海亀の島へ



まだかなー?
一足お先に来たものの

島への上陸に際し
外来者の靴の消毒まで
して動物保護に努めている
ガラパゴスに
漁師が居るなんて・・・。

つまりその僅かな漁師には
ガラパゴスでの漁が
許されているのだ。
貴重な島の魚が
食べられるというのだ。

なによりもそれを良く
知っているのは
アシカ君を始めとして
大食いのペリカン達。

漁を終えて市場が
開かれる夕刻になると
彼等のご出勤。
既に待ちくたびれ昼寝する
アシカ君。

夕刻の出勤?(サンタクルス島)



やあ!暫くだね

2ヶ月前にメキシコの
ラパスで毎日一緒に泳いだ
アシカとの久々の出逢い。

6月に生まれて
未だ幼さの残るラパスの
アシカに較べると
随分大きくなってるね。

まさか海の中ではなくて
陸でそれも市場で
再会出来るなんて!
嬉しい驚きだな。

ここのアシカは元々
人間と仲良しで
人を恐れないと聴いたけど
市場にまで
出て来るなんてね。
どうぞ宜しく!
小さな波止場(アカデミー湾)


ようこそ島へ!

さっきこの島に
着いたばかりなんだ。
ホテルから歩いて
ダーウィン研究所まで行って
真っ先にこの
市場に来たんだよ。

そう、ようこそ!
このアヨラ港の街は
ガラパゴスで一番大きくて
1万2千人も
住んでいてね、この市場は
街の中心なんだ。

小さなスーパーマーケットが
1つあるけど
魚はここでしか手に
入らないんだよ。

だから夕方になると
僕達やペリカンや人間が
集まってくるんだ。

小さな小さな市場




アカデミー湾(サンタクルス島)
ほら鮪だぞ!

あっ!ボートが
魚を積んで帰ってきたぞ。
大きな黄肌鮪を
運び上げているね。

このブルーのボートが
ガラパゴスで漁を
許可された漁師の船か。
他の漁船の入域は
禁止されてるから魚は
沢山居て幾らでも
獲れるんだろうね。

アカデミー湾から
チャールスダーウィン通りに
面したこの市場に
荷揚げされた魚は
どうなるの?

そうそうそれが重要。
僕らが毎日夕方出勤する
理由がそこにあるんだ。



さあ!オープンだ

ぴんぴんして未だ
生きている大きな海老。
頭をちょん切られた
黄肌鮪と計量秤。
これで準備完了。

お客さんより先に
来ている褐色ペリカン達が
よたよたと
身体を左右に振りながら
集まって来る。

そうか、ここに来た
客の注文に応じて捌かれる
魚の臓物や頭を
いただこうとアシカや
ペリカンが集まるのか?

そうなんだ。
何しろ売り切れたら市場は
閉店しちゃうので
早く来ないとおこぼれに
与れないんだよ。

小さな市場にお店1つ



お行儀良く
待ってます!


漁師が板前に変身し
魚を捌き始めると
ペリカン達は一列に並んで
じーっと熱い視線を
板前に投げかけます。

あれっ!いつの間に
ちゃっかし
アシカも並んでいます。

ペリカン下嘴の大きな袋が
待ちきれないように
ぴくぴくと揺れてます。
アシカは唯ひたすら
板前の手元の魚を追います。

うーん未だかな?
もうお腹がぺこぺこだよ。
ペリカンと一緒に



ちょっとだけ
近づいていい?


ついに待ちきれず
板前の隣まで
のこのこ歩いて行き
並んで甘い声で催促します。
「ウオッ!ウオッ!」

珍しそうに観光客が
カメラを構え
アシカ君の愛らしいポーズを
狙います。
惜しい!残念ながら
眼を瞑ってしまいました。

後ろではペリカン達が
未だお行儀よく
並んで待っています。
何とも好い匂い!




3枚におろす漁師
でもさ
待ちきれないな


実はペリカン達も
もう我慢の限界だったらしく
ついに台座の俎板に
乗ってどんどん接近します。

もう一羽なんぞ台座で
「あー食べたいな
食べたいな」とせわしく
羽ばたきながら
板前の漁師に訴えます。

両腕をきちんと下げていた
アシカ君もやおら
両腕を台座に乗せて
身を乗り出してきました。

でも漁師は素知らぬ顔して
魚を捌き続けます。
漁師は彼等の動きを
知っているんです。



奪取だ!

さあ!次の瞬間
アシカの電光石火の
早業が
漁師の危険な
包丁を掻い潜って
3枚に下ろした魚の切り身に
襲いかかりました。

大きな鮪の半身を
銜えたアシカの動きの
早いこと早いこと。

後ろの海へ下る
石段まで走り
階段を一気に滑り降り
海へどぶん。

箒を振り上げ追いかける
漁師達も余りの
早業に唖然!
老練な漁師もしてやられたと
言うような顔をして苦笑い。
アシカ君の勝ち!

電光石火の早業




大きな伊勢海老
今夜のメニュー

思わず喝采を叫びました。
6月に生まれた
赤ちゃんアシカも半年で
こんなに賢く
素早しこくなって逞しく
生きているんですね。

さて、このアシカ君の快挙を
黙って見ているだけでは
もの足りない。
鮪と伊勢海老の刺身で
乾杯をしなくちゃ。

「鮪下さい」
幸い隣に英語の喋れる
現地の若い主婦らしき人が
通訳してくれ
鮪と海老を分けてもらう。

「鮪は最低2kg単位で
1kg1ドル、海老は
大きなのが1匹20ドル」
「えっ!刺身が1kg
90円なの?」

食べても食べても
食べきれず刺身だけでなく
海老の塩焼きにしたり
鮪の照り焼きにしたり
そりゃ豪勢な晩餐でした。



駄目なセビッチェ

キトに帰ってから
エクアドル自慢のセビッチェ
を食べにメルキュールの
レストランに行きました。

セビッチェとは
生の魚介類をレモン汁と
香辛料で漬け込んだ
冷料理でセルベッサ(ビア)
欠かせないお摘み。

だが何とこの有名店の
セビッチェが海老も
白身の魚も生を使って
いないのだ。
この上もなく不味い。

あのガラパゴスの海老と
マグロを入れたなら
最高のセビッチェに
なったのに残念と悔やんだが
ガラパゴスまで戻る訳には
いかないし・・・。

メルキュール(キト)





《D》 ガラパゴスの鳥達へ 




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