1791ー2020年  神無月


吊り上げ荷重200kgなんて、ホンマかいな!

だむウエイター

森テラスで朝の食事を楽しみながら、
仙人が問いかける。
「料理を2階に運べる機械があるって
知ってる?
そういう家は見たことある?」

小さなエレベーターみたいなもの?
学校の給食運ぶエレベーターを
小型にしたようなものかなと
想像を巡らす。
どうやら仙人は、この2階テラスへ
食事を直接運び上げることを
考えているらしい。

小型リフトが付くのかなあと
漠然と想像するものの、
そんなことが出来るのだろうかと
半信半疑で、暫く後には
そんなことはすっかり忘れて、
せっせとお盆に乗せた皿を
運ぶのであった。

そんな話をしたことも忘れていたら、
帰りの電車の中で突然
ダムウェイターの話が始まった。

 

 

ダムウエーターとは
小型運搬機のことらしく、仙人の
頭の中は目下例のテラスへの
料理運搬機のことで
占められているらしい。


熱心な話しぶりを聴いているうちに、
だんだんその熱気が伝わってきて、
いつの間にか面白そうと
訳が分からないながらも、
あれこれ想像してしまう。

なんとなくその設置作業に
参加出来たら楽しいだろうなと
思っていたが、次の山荘からの
招待状は暫く届かない。

2週間以上を経て訪れた山荘で、
完成したダムウェイターの
威力を目の当たりにして、
これなら仙人が自慢するのも
無理ないと納得。

キッチン入り口脇へ出て、
運搬籠を安定させるために、
今まで一階テラスで活躍していた
アルミの折り畳み脚を広げて
台座として利用する。


しかし信用出来ないからザイルで確保して!




之なら人間吊り上げも可能じゃ!

ボタン一つでトレーなら
23回分の料理が、一気に2階まで
やってきてくれるのだから
格段の優れものだ。

ちょっとした実験をしているみたいでもあり、
大掛かりなままごとをしている
ようでもあり、とにかく面白い。
仙人が言うように、子供に帰る気分とは
これなんだなと笑いが込み上げてくる。

このダムウェイターの
素晴らしいところは、設置位置にある。
仙人テラスと森テラスの両方から
自在に使用できる上に、
キッチンの扉の直ぐ横に降りてくるので、
載せるのも楽にできる。

ぐんと便利になった運搬作業の
恩恵で今後はますます、
2
階のそれぞれのテラスの使用頻度が
増えるのだろうな。

仙人の凄いところは、閃いた
アイディアを何としても形に
してしまうところであると、改めて
感心した出来事でした。

大掛かりなままごと

そこにプラスティックケース籠を置き、
料理や皿を積み込む訳だ。
運搬籠に大皿もカップも
載せられるだけ載せると
かなりの量になる。

まずは1回目、2階で操作が始まると、
籠は空中に吊り上げられ
ゆっくりと昇ってゆく。
これは見ものだ。
ドキドキわくわくしながら見上げていると、
ちゃんとテラスの位置で止まり、
中の皿たちはどれも中身が零れたり、
倒れたりした様子もない。

初めて話を聞いたときに
想像した小型エレベーターに比べたら、
ずっとシンプルなただの籠なのに、
全然只者ではない籠の威力。
仙人マジックを見ているようだ。

今度は2階に上って、
自分でリモコンのスイッチを入れて
籠を下げ、載せられた料理を
緊張しながら運び上げる操作にかかる。

 
あれっ、止まっちゃった!



