肉体の存在感が、ゆるゆると拡散していく。

 希薄になり透明になり、
やがて大気の熱いゆらめきの彼方へ
消失してしまう。
たかだか百年の存在でしかない肉体が
『二億年の須臾』を実感するのは不可能だ。
しかし広大無辺の荒涼たる空間に
肉塊が放散してしまえば、
もう私は永遠の時空を
流離(さすら)う流砂なのだ。

 二億年の瞬時の眠りから覚め
熱風にあおられ、
断層のベッドから舞い上る一粒の流沙
内なる世界を西域の高峰に求めて
(たび)流沙となって今
私は懐かしい地に帰ってきた。

 ラキオト氷河上部標高6000mの
巨大な氷塊の上から私は
インダスの大地を見おろしていた。
垂直に5000mも離れた地表は細かい表情を失い、
赤茶けた色調とわずかなうねりだけを見せている。
 干からびた地表の隆起を切り裂いて
一条の光の帯が走る。

 
インダス河(カラチからイスラマバードへの機上より)




永遠の時空を流離うアートマン
下方にて氷河は融け
荒々しく猛り狂うインダスの水となり、
砂漠の中を南へと流れ
アラビア海に注ぐ。

 アラビアの太陽に熱せられ
海の水は雲となって宙に漂い、
北上してヒマラヤにぶつかり
再び氷河となる。


一条の光の帯に煌めく星々

インダス文明の光の帯(星々は知のアートマンか!)

一回の大循環を時の最少単位として、
何の潤いも無い大地に
インダスは時を刻み、
生命の歌を歌い続けた。
歌はインダスの岸辺に流れ生命を育み、
やがて人類に文明の火をともした。

 巨大な氷塊の上で私は
何も考える必要がない。
インダスの地表を見おろすだけで
全身が激しく感じるのである。
かつて私は一粒の流沙であった。
そしてこの瞬間正しく私は
流沙に回帰しているのだ。

瞬時の眠りから覚め(やっと出て来た鯉)
 
大地の語りかけが聴こえる。
インダスの歌が私の内的世界を
やさしくゆさぶる。
ゴンドワナ大陸と北の陸塊の
褶曲活動によって生み出された
ティティス海底の突起が、
純白のドレスを身にまとい
流沙となった私を招く。

 あの白く輝く峰に
チョンラという名前をつけたのは
インダスの民パルティー人だろうか。
それとも東より騎馬に乗って
やってきた遊牧民だろうか。



ハラッパーを生み
ヘンジョダロを築いたインダス文明

氷塊の上の(つか)の間の休息を終え
更に上部の氷壁にザイルを固定し、
クレバスにザイルを渡し
チョンラ峰に近づく。
急峻な氷の壁にピッケルとアイスバイ
ルを
交互に打ち込む。
両足の間に広がる空間に、
砕かれた氷片が音も無く吸い込まれる。

 凍てついたガスの乱舞に襲われながら
シジフォスとなって、
氷壁にアイゼンを蹴り込み
ピッケルを打ち込み続ける。
標高6400m、薔薇色に染まる
雲海上に出る。
ティティス海底突起の頂稜部は
すぐ目の前にあった。

 北から南側に張り出した
白鳥の翼のような巨大な雪庇に覆われて
かつての海底が残照を浴びていた。
6448mのチョンラ頂点に立ち
全身が
(しび)れるような寒気に
抗いながら、沈みゆく
赫奕(かくやく)たる
太陽を私は見た。

 それは確かに二億年前の太陽であった。
(ナンガ・パルバット銀鞍1983年
2億年の須臾より)


インダスは時を刻み、
生命の歌を歌い続けた



青梗菜の黄と桃のピンクが大地を染める(山荘西畑)
カラチを飛び立ち、
しばらくすると
やっと太陽が昇ってきた。
カラチから
イスラマバードへの空の旅は、
パキスタンの中央を
北西に貫く
インダス河の流れと共にある。



  東の地平線より現れた光が、
大きく蛇行する
インダスの黄土色の
流れに反射し金色に輝く。
数千年前の
インダス文明の栄光を
象徴しているかのようである。

三つ葉躑躅の赤紫、山茱萸と菜の黄色、杏子の桃色に包まれて(山荘西畑より)



今日は!馬鈴薯発芽(山荘林檎畑)
この近辺は
ハラッパーやモヘンジョダロを
生んだ
インダス文明の中心地。
人類の知性は砂漠を流れる
金色の水の恵みによって
芽をふいたのである。

自生冬越しレタスもグングン(山荘西畑)
氷河の水を集め
激しく流れる
インダスの源流は、
地表の彫刻家である。


3年目の立派なアスパラ

1年ものの冬越し人参(山荘西畑)

春を待ちわびたパセリ(山荘西畑)
すさまじい
エネルギーを秘めた急流が、
地表を鋭く切り裂き
深い谷を形成する。
激突する水の轟音に混じって
不気味な低い音が
大地をゆさぶる。


新たに植えた5本のアンネ薔薇も発芽(前、奥庭) 
  強力な水のエネルギ―が
川底の巨石を引きずり、
押し流す音である。
赤茶けた濁流の底から
ドロドロと
湧き上る音は、
呪文のように聞こえる。
 
昨年の鬼灯の発芽も嬉しか!(山荘西畑)
 

この谷の絶壁の上に
細々とした道が
北へと続く。
パキスタンと中国を結ぶ
カラコルムハイウェーである。


 
冬越し玉葱もしっかり育って!(山荘西畑)
凸凹のひどい
このオンボロ道は、
ナンガ―パルバットの
山麓をかすめ、
クンジェラブ峠を
経てムスターグアタ(7546m)
からカシュガルへと通ずる。
 






ブロッコリーも大収穫!(葡萄畑)
長安とローマを結ぶ
かつてのシルクロードの
最も困難な部分である。
一年中氷雪に
覆われた高地では

早速生でサラダに
幾多の旅人が
帰らぬ人となった。
それでも勇敢な商人は
夢を抱いて紀元前より、
この道を歩んだ。

野蒜が美味しい!(山荘石段収穫)
そして玄奘三蔵や
マルコポーロも。

この金色の流れの遥か彼方に、
我々の一夏を賭けた
夢があるのだ。
 (ナンガ・パルバット銀鞍1983年
インダス河より)

霜降り椿もお見事!(奥庭)

牡丹ももうすぐ!(奥庭)

杏子も3か所で満開!(奥庭)



水仙だらけの前庭

花簪の接写でーす

水仙こそ山荘の主役
クリビアが嘆く。
≪何さ、これ!
神田川の花筏まではいいけど
その先はコピペじゃない!
知らないって!
ほら、混沌仙人回帰の抄から
Foreignをクリックしてごらんよ。

常に刈り取られる蒲公英
ムスターグアタ北峰初登頂が出てきて
そのちょっと下に
海外登山記録があって、
その一番下の項目に有るだろう。
「ナンガ・パルバット銀鞍」
そいつを出してみて。
ほーら同じでしょ!
こりゃ完全に手抜きだね。

部屋の中は君子蘭で一杯!

先週はクリビヤ名で蝦蟇と共演

仙人書斎は咽るような花粉で



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