2013年4月3日(水)晴 Rota Hole
ずいぶん世界のあちこちで大小の海底洞窟に潜り その神秘的な光に魅了されてきた。 ロタ島の海底洞窟もそれらと同じでちょっと規模が 大きいだけなのかなと思っていたが 予想を遙かに超える光の神秘性との邂逅に唯驚き! ・ 先ず1回目のDVでこの洞窟の構造が 今まで潜った洞窟とかなり異なることに気付いた。 洞窟は陸から離れた海底にあるのではなく 陸の断崖の海面下に穿たれている。 洞窟は内陸に向かって大きく口を開きダイバーは 海から陸内部に侵入するような潜行となる。 ・ 断崖の上は谷になっているので光は 海面に届く前にこの谷によって 収斂され更に大地の裂け目によってピンホール効果を受け より鮮明に射し込むだろうと直感した。 となるとロタホールは今までの海底洞窟とは 全く異なる光のパンテオンを演出し 天空の神々の回廊となり 心象風景を鮮烈に支配し 私を打ちのめすのではないかと期待は膨らんだ。 ・ しかし谷と裂け目のピンホールに光がやって来る時間は 最も太陽高度が高くなる 正午を挟んだ時間帯だが現在では4時間程しかない。 つまり午前DVなら2本目、午後なら1本目が その時間帯になるので これに合わせて船を出さねばならない。 ・ 1日目の午後1本目は曇天で光が射し込まず 2日目の2本目はスコールに遭い いよいよ追い詰められ最終DV、3日目の午前2本目に 最後の期待を賭けて東港から船を出す。 夜明けから雲1つ無く絶好のロタホール日和だったが 午前中1本目DVを終える頃には 東の空に黒雲が湧きだし早くもスコールの気配。 |
大地の裂け目から海底洞窟に降る光 ロタホール 2013年4月4日(木)晴 |
思わず祈りたくなる光 ロタホール 2013年4月4日(木)晴 20m程穴の奥に進むと穴の一番先に 幾筋もの光の縞を描いて 光のパンテオンが 漆黒の闇を切り裂いて耀いているでは! コンバージョンレンズ(広角)をセットし 思いきりパンテオンに接近し鮮明度の高い画像を狙い シャッターを切ろうとしたが デジタルカメラは赤い警告マークを発したまま作動せず。 ・ 焦る! この瞬間の為に電池交換し交換レンズを用意し 万全の態勢で臨んでいるのだ。 よりによって何故この瞬間にカメラが作動しないのだ。 3台も同じカメラを購入し10年間も愛用し 知り尽くした海中専用カメラ。 それが何故この瞬間に裏切るのだ! ・ あれやこれやとハウジングのボタンを押しまくるが レンズは出るものの出た後で 赤い警告マークが点灯しレンズは引っ込み スイッチが切れてしまう。 うーんこのシャッターチャンスを逃す訳にはいかない。 よし、村上のカメラを借りて交互に モデルを務め撮り合うことにしよう。 ・ 誰も居ない光のパンテオンに飛び込み10分、20分と ただ舞い続け、撮り続ける。 |
前回出港した西港は波静かなフィリピン海に面しているが 太平洋に面する東港は波高く船は 波頭に乗りあげスコールの来る前にと心は焦るが 遅々として進まず。 ソサンハニヤ湾を出ると外洋の荒波に揉まれ 其の都度、舳先を荒波に向けるが 船はロッキング、ローリングを繰り返しつつ どうにかハルノン岬を回りロタホールの入り口に到着。 ・ 時々雲間に隠れるものの光はロタホールの真上から 透き通った蒼い宝石を刺し貫いている。 宝石の底で光が鱗のような紋様を描き手招きする。 急いで空気タンクを背負いカメラ、マスクをセットし レギュレーターを銜え バックロールで3人一緒に飛びこむ。 ・ 海面近くは流れがあるので流される前に 一気に15mまで潜行し 目の前に大きく口を開けた暗く巨大な穴に 静かに近づく。 穴は長いのでこの位置からはロタホールに光が 射し込んでいるかどうか未だ解らない。 |
遙かなり飛翔 ロタホール 2013年4月4日(木)晴 |
ロタホール入り口 |
洞窟内部 |
洞窟奥天井の2つの穴 |
海底に射し込む光 |
この小さな洞窟に凝縮された闇が 開闢直前の 一点に収斂された宇宙であると 遥か以前に知っていたのだ。 この光に逢うまでは 知っていたことを忘れていたのに どうして思い出したのだろう。 ・ あーその認識は言語を通して 聴いたり書物から 得られた認識とは全く異なっている。 60兆個の細胞の1つ1つが 一瞬鋭敏なセンサーになって 瞬時に知覚してしまう認識なのだ。 ・ 137億年の存在の記憶を 瞬時にして遡り 時間と空間が1点に収斂された あの懐かしくも狂おしい 高温高密度のカオスが デジャビュとなって 今、心象風景に投影されたのだ。 ・ ・ やっとたどり着いたね。 ここが総ての始まりと終わり。 |
光に向かって浮上 |
降り注ぐ光 |
天空のホワイトホール |