191の1ー2021年 神無月
断末魔の呻きを発し最後の作品を焼く窯・KTBー70A 9月12日(日)晴 窯底から火漏れしつつ1050℃まで上昇し息絶える 誰にも使われない仙人の窯が、仙人の存在を語るが如くひっそりと佇んでいる、それだけでいい。 新しい仙人の窯が、まだまだ沢山の作陶の可能な窯が、誰にも使われずに、ひっそりと佇んでいる。 若しや窯の中に仙人は潜んでいるのかも知れない。 いや新たなる窯は輪廻転生の輪に繰り込まれ、西蔵山荘壁画と呼応し 千度を超える紅蓮を塗りたくり、仙人の心象風景を描き出さんと試みるのかも。 |
灼熱するチムニー 再び窯は燃えだし850℃まで上がったが、 それ以上は何としてでも上がらない。 窯底部の炎漏れを直さない限り 窯温度を上げることは出来ないと判断し、 燃料バルブをr閉じる。 うーん、窯底部の修理をするか新たに買い替えるか悩む。 窯の寿命を越えて27年も使っているので 最早限界であることは確か。 この大きさの窯を買い替えるとなる と200万円以上の出費となるが、 買い替えねば陶芸活動は停止せねばならない。 麗樹か悠樹が陶芸に興味を持ってくれるなら、 新たな窯を設置するのに躊躇しないが、 やらないとなると 仙人死後は無用の長物となってしまう。 |
9時火入れ、1050℃迄まあまあ順調に温度を上げたが、 18時見に行くと炎は弱く 真っ赤になっていた煙突も黒ずんでいる。 石油バルブも最大値に近い6.5迄開いているので 炎が弱くなることはありえない。 温度計をみると800℃を示している。原因不明で焦る。 まさかと思って燃料計を観ると0。 点火と同時に満タンにして置いたので、 タンクが空になるなんておかしい。 窯底部の隙間からの炎漏れで燃料消費が加速され、 1250℃に達する前に燃料が切れたのだ。 急いで石油をタンクに追加しようと思ったが、 いつもは8本の20ℓタンクに満たされている 石油が今日に限って総て空なのだ。 仕方なく風呂用タンクの石油を20ℓ抜き取り、 窯タンクに入れる。 |
窯底から炎を吐き炎上 |
午前9時火入れ |
見事に焼きあがった墓標! |
畑に転がっていた南瓜を焼く |
2段、3段目の6枚の大皿は 変形したり 棚板に焼きついてしまったり、 割れたりと 悲惨な姿を晒していたので、 最下部1段目の隊員墓標は 目も当てられぬ 無残な姿になっているのだろうと、 恐る恐る棚板を上げると、 見事に焼きあがった 墓標が現れた。良かった! |
耐用年数を越えた山荘窯の 最後の仕事は 隊員墓標だけを焼き上げることに あったのかと、改めて感謝! 5個の支柱に支えられた墓標板は 裏側に反り、 円柱に取り付けるにはピッタリだが、 滝下の平板な岩に ボルト締めするのは難しい。 裏側に木材などを入れて 空間を埋めないと、 墓標板が割れてしまう。 |
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9時間後の窯温千度 |
夜8時、11時間後に断念! |
鉄葎 (カナムグラ) 雲がゆっくりゆっくりと形を変える。じっと見ているとかえってその変化が分からないのだが、 ふっと目を逸らして別の風景に見惚れると、わずかの時間しか経っていないのに、 目を戻したときには雲はすっかり別の形になっているのだ。 いくらでも雲を眺めて居たいけど、贅沢な朝食が終われば、仕事がたくさん待っている。 山荘の魅力は十指に余るが、中でも嬉しいのは空が広いこと。 山荘で空を見上げるたびにしみじみと思う。 カナムグラ それは畑仕事をしているときにも感じる。 畑の真ん中で空を見上げた時の何とも言えない開放感が大好きだ。 決して楽ではない雑草との闘い。今回はぶどう畑の縁周りの特別にしぶとい蔓草たちとの闘いだ。 蔓性の雑草というのは生命力が凄い。 成長の早さと、簡単には手折れぬ強さで、一度侵入を許すとたちまち蔓延ってしまうのだ。 |
