豪華キャビン


DV船Fiesta号

プラスチックの玩具の
ようなフィエスタ号(Fiesta)
に乗ったのは夜中の
12時近かったろうか?

南北に細長い
カリフォルニア半島の
南端にある
サンホセデルカボに
夕刻着いた。

サボテンの点在する
闇の半砂漠大地を
ラパスへと車を飛ばす。
途中街のコンビニで
各自船で呑む
アルコールを買う。


考えてみると
変な話である。
クルージングでの
酒類販売は船にとって
大きな収益元になる。
それを敢えて棄て
各自持参とは?

そこでこの船の
サービス実態について
気がつくべきであった。
小さい船に
目一杯の客を乗せるので
使用飲料水が増え
余分な液体を
乗せられないのだ。

つまり水が少ないため
シャワーも極端に
制限され
洗濯や食器洗いなど
著しい制約を
受けるのだろう。


げっ!物置だ!
それとも押入れ

いえいえ
これ立派なキャビン。

定員10人程の
小さい船に2倍近くの
客を乗せるので
キャビンは極端に狭く
2段ベッドに小さな
手洗いがあるのみ。

一人入るともう
身動きできない。
荷物は通路に出すか
下の食堂に
放置するしかない。

勿論部屋には窓無く
真っ暗でクーラーなんぞ
騒音だけで
さっぱり効かない。
クルー曰く
「クーラーが効かない
時はドアを開けて
寝てください」


サンデッキへ逃避
常に満員御礼!


そこでダイバーは
食堂に居続けるか
サンデッキに逃避する。

世界のあちこちで
DVクルージングしたが
他船に比べると
高額料金でその上
これ程酷く狭い船は
初めてで面食らう。

船の使用説明が始る。
「当船には
5千リットルしか
水を積んでいません。

シャワーですが
1日3〜4本のDVを
予定してるので
最後のDV後に
シャワーを浴びて
節水に努めてください」
つまり1日中塩漬けになってろとの事。
世界恐慌に陥っている昨今の株じゃあるまいし塩漬けとは。
更に追い討ちをかけるように

「プラカップはマジックで各自名前を書いて洗わず
何度も使ってください」


自分達の小さなクルーザーでの低料金冒険船旅なら
当然そうすべきで
それが堪らなく面白いのだがね・・・


海馬の島
ロス・イスロテス東
Los Islotes


キャビンは狭くても
クーラーは効かなくて
煩いだけでも
眠れれば
贅沢は言わない。

ところがベッドの幅が
極端に狭くて
寝返りがうてないのだ。
仕方なくキャビンの無い
船員の真似をして
サンデッキで寝た。

銀河の中央に
羽ばたく白鳥座やベガ
鷲座のアルタイルを
仰ぎ見ながら
やっと熟睡できた。

だが海の景観は
船の居住性の悪さを
吹き飛ばすほどの
素晴らしさ。


夜明けの船窓に
浮くロス・イスロテスは
ベースキャンプの
テントから垣間見る
ヒマラヤの峰々を
連想させる。

屹立する岩峰を
白く覆う海鳥の糞が
雪や氷のように輝き。
正にもう1つの
ヒマラヤなのである。

ロス・イスロテス島は
東西に並んだ2つの
島から成る。
小さい方の西島には
針のような岩峰があり
鋭く天を突く。


Slaty-backed Gull
大背黒鴎
オオセグロカモメ

しかし今は
産卵期ではないので
島を埋め尽くす
鳥達は影を見せない。

ここラパスより南西
3500kmに位置する
ココ島では岩山総てが
鰹鳥の雛に覆われる程で
圧倒されたのだが・・

現在ラパスで見られる
海鳥は背黒鴎と
褐色ペリカンくらいで
時々鯵刺が
魚群を狙ってやってくる。

嘴の下の赤斑で
容易に判別出来る背黒鴎は
実は潜水できない。
そこで腐肉や他の鳥の
雛を襲ったりする
海のハイエナである。


褐色ペリカン
Brown Pelican

何だか彫像のようで
生きてると思えないが
これでも一応魚群を
狙ってじっと
チャンスを窺っているのだ。

ペリカンは海馬とは
相性が悪いのか
ロス・イスロテスでは
見られず
ラパス湾に棲息している。



白糞塗れの島
ロス・イスロテス西
Los Islotes

寝惚け眼で
デッキから海を見て
吃驚仰天!
なんじゃこりゃ!

ロス・イスロテスとの
初邂逅の
驚きの瞬間である。

余りにも見慣れた
氷を纏った
ヒマラヤの岩壁が
目の前に直立している。

本能的に登攀可能な
ルートを目で追う。

中央ハングの左
ジェードル状のルンゼを
直上し左のコルへ
抜ければ頂稜に
出られそうである。


さあ!DV開始

食堂でのブリーフィング後
船尾のDVデッキに
出て器材をチェックし
ウエットスーツを着る。

海馬の咆え声が
海風に流れる。
さてもう1つのヒマラヤ
底に躍動する生命が
どんな顔して
迎えてくれるのか!


《C》 コルテス種多し 




Indexへ