モルジブ・ダイビング

珊瑚海・生命への旅

            珊瑚海・・・・・・・もう1つのヒマラヤ




其の5


Maldives・Malodheep

             撮影日:2006年3〜4月  場所:アリ環礁・アンガガ
                      撮影or編集:坂原忠清

相対評価・・・《5》最高、《4》良い、《3》並、《2》やや悪い、《1》悪い
珊瑚の成育 透明度 魚影 静けさ(ダイバー数) 4 周辺環境(汚染等) 5

総合評価・・・《4+


広大なインド洋に珊瑚礁で描いた花の輪が次々に現れ
群青のカンバスに流れる。
巨大な環礁の中に
無数の環礁が二重の鎖となって連なり
雄蕊のように光の彩を散らす。
紀元前古文書にサンスクリット語で《島々の花輪》Malodheep
として登場したモルディブは
ニ千数百年を経て尚、その美しさをとどめている。
光の彩に水上飛行機が蝶のように
優雅にニ千数百年の時空を超えて舞い降りる。

小さなゴミの破片すら見出せぬ美しい砂浜
熱帯植物で巧みに覆われたコテージ。
海抜2m、一周10分程の小さな珊瑚島アンガガは
確かに2千年の時空を超えてあまりに美しい。
だが、その美は一瞬のソラリゼーションで
漆黒の宇宙に変換する危うさを秘めている。
一瞬、瞳を閉じた瞬間に時空は漆黒に満たされる。
何度かその恐怖に襲われ冷たい汗が全身を覆った。
指を突き立てると群青のカンバスは容易に破れ
多分、私の認識は
破れ目の漆黒の闇に吸い込まれてしまうのだ。


Maldives・Malodheep

大陸から遥か離れた
インド洋の真っ只中に
忽然と現れた島々の花輪。

数十億年の時を経て
小さな小さな
珊瑚虫が造り上げた
ポリプの島。

原始地球は
大量の炭酸ガスに
覆われていた。
生命進化にとって有害な
炭酸ガスを
珊瑚虫は石灰岩に変え
自らの住居にし
生命進化を促し
ついに
島々を造り上げた。
マローディープこそ
生命揺籃の地。
マロドヘープ・水上飛行機からの島々の花輪 朝の逆光を浴びて花輪が霞む。
撮影:村上映子


地図を開く。
3つの大洋の1つインド洋
に瞳を凝らす。
赤道直下やや北寄り
スリランカの西方海上に
幾つかの点々。
あった!
モルディブ共和国。

点々は26の巨大環礁。
その中の1つに
アリ環礁がある。
更にアリ環礁を拡大すると
無数の星々が現れ
長楕円銀河の赤道寄りに
アンガガが輝く。
宇宙船から放たれた
水上飛行機は
スペースポッドとなって
美しく輝く生命の星へ
舞い降りる。
絹の肌触り・微細な白砂が島を精子のように尾を引いて囲む。あまりの砂の優しさに、この星では誰もが素足で歩む。
撮影:坂原忠清
アンガガ島・左は水上コテージ


上の写真《アンガガ島》右端
の精子目指して
スペースポッドは着水。

分かるだろうか?
精子中央の青い瞳。
今、私は
精子のミクロ世界に立ち
精子の青い瞳をバックにして
第三惑星誕生
45億年の旅のリングを
閉じようとしている。

絹の肌触りの美浜を
払暁と共に毎日走った。
精子から生み出された肉体が
精子の上を走る。
そしてその精子は
《2001年宇宙の旅》の
宇宙船ディスカバリー
となり位相空間に
永遠に漂い輪を完結する。
幻影の美浜・シシュフォスの神話 美浜を保つ為、星の奉仕人達は、シシュフォスとなって、珊瑚の小さな欠片をも見逃さず毎朝、浜に穴を掘り埋め続ける。
撮影:村上映子


突然、無数の星が
煌きだした。
しかし中央の空間に
星々の光は無い
時空を自在に歪めてしまう
ブラックホール?

この事象の地平線を
超えてしまうと
光すら捕らえられ
認識そのものが
漆黒の闇に
吸い込まれてしまう。

こうしてシャコ貝は
多くの星々を呑み込み
新たなる宇宙創造
への営みを目論見
スターゲートとなる。
マローディープへの旅も
又、時空への旅。
DVpt: Angaga House Reef
DVdate: 2006/3/27
DVno: 138
事象の地平線・スターゲート


美しく輝く
アンガガの星から
群青の宇宙へ。

宇宙への旅立ちは
いつでも自由である。
基地へ出向いて
リストに出発時間を記入し
生命維持装置を装着し
空気ボンベを背負って
静かなる
テイクオフ!