これだけ大きいと瀧全体とのバランスが難しい! 此処でどうかな!ちょっと煩いかな 多くの遭難者を出し《人喰い山》と呼ばれたナンガ・パルバット(8125m)の山巓直下で墜死した中島修。 ブータン未踏峰遠征直前の国内トレーニングで墜死した中川雅邦。 世界第2の高峰K2(1611m)やナンガ・パルバットで活躍した成田泰樹は雪崩に押しつぶされた。 大宮秀樹はナンガ・パルバットの西壁で滑落、同じくナンガ・パルバットでヒマラヤ初デビューした大谷均は落石を頭に直撃。 望月泰彦はチョモランマ高所キャンプにて高山病で孤立死し、ナンガ・パルバット隊員の小口順史は、岩壁で宙吊りとなって死亡。 山荘の畑仕事に励んでいたナンガ・パルバット隊員・高橋敏雄はクレバスに墜ちて死んだ。 ザイルを組んで天空に屹立する光を共に求めた刹那を、このささやかな瀧にとどめよう。 |
8名の若きクライマーを想う |
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木通の背後に開かれた時空 |
泣く子と鉄葎には勝てない! 中でも鉄壁の強さを誇るのが鉄葎! 鮮やかな緑色で大ぶりの紅葉のような切れ目が入った葉の形、 見た目だけだとそんなに強靭な敵には見えない。 ところが葉っぱには小さな産毛がいっぱい生え、触れるとべたべたと纏わりつき、皮膚に触れれば嫌な痛痒さ。 蔓は細いくせに何と丈夫なことかと呆れるほどで、素手ではとても引きちぎれない。 絡まった蔓を鎌や鋏を使って切り離し、両手で力いっぱい根っこを引き抜く。 カナムグラの蕾 根っこがうまく抜けるとやったー!と達成感。 しかしこれの繰り返しが延々と続くと、両腕がだるくなってきて、力が入らない。 照り付ける太陽は真夏並みで、汗が滴る。 待ち構えていた虻や薮蚊が網帽子の隙間から侵入、刺された時の痒さは堪らない。 途中までは一本残らず抜くと張り切っていたのに、最後の方はかなり甘くなってしまった。 という訳で、隅っこの一部はきっと来年またまた大繁殖してしまいそう。 泣く子とカナムグラには勝てない!山荘の諺に加えて欲しいくらい。 |
瀧の石垣に稔る木通 |
木の実が 次々降り注ぐ! |
とろりとした甘さは絶品! |
残暑の草取りを終え見上げれば やっぱりもう秋の空が広がっている。 それだけで気持ちが爽やかになる。 大仕事を終えたような 満足感で畑を引き上げると、 陶房の屋根に大きな音を響かせて、 木の実が次々降り注ぐ。 金木星の花が ほんのり香りを放つ。 日差しはきつくとも、地上の 季節も確実に秋なのだ。 色付いた柿の葉がはらりと舞い落ちた。 一階ベランダでの夕食は 広い空の下で、 刻々と形を変える雲と夕暮れへと 色合いを整え始めた大気が入交り、 独特の雰囲気が生まれる。 |
天空南瓜とコラボ |
小倉山の裾から中腹へ ゆっくり這い登る影は、 西へと傾き始めた太陽が 扇山の後ろへ隠れながら 生み出した扇山の影なのだ。 突然耳慣れない轟音が響き、 山荘のすぐ傍を 低空飛行しながら大型ヘリが現れ、 真っすぐに向かいの 山並みの襞の奥へと消えた。 再び旋回するように現れ やがて飛び去る。 何か事故でもあったのだろうか。 ずっと以前に山林火災消火のために ヘリが湖から水を汲み上げ、 何度も往復している様を 山稜から眺めていた記憶が蘇る。 |
木通ワインもいいかも! |
時空を繋ぐ木通電話! |
ラ・フランスや柿も落ちる |
想い出サンドイッチ 大菩薩だったかな。 火災で黒焦げになった切り株や薄原の跡を、ユウロやマアルと共に登った山もあった。 そういえば、葉の色付き始める今頃の季節から、燃えるような紅葉の季節を経て、 山も森も全てが褐色の彩の無い世界に変わる頃まで、週末ごとに山行を重ねた時間があったなあと想い出す。 犬たちと共に歩いたのもその頃だった。まるでコラージュのように様々な山の場面が張り合わされ蘇る。 一瞬にして時空が繋がり、秋の色彩が記憶のリボンとなって一気に解かれ揺れて広がる。 想い出サンドイッチなんて名前にして、齧り付いてみようか。 山荘産・木通,林檎、無花果 山荘レストランの特別メニュー。