1692ー2019年  師走

枯れすすき原野を枯芒仙人が逍遥する
読書の丘から山荘原野を見下ろす

山荘尾根の翳に沈んだ一面の枯れすすき原野を横切って、残照の温もりに微睡む読書の丘に登る。
寝転んで本を読みたくなる丘。
ここで読みたくなる本は何かな!やっぱりヘルマンヘッセだろうな。

難関の神学校に入学したものの脱走し、悪魔祓いを両親から受けさせられ自殺未遂し、神経科病院に入院させられたり、
その後、入学した学校、見習い店員となった本屋からも脱走したりと追い詰められたヘッセ。
その原体験を記した≪車輪の下≫か、それとも精神の回復を遂げて13年後に書き上げた≪デミアン≫か!


山荘尾根に陽が沈む

広々とした読書の丘

「ぼくは、ひとりでに
自分のなかから出てこようとする
ものだけを生きてみたいと
思ったにすぎない。
それが、どうしてあんなにも
難しかったのだろうか」
 

デミアン冒頭の言葉である。


真正面に雪富士を従えた丘
期待通り難関校に入り
神学校に進むが半年で脱走、
両親から悪魔祓いを受けさせられ、
更に本屋の見習い店員となるも
3日で脱走したヘッセは、
「車輪の下」でその難しさに耐えきれず
車輪に押しつぶされる
自らを描いた。

ゴロゴロごろごろしたい!

刈られる前の読書の丘




扇山に墜ちる太陽

しかし現実にヘッセは「車輪の下」執筆後も、
車輪の下で生き続けねばならず、
13年後にカインの印を額に着けた
デミアンを登場させ、
自らをマックス・デミアンと化すのである

黒色の鏡の上に身をかがめさえすればよいのだ。
なぜなら、ぼく自身の姿がそこに見えるからだ。
それは彼に、つまりぼくの友だちであり、
指導者である彼にそっくり生きうつしの姿なのである。
と≪デミアン≫を締めくくる。

ハンス・ギーベンラートは川に落ちて死んだ。
吐き気も恥らいもなやみも取り払われて、
静かにゆっくりと暗い川の中を谷のほうへ流れた。
美しい顔はまどろみの表情をたたえ、
目の上に白いまぶたがあり、
とじきっていない口はやすらかで、
ほとんどほがらかにさえみえた。

こうしてハンス・ギーベンラートを殺すことによって
ヘッセは、やっと
自分のなかから出てこようとするもの
の中に還ることが出来たのだ。


光を孕む枯芒 


カインとアベル
夜の森テラス

黒色の鏡≫とは闇である。
闇の中を覗きさえすれば、マックス・デミアンとそっくり生き写しの自らに逢えるとエーミール・シンクレールは悟る。
他者思考にどっぷり身を浸し、他者と同じであることに安住を見出し、異端者を押し潰す車輪としての他者。
自分のなかから出てこようとするもの≫は闇の中に潜んでいる。

夜の森テラスは仙人にとって≪漆黒の鏡≫であり、ドアの奥に在る秘密のドアを開きさえすれば、
鏡に映る偽らざる自らとの邂逅を、実現出来るのだ。





枯れたロバート・デニーロ来る
枯れたバイク再生

「うんともすんとも云わなくなって
もう終わりかな!」
と伝えたらデニーロに似たバイク屋が
のっそり現れた。

「3週間前までは使用前日に
50回程キックしておけば
翌日は始動したんだけど、今は
全く反応無し。
25年で10万km以上走ってるから
修理不可かな!」


バイク駐車場造り

奥庭にバイクをひっくり返し
「こりゃ部品もぶっ飛んでいるし
エンジンは掛らんわ!
プラグを替えてみっか!」

で、交換してキックしたら何と
うんともすんとも言わなかったエンジンが
一発で唸り出すでは!
「幾らですか?」と訊いたら千円とか。
街から態々出張してきて、
プラグ交換して部品代合わせて
千円は有り得ない。

「御萩作ったんだけど食べて!」と
6個上げたけど
これじゃ早晩バイク屋は潰れるのでは!
とデニーロを案ずる仙人。

えっ、デニーロはこのバイクが
仙人そのものと知って
利益を無視して治したんだって!
案じられていたのは仙人か!