蝋燭スタンド&紙コップの灯

闇の静けさと美しさ

夜の森を背景にテラスの椅子に座ってみる。
想像以上に居心地がよく快適で、
しかも今までのどこでも、味わったことのないような
美しい夜を堪能できることが分かった。
特別な人だけが招待される、森のレストランの貴賓席。

夜の森は漆黒の闇に包まれ、上質な絹布でくるんでしまったかのように、
一切がしっとりとした闇の中に消失し、森であることすらわからない。
此処では透明な屋根が思いもよらぬ、大きな効果を生み出す。
テラスに灯された、いくつかの照明灯が無数に拡散される。

 
 
闇が迫る≪彼は誰とき≫に

階段出窓の大きな硝子を透して、イオの部屋に輝く蒼い星座たち。
硝子、灯り、闇それらが混然一体となり、
昼間とは全く違う空間を創り出し、
そこには無限の深さを感じさせる、何かがある。

闇の静けさと美しさをこんな風に、
引き立ててくれる場所が他にあっただろうか?
と目を瞠る思いだ。
夜のしじまに溶け入るかのように、幽きメロディが揺蕩う。
しっかり活動した一日の終わりに、このテラスで夜に巡り逢えたら、
深い思索の入り口に、立つことが可能かもしれないし、
素敵な夢の世界への扉を、開くこともできそうな気がしてくる。


LEDイルミネーション


秋じゃが掘り

夏の終わりに


夏が終わってしまった。
朝食のテーブルで、
ふとした静寂に唐突に押し寄せる喪失感
ついこの間まで
煩いほどに鳴き続けた蝉たちは、
いったいどこへ消えたのかと
森の梢を見上げる。
梢の上を風が通り抜けていく。
<風立ちぬ、いざ生きめやも>
言葉が零れる。



池畔の石垣に木通が沢山!

細かく揺れる葉擦れの囁きが、
密やかな応える声になり、
木霊のように心に響く。
若い日には死は
ある意味憧れにも近い、
どこか甘やかな香りさえ放っていた。

死が観念であり、弄べるほどに
遠い存在
だったから
なのかもしれない、と今では解る。


山荘窯で焼いた表札
死は最早慣れ親しんだ影のように、
当たり前にそこにいる。
甘さも憧れも受け付けない厳然たる
事実であるからこそ、
却って安堵できるのだと思う。

どんな存在をも、死は必ず
その胸に抱きとってくれるのだから。

気が付くと
葉擦れの音に重なり、
ピアノのメロディが流れる。


ゴーヤーもどっさり!

小さな無数の木の葉たちは、
ピアノの演奏に呼応する如く、
それぞれの枝を揺らし
まるで曲想を解釈して
いるかのような動きをする。

一緒に演奏を楽しんでいる気分になる。
森には音楽がよく似合う。
というより、音楽と森が一緒になったとき、
森も音も一層輝く。


小さな秋の贈り物!




生命の爆発のような激しさ(仙人テラス)

このテラスで
流れる音色に耳を
傾けていると、
音楽と森と存在自身が
一体化して、
自らが自然そのもの、
音楽そのものになってしまう。

小鳥の声も風のざわめきも
虫の鳴き声も
全てが溶け合って、
遠くへ
連れ出してくれる
広がりが生まれる。


<風立ちぬ、
いざ生きめやも>
あの夏の
生命の爆発のような
激しさは
既に失われ、やがて
冷たい風の中で
羽ばたく術を失う日が、
目の前に迫る。

でも、その瞬間まで、
自然の中で呼吸が
出来たら、きっと
自分らしく生き抜くことが
可能なのではないかと、
ふと思う。


夜と昼が交差する僅かの時間帯(仙人テラス)



微睡みの中で見る

繊細過ぎる夜明けの光を享受することもなく、
泥のような眠りの沼に閉じ込められる、
きっとそんな時間帯なのだ。
イオの夜明け、微睡みの中で見る夢は不思議で美しい。

あるときはシャコガイの光に導かれ
ビィーナスそのものになり、
体の深奥に金星が宿って光っていることもある。
別の瞬間には、存在前の星々の欠片に戻って、
木々のさざめきや風のざわめきと無限の語り合いが
続く歓びに目覚めたりする。