そしていつも待っている
シャコ貝の
スターゲートを超えると
底知れぬ
無窮の宇宙が広がる。
ガイドは四筋笛鯛。
さあ!
連れてって!
こっちへお出で!・四筋笛鯛 DVpt: Angaga House Reef
DVdate: 2006/4/1
DVno: 148


水深12mを超えると
ガイドが替わった。
インド沖鯵

魚は無数に連なり
銀河となって深みに流れる。
水晶のようにキラキラ光る
透明な海水。
水晶のヴェールを経た
優しい光が銀河に反射し
星となった魚の肉体が
淡い蒼の銀に煌く。

あれ!
背中の空気ボンベに
パイロットが張り付いたぞ!
一体何処へ
行くんだい?
DVpt: Angaga House Reef
DVdate: 2006/3/28
DVno: 139

さあ、もう少し深くね!・インド沖鯵


パプア・ニューギニア以来
すっかり諦めていた
マンタとの突然の遭遇。

カメラのレンズは小物用に
ズームアップしたまま。
巨大過ぎて
ファインダーに入らない。
急いで
広角レンズに切り替えるが
とても間に合わない。
一瞬にして
マンタは去る。
影のみが
ファインダーを翳める。

数十cmもある魚が
無数の点となって散る。
大きな口を開けたまま
悠然と舞うマンタ。
それにしても大きい。
出た!巨大マンタ DVpt: Madivaru Faru
DVdate: 2006/4/1
DVno: 147


マンタや亀の大物と間違えて
小判鮫がやって来た
最初は
一匹だったパイロット。
イルカのように
超音波で交信しているのか
次々と仲間を呼び込む。

空気ボンベに
おずおずと張り付いていた
小判鮫嬢。
居心地が良いのか
お尻、脚、所構わず
身を摺り寄せてくる。
《おい、おい、くすぐったいよ。
皆で取り囲んで
どうするつもりなんだ》
DVpt: Angaga House Reef
DVdate: 2006/4/1
DVno: 148
あれ!おんぶお化け?


乙姫達の
誘いにのって
着いた所は竜宮城。
何てことは在り得ない。
水深26mの海底には
一面に群がる小判鮫。

発射指令を待つ
スペースポッドのように
整然と砂地に並び
機首を上げて
大型侵入者を
じっと見つめる。

何とも可愛い瞳。
さて誰から
話を聞こうか?
コロニーついに発見! DVpt: Angaga House Reef
DVdate: 2006/4/1
DVno: 148


魚類図鑑で調べたら
あなた達の
コロニーに出逢うのは
とても珍しいことだって
書いてあったけど
どうして
連れて来てくれたの?
僕のことマンタと間違えたの?
マンタなら
数百mもの深海まで
連れてってくれるけど
僕に着いたって
餌は取れないよ。
えっ!
何だか仲間のような
気がするって!
嬉しいな。
どうぞ
宜しく!
DVpt: Angaga House Reef
DVdate: 2006/3/30
DVno: 144
やあ、今日は!


その頭の吸盤
背鰭が変形したの?
凄い吸着力で
マンタなんか吸盤の痕が
いつまでも残ってしまうとか。

口がイルカみたいに
突き出しているけど
それで超音波を出して
お話するのかな?

瞳がとっても優しくて
可愛くて
一目惚れしちゃったよ。
148回目のDV
スターメーカーが
きっと
プレゼントしてくれたんだね。
このデート。
私、小判鮫です。宜しく! DVpt: Angaga House Reef
DVdate: 2006/4/1
DVno: 148


指を突き立てると
群青のカンバスは
容易に破れ
多分、私の認識は
破れ目の漆黒の闇に
吸い込まれてしまうのだ。

シャコ貝の肉襞に
漆黒の闇が
僅かに広がる。
ミクロの闇は瞬時にして
広大無辺の時空を形成し
45億年の肉体を呑み込み
生命リングは閉じる。

時空を超えた美を
再現する為に人工的に
創られた星・アンガガ。
星の奉仕人たちは
今日もカンバスの
破れ目に眼を光らせ
シシュフォスのように
砂を掘り続ける。
DVpt: Angaga House Reef
DVdate: 2006/3/29
DVno: 142
事象の地平線・スターゲート



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