プラグ替えてみっか!

25年も乗ってボロボロ!

プラグも錆びて発火せず

コンクリート床の駐車場完成

屋根も出来たし未だ未だ走れるぞ!


カインの印
水晶峠からの光

教えておくれ!この画像の何処にカインの印が潜んでいるのか!

カインの印は心の眼でしか観ることは出来ないんだよ。デミアンの言葉を思い出してごらん。
(カインの印)むしろそれは、ほとんど感づかれないほどうす気味のわるいもの、たとえば、視線の中に、
みんなが見慣れている以上の才知と勇気が宿っている、というようなことにきまっているんだ


カインは農作物をアベルは肥えた羊をエホバへ供えたが、エホバは依怙贔屓し、カインの貢ぎ物を顧みず。
神が依怙贔屓していいのかと怒ったカインが、弟アベルを野原に呼び出し殺害すると云う
殺人動機にならぬ設定をし、カインを人類初の殺人者に聖書は仕立て上げる。
その上「アベルは何処に居ますか?」とエホバはカインへ問い掛け、「知りません」との答えを引き出し、
人類初の虚言者とカインを糾弾し、誰もカインを殺せない印をカインに付ける。

まあ、聖書や神話の辻褄を合わせようとすること自体がナンセンスだが、何とも支離滅裂な設定であることは確か。
この聖書のカインの印にデミアンは≪みんなが見慣れている以上の才知と勇気が宿っている≫と
シンクレールに語るのであるから、シンクレールが如何に驚いたか!
カインは神の横暴を許さず、自らの意志で殺人を犯し神に嘘をついたのだ。

そりゃいいけどさ、若しやその才知と勇気が、雲に遮られながらも山稜から昇る曙光に、重なるとでも云うのかい!
つまり雲や山稜、山荘を取り巻く霧に阻まれつつも、昇りつつある光こそカインの印ってわけ!
ふん、ふん、と円卓の白さが、仙人独白を嘲るけるが如く、曙光を照り返しているね。



鶏の散歩と遭遇

卵もってけ!と広瀬氏から云われ





タルタルソースにしたら最高!

貰ってもいいかい!

里には数十匹の野良猫に
餌付けしている2人の
「むらさきのスカートの女」が居る。
猫の餌付けとは関係ないが、
雰囲気がそっくりなので
仙人は勝手にそう呼んでいる。

勿論ネーミングは
今年の第161回芥川賞作品から
なのだが、2人の餌付けは最早
10年以上は続けられている。

山荘にも入れ代わり立ち代わり
次々と野良猫がやって来るが、
いずれも野生本能剥き出し。


眼が合えば暫くはこちらの様子を
伺うが、ついと眼をそらし
逃げ去ってしまう。

そんな環境の中でこの鶏たちは
昼間は放し飼い。
野良猫にとって鶏は大ご馳走。
放し飼い鶏を放って置くはずがない。
しかし鶏が喰われた話は
とんと聞いたこと無し。

不思議に思っていたが、
謎が解けた。
この鶏、滅茶苦茶に強えーのだ。


ざけんな!と攻撃

野良猫も負ける強い鶏


枯芒仙人の逍遥フィナーレ
霧の森に差し込む残照


この刹那、仙人の心象カンバスが如何に打ち震え、激しい衝撃に襲われたか想像できるかい!
闇が呑み込んでいた存在の実像が、光に曝された刹那!
シンクレールがデミアンに触れた刹那を演出したのは誰だ!
ドアの奥に在る秘密のドアを開き、漆黒の鏡に光の矢を放ったのは誰だ!



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