イオの宇宙空間の中では、刻まれた太古の記憶や、
日常では感じられないシックスセンスが
呼び起こされるのかもしれない。  

小宇宙イオ


闇の中に蒼い瑪瑙の星々が浮かび、
窓の外には
明るく輝く金星や木星、ときには火星も赤い輝きを放つ。
硝子窓の中には、巨大な木星が溶け込み、
闇が後退し始めると、
浮かび上がる木々のシルエットが更なる変化を加え、
小宇宙イオの最も美しい時間帯となる。

もしも創造主があるのなら、
夜と昼が交差する僅かの時間帯、
この世に特別な光を授け、あらゆる生ある者たちに
命の美しさを、目覚めの歓びを
思い起こさせてくれるのだろう。
都会の生き物は人工の光に曝され続け、


 
唐突に押し寄せる喪失感





手動ウインチ(EA989SA-1)
手動ウインチ(EA989SA-1)

ダムウエイターに使わなかった手動ウインチ(EA989SA-1)を、
あのやたらと重い窯蓋を持ち上げるのに、
改良できないだろうか!
説明書には引張能力270kg、重量1.7kg、ギヤー比3:1、
巻取能力ケーブル直径5mmで10m、6mmで6.5mとある。

更に横方向使用で警告として、負荷対象を持ち上げたり
降ろしたりする物ではありません、とある。
従って重い窯蓋を持ち上げるには適していないのだが、
まっ、いろいろ試してどんな能力が
あるか調べてみようと作業開始。
ダムウエイターと同じく最大の問題は、ウインチを何処に固定するか、
ウインチまで誘導する
滑車を固定出来る頑丈な支柱を、どうするかである。


屋根の垂木と波板の間に角材を渡し、ここに
フックの付いた金属用の螺子を2本捻じ込み、滑車を着け実験。
何とか耐えられそうだが不安なので、6mmロープを角材に
4重に巻き付け滑車を吊るすことにした。
窯室の西棚を支える単管パイプに、接続用のポンジョイントで
28cmの単管パイプを繋げば、
ウインチの台座が出来るのでは!

しかしそれには単管パイプとウインチを繋ぐクランプが必要になるが、
果たして適当なクランプが見つかるだろうか?
ネット通販カタログにも載っていないジョイント見っけ!
垂木止めクランプに似ているが、
孔1つで固定する相手は、垂木ではなく金属。
これなら工夫し加工すればガッチリ、ウインチを固定出来ると直感。 

軽々と開く窯に感激!


改良窯最初の作品は≪隊員墓標≫ 固定孔の位置が
クランプとウインチではズレがあり、
ウインチの孔を拡大し、
どうにか取り付けたが、実際ハンドルを回し
重い扉を上げると、単管パイプが
引き上げられ回転してしまうことが判明。

クランプを締め直しても
回転は抑えられず、原因は
ポンジョイントにあると推察し、
単管パイプそのものを換え、更に
垂木止めクランプで棚と固定し、
2重のクランプで単管パイプを締めてみた。
回転は止まったが、
新たな問題を発見。
窯蓋の力が直接かかる滑車を
固定している桁木の3つの孔が、
桁木を折れ易くしていることである。

当初滑車の固定は、
桁木の横に、フックの付いた
金属用の螺子を2本捻じ込み、
そのフックに
滑車を掛けて行っていた。

ヒマラヤ隊員8名の墓標
しかしこれではフックが折れるか、
抜ける可能性があり、
桁木にロープを回して
滑車を掛けることにしたため、
フックを抜いた孔が
残ってしまったのだ。

孔の開いたまま使用し続ければ、
桁木が折れることが充分に考えられ、
その時落下する重い蓋が、
如何なる惨事を引き起こすか、
考えただけでも恐ろしい。

そこでこの桁木を取り外して、
この穴開き部分を切断し
再度取り付けることにした。
3mもある長い桁木を取り外すのは、
想定外の難作業であった。

更に桁木に巻き付けたロープが
窯の熱で融ける恐れもあり、
ケーブルに換える作業も行い、
今度こそ完璧か!と試運転を繰り返す。

7名はナンガ・パルバット峰隊員であった



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