人参パンに想い出の山をひとつ挟んで、サンドイッチにしたなら 懐かしい味が心にいっぱい広がって、いくらでも食べられてしまうだろうな。 最早歩いて登ることが難しくても、 想い出を咀嚼して存分に味わうことが出来るのは、思い切り山と戯れた時間があったから。 隊長がよく言っていた「山は逃げる」という言葉の意味の重さ、登れるときに登らなければチャンスは失われ、 逃げてしまった時間は取り戻すことは出来ないのだということが実感される。 そういう意味では悔いない程多くの時間を山に費やし、山と向き合い、山に抱かれることができた。 だから今、想い出サンドイッチなんて馬鹿なことを呟いて、 いくつもの山行の想い出を味わってみるのも贅沢なご褒美時間だと思えてくる。 それでも、本音は願わくばもう一度錦秋の山稜を自分の脚で踏みしめたい! |
仙人の狭窄箇所は9箇所に及ぶので 神経根、馬尾共に圧迫されているのであろう |
仙人のMRI画像 |
MRI所見(診断医師・高橋佳子): 以下7つの症状と5つの病名、仙人の解説と最終的病名。 ①腰椎椎間板は退行性変性し、椎間は狭小化。 老化現象により組織や細胞の機能の減退が生じ、 細胞内あるいは細胞間に量的または質的に 異常な代謝産物が出現し、 椎間板が変性している。 椎間は狭くなり飛び出し脊柱管を圧迫し痛みを発する。 |
6箇所の狭窄とL5の後方辷り症、 2箇所の黄色靭帯肥厚あり |
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②椎体骨棘形成、終盤破壊を求めます。 骨棘とは圧迫された椎体の上下が 棘の様に張り出したもので、 これも脊柱管を圧迫し 痛感物質ブラジキニンを生成し、痛みを生じる。 椎体と椎間の間には厚さ1mm程の 終板と呼ばれる軟骨があり、これが 破壊されると腰痛を起こす。 所見の「求めます」は認めますの間違いなのでは! |
左:正常な脊柱管 右:狭窄した脊柱管 |
③L5錐体は仙骨に対し、軽度後方に偏位しています。 L5は5個の腰椎の最下部5番目の椎体で、 その下に仙骨が連なるがこれが 上からの圧力で、背中側(後方)に偏位している。 脊椎すべり症でありこれが腰痛、 下肢痛、下肢しびれ、下肢の筋力低下、 膀胱直腸障害、間欠性跛行などの 症状を引き起こしている。 ④椎間板は後方に突出。硬膜嚢を圧排してます。 L1からL5までの椎間板総てが 後方(背中側)に突出しており、黄色靭帯と 硬膜の間に位置し硬膜を包む硬膜嚢を 圧排(押し出し排除する)している。 腰痛を始め、臀部の痛み、 下肢の痛み・しびれなどの知 覚障害、筋力低下に 伴う歩行障害、排尿困難、排便困難を生じる。 |
圧迫され椎間板は変性する |
飛び出した椎間板、骨棘 肥厚靭帯は脊柱管を圧迫する |
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これは前方への辷り症だが 仙人のL5は後方へ辷っている |
⑤両側椎間関節の変形、黄色靭帯の肥厚あり。 加齢とともに椎間の両側にある椎間関節も 「変形性関節症」を起こし、慢性腰痛を生じる。 硬膜の外に硬膜外腔があり、 外腔を取り囲む黄色靭帯がある。 脊柱は全体重を支える為に 非常に大きな重量負荷が掛かっているが、 仙人は60年以上に亘って、 重い荷を背負って登山活動を続けていたので 椎間関節などの疲弊が特に激しい。 椎間板が脆くなって椎骨を支える力が弱くなり、 これを補完する為に黄色靭帯が 椎骨を支えようと頑張る為にぶ厚く変形し、 脊柱管を圧迫し狭窄症に追い打ちをかける。 |
椎間板膨隆、椎体のずれ、 椎間板劣化、黄靭帯の肥厚が神経圧迫 |
脊柱管がSOS発信だって! |
どれどれ、神経の通る孔が狭小化! |
