169の1ー2019年 師走
凍てついた血潮の如き仙人テラス 11月30日(土)ー3.4℃ ガラス卓上の紅蝋燭 朝食の席に座し東窓を見やると血の跡が!これだったのかとその瞬間、昨日の謎が解けた。 上条山から下り船宮神社に至る広々した野原を散策し、山荘に戻ると居間の東窓下に鶯色の鸚鵡が蹲っている。 山荘で鸚鵡を観るなんて初めてで暫くは鸚鵡とは思えず、写真を撮りながら珍しさに魅かれ観察。 きっと野生化した鸚鵡が、ノスリか鳶に追われ負傷し山荘の森に迷い込んだのであろう。 問題は負傷した鸚鵡が何故窓の下に居るかである。 |
奥庭に散乱する肉塊 |
それに人間が近づいても首は動かすが、 逃げる素振りは見せない。 十数枚の写真を撮ったが 援けようも無いのでそのままにしておいた。 で、朝になって 窓ガラスの飛び散った血を観て、 鸚鵡が致命的な傷を 負ったのはノスリや鳶の攻撃でなく 窓ガラスへの激突 であったと気づいたのだ。 |
野生動物に喰われた残骸 |
奥庭で血を吐く緑鳩(アオバト) |
やがて息絶えた |
必死で立ち上がろうと踠く |
窓ガラスに激突の血痕が! |
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窓枠に飛び散った肉片 |
凍てついた燭台の紅蝋燭 苦痛や死への認識が無いとしても 今、危機が迫っていることだけは解るのだろう。 必死で立ち上がろうと踠くのは、 仙人の接近に気づき、逃れようとしている証し。 しかし今まで意志のままに動かせた翼も脚もピクリとも動かない。 天空を自由に飛翔した翼は大地を抱き、 やがて瞳は閉じられた。 さようなら命! |
さようなら命! 肉が裂け飛び散ってしまったのに未だ生きている。 苦痛や死への懼れが、 どのように映っているのか緑鳩の瞳を覗き込む。 やや愁いを含んだ弱弱しい黒き瞳は、 激突する前の自由に空を羽ばたいていた時と変わらぬ 表情を湛えており、苦痛の表出は見当たらない。 |
凍てついたガラス卓 |
すっかり冬化粧した富士と紫パンジー 11月30日(土)ー3.4℃ ウッドデッキから |
忙しくて1カ月遅れた柿採り |
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今年は何処も不作 |
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でも1個1個は大きい! |
吊るせるのは400個か! |
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1列22本で1本が5個 |
1列が110個で4列で計440個 |
墜落防止にザイルで確保しつつの柿採り 両腕を使うとバランス取りが難しい! 梯子に乗って両手で高枝切り鋏を操作するとなると、当然両手は梯子から離さねばならない。 高い梯子の細い段に足を乗せ立つだけで危険極まりないのに、 その上、両手を離して高枝切り鋏を操作するなんて、どう考えたって自殺行為。 つい数か月前に懇意にしていた農家の坂本さんが梯子から落ちて亡くなったばかりで、 梯子上での作業が如何に危険であるか重々ご存知の筈。 最初は安全ベルトのハーネスも着けず、ホイホイと梯子上で高枝切り鋏を操作していたがバランスを崩し墜落寸前。 能天気ハチャメチャの仙人も流石に蒼褪め、急ぎザイルなんぞを持ち出し墜落防止処置。 それにしたって仙人とハーネスをザイルで結んだだけなので、落下そのものは防げない。 バランスを崩せば墜ちるのは間違いない。 ≪柿と共に去りぬ!≫なんぞと嘯いているが、≪風と共に去りぬ≫の風が南北戦争で、 去ったのは白人貴族社会であったと仙人は知っていてパクっているのか! 柿とは仙人の農作業そのもので、去るのは当然ながら仙人となるとピッタリ! まあ仙人と白人貴族とはどう考えても結びつかないどころか、対極に在るとしか思えないが、去る者であることは確か。 そうだったのか、仙人は柿と共に去りたかったのか! |
蔕剥き後に縦剥き |
硫黄燻蒸 硫黄燻蒸する為 大きなブルーシートを取り出すと、 越冬準備でシートの間に潜り込んだ てんとう虫や臭いカメムシが 一斉に出てきて、 浸み込んだ雨水と共に衣服に 纏わりつき滅茶苦茶不快。 |
剥かれた柿を5個づつ吊るす |
このまま干柿の覆いにすると 柿に虫が着くし 柿も濡れて黴が生えてしまう。 暫く樹に掛け干して 虫と雨水を取り除き、テラス下の 干柿全体にブルーシートを掛け 硫黄燻蒸を始める。 本当はテラスとシートの間を ガムテープで目止めし密室にして 硫黄の煙が外に漏れない ようにしないと効果が殺がれるのだが、 其処までやるのは 大変なのでチョンボ。 時間のかかる目止めをチョンボしても、 この硫黄燻蒸だけで 1日の大半を費やしてしまう。 これだけ手間暇かけても 黴に襲われ干柿が全滅したら、 きっと仙人は 大粒の涙をぼたぼた零すのだろう。 |
黴防止の硫黄燻蒸して終わり |
急激に気温が下がり 冷たい雨が降り続く。 昨日、干し柿を防雨シートで 囲うかどうか迷っていたが、 やはりやって置くべきであった。 シートでは風に揺れ 柿にペタッと張り着き、 黴発生を促進させてしまうし、 ポリカ波板で囲うには 大工仕事を余儀なくされるし、 なんぞと思い悩んでいるうちに 夜になってしまい 結局、防雨対策は講じず。 今日、雨の中でもポリカ波板を使って 大工工事をすべきなのだが、 何だか意欲が湧いてこず、 無気力に干し柿簾を眺めるのみ。 このままでは鬱に陥りそうなので せめて山トレーニングはせねばと、 小雨の中小倉山へ向かう。 山に登れる日は もう幾日も残されていないと 日々肉体が訴えるのを聴いていると、 こうして動けることの歓びを 60兆個の細胞に 感謝せずにいられない。 |
太陽を浴びて甘くなる |
柿皮で曼陀羅の輪を描く |
40日後に収穫 |
満天星の紅葉と柿色のアンサンブル 燦々と光を浴びての柿剥きは実に贅沢な時間 仙人の頭上の大きな青鬼仮面から、和製ポップスをジャズにアレンジした曲が流れて来る。 仮面の内側にUSB、SD対応プレーヤーが仕込まれ、仮面の上下にスピーカーが設置されていて初冬風物詩を奏でる。 未だUSB、SD対応プレーヤーが無かった頃は、キーボードの裏側のプレーヤーにジャズのCDをかけ、 「うん、うん、柿剥きとジャズはアンサンブルするね。軽快なリズムに魅かれてピーラーが柿を巡り、 剥かれた帯がひらひらと舞って実に愉快だね!」なんて話しかけたり。 これは過去なのだ。 既に仙人の脳細胞は現在の認識が不確かで、従って近未来さえ描くことが出来ず、膨大な記憶のさざ波に揺れるのみ。 小波に洗われた記憶は、憂鬱な存在の重さを綺麗に洗い落とし、美しい音色だけに昇華される。 こうして仙人は豊穣な混沌に還って行くんだね! |