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⑥骨性脊柱管径は狭窄しています。 脊柱管と骨性脊柱管の違いを調べたが、 骨性脊柱についての記述は見当たらず。 ⑦両側椎間孔狭小化、 各神経根圧排を認めます。 椎体と椎弓の間にあり、 脊髄や馬尾神経から 末梢に行く神経が通る部分が椎間孔で、 此処が狭小化すれば当然ながら 神経が圧迫され痛みが生じる。 |
そうか、このゴムパッキン老化か! |
とまあ、下半身の痛みの要因が 勢ぞろいしてることが解り、 絶望的吃驚仰天! 画像診断の結果つけられた 病名も大物がズラリ! 変形性腰椎症、腰椎椎間板変性症、 L5椎体後方すべり症、 腰部脊柱管狭窄症、 両側腰椎神経根症。 手術せねばならぬが、 大きな手術となり手術しても、 改善が望めるとは 期待できないとのこと。 |
新品に替えてみよう! |
これでグイっと締めて! |
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更に一般的にS字発条状に 曲がっている背骨が、 仙人は真っ直ぐなので、 上からの重圧が直に腰椎に掛かり、 椎体、椎間板、黄色靭帯の 変性は避け難い。 うーん、死に近づくと云うことは 中々大変じゃな! さてこれだけの病名を齎した 主たる原因が 登山であると想定し、登山と 症状の重さを 天秤にかけてみるとどうなるか! |
腰椎オペ完了じゃ! といけばいいんじゃが・・・ |
考えるまでもない。 ヒマラヤを核にアンデス、アルプスと 30回に及ぶ海外登山と、 10峰を超える初登頂が 齎した豊穣な果実の代償が、 こんなもんで済むなら 歓んで受け入れようではないか! なんちゃって 格好つけてはみたものの、 歩くたびに痛ててと 呻っているんじゃ 目も当てられないぜ! |
金木犀の濃厚な香りを吸って動き出した空蝉 まじかよ!虚ろな蝉が歩いている! この瞬間、仙人は有無を言わせず自らを観せられてしまったのだ! 地、水、火、風を虚空の4次元鋏で切り取り、アーカーシャ(阿迦奢)へのそり、ノソリ! 5か月間も右脚の痛みと対峙してきたので、硬膜外ブロックと5種のヤクによる痛みの消失は奇跡的としか言いようがない。 その代わり復活した腰痛は、以前苦しんできた症状とほぼ変りない筈なのだが、忘れていただけにより一層厳しく感じる。 夜中トイレに起きるには、先ず両足をベッドの下に降ろし縁に腰掛ける。ゆっくり腰を上げ体重を腰にかける。 改めて立つと云うことは上半身の全体重を腰が、すべて受け止めることだと気付く。 1歩、2歩脚を前に出す。寝室のドアまで11歩、腰痛の無い時なら5歩の距離。 僅かな飛び跳ねを避け、小用であっても便座に座って用を足す習慣を身に付けているので、トイレの便座に腰をおろす。 これで腰の痛みから瞬時解放され、ゆっくり小用する。 これを夜中に3~4回行うのは結構な難行、いや軟行くらいかなと思いつつ夜明けまで闘いは続くのだ。 で、昨日ふと思った。右脚の痛みが消え腰痛が復活し元に戻ったなら、 このまま副作用に悩まされながらヤクを呑み続けても、腰痛は収まらないのでは! だったら試しにヤク断ちをして、右脚の痛みが再発するか腰椎L5,L4様に、お伺いを立ててみてはどうか! 見事に副作用である便秘、めまい、口の渇き、むくみは消えつつあるが、殺されていた神経の働きが元に戻り鬱が襲来。 あー、老いてなお生き続けることは、何たる至難の業! こうなったら、秋桜は重力が勝り無次元の特異点に収束し、再びビッグバンを迎え |
連日咲き続け実もどっさりモロッコ! |
初秋ののアンネ薔薇 |
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遂に天辺まで昇りつめた蝉抜殻 |
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今年もあちこち庭を飾った高砂百合 |
噛砕かれるCrunchか、 バリオンすら存在せず、絶対零度に 極限するFreezeか、 それとも素粒子が飛び交う、 引き裂かれたRipとなり秋桜は、 終焉を迎えるのか! 知は空蝉に収束する。 |
咲き乱れる野菊 |