仙人日記
   その97の52013年師走
12月5週・・・夜空にるマッチ売りの少女の灯
聖夜の贈り物

凍て付いた夜空にるマッチ売りの少女の灯
最後の1本の小さな炎が映し出した幻影

行間に潜む渺茫たる宇宙を手にして、
あなたは独りほくそ笑み,カーマインの炎に総てを映しだしていたんですね。
ひどく寒い日でした。雪も降っており、すっかり暗くなり、もう夜 ―― 今年さいごの夜でした。


車も上がれぬ
雪道を
って来た若者

小さなクリスマスカードを
入れた
《カシミヤ混ワッフルニット》
の箱をもって、
夜の雪道を登って来る若者。


森は真っ暗で早々と
シャッターを下ろした山荘は
僅かな明かりも漏らさず
闇に沈んでいます。


せめて山荘の位置だけでも
解かる様にと
前庭のライトを点けてあげました。

「すみません、
雪道で車が上がれず
下から歩いてもって来ました」

そう云って雪の闇から
姿を現した宅配便の若者は、
恭しく白い箱を差し出しました。


箱の中の小さなカードは
沢山の妖精たちについて
触れているでは。
未だあなたは妖精の魔力を
秘めているんですね。
 
 
かーまいんをおけしましょう
少女から届いたカシミヤ混ワッフルニット

カーマインが
マッチ売りの少女の灯した
マッチの灯で
あることは間違いありません。

どうしてそう確信したかを
お話するには
先ずカーマインの本性を
語らねばなりません。

カーマインは人類が
コンピューターを使って創りだした
認識可能な
256=1677万7216の
無限とも思える色の
1つなのです。

あーどうして
256が出て
くるかって?
そうあなたが現代絵師ならこの
256と云う数字が
認識可能な明るさの総て
つまり宇宙の可視光で
あると知っている筈です。

赤の宇宙に256の明度があり
緑、青にも256の
明るさがあるので宇宙に
存在する色彩は
256通り存在するのです。

赤と緑がイエローを生み
緑と青がシアンとなり
青と赤がマゼンタの光となり
1677万7216色が
宇宙に遍満するのです。

カーマインは
赤の明るさが256を最大にした時の
190番目、緑が0で
青が57番目のマゼンタに属する
光なのです。。


夕映えの山稜から冷庫も飛んできたらしいぜ!
これで唐黍も干柿も1年中食べられるんだね

赤(R)は燃え盛る太陽が生み出す色、緑(G)は生命を象徴する森が放つ彩であり
青(B)は海や空、宇宙そのものを表わす光。
つまり色彩とは太陽と生命、宇宙が作りだしたスペクトルなのだ。
そのスペクトルの内、生命の緑を除いた明度190番目の太陽(R190)と57番目の宇宙(B57)の光を交合させたカーマインを
少女は何故選んだのか?

最も激しい炎を望むなら人間が染色し得る最大の赤であるR227、G0,B13の
猩々緋(しょうじょうひ)と呼ばれる色を選んだ筈である。
若しくは赤と名ずけられたR220,G0,B50か、R190、G0,B63の紅色をマッチの炎にしたであろう。
でもマッチ売りの少女は敢えてR190,G0,B57のカーマインを選んだ。
何故か是が非でもマッチ売りの少女に問わねばならぬが、そうだったマッチ売りの少女にはもう逢えないんだ。

R190,G0,B57 Carmine

けれど、あの街角には、夜明けの冷え込むころ、かわいそうな少女が座っていました。
薔薇のように頬を赤くし、口もとには微笑みを浮かべ、
壁にもたれて――古い一年の最後の夜に凍え死んでいたのです。



おいらだっててみたいぜ!

どれどれが命なのさ!
そんなことをつらつら想いつつ
カーマインの
ワッフルニットを着て
一年お世話になった居間の床に
ワックスを掛ける。

窓から射し込む太陽の光が
イタリアで染められた
R190のワッフルニットに
一目御目文字しようと
床から忍び込む。

ふふん、その位置じゃ
ワッフルニットは観えないな。
もうちょっと、上まで昇らなくちゃ。

そいじゃ早速こいつを着て大除じゃ
さて光が上に昇るには?
そうそう、
太陽がもっと沈んで下に下がれば
光は反対に上昇するんだ。

一度目の床ワックスを塗り終え
二度目に差し掛かると
どうでしょう
夕映えの山稜からやって来た光は
ちゃっかし、ワッフルニットに
凭れかかり
何やら愉しそうに語らって
いるではありませんか!
きっと少女が何故
カーマインを選んだか答えを
見つけたんでしょうね。

うーんやはりカーマインはいいね

テラスにもう1つ屋が出来たぞ



かーまいんはからやって来たのです

あれ!衛星イオの地平線から昇ってくる木星・ゼウスに覆い
被さっているのはカーマインのワッフルニットではありませんか?

さてはカーマインめ、生まれ故郷の海底とイオが余りにも似ているので
間違えたな!

そんでもって地平線から昇ってきた巨大なゼウスを
団扇サボテンと信じ込んで叫んだんだな。

「あたし前世はカーマインを造る臙脂(えんじ)虫、えっ!知らないって!
コチニール貝殻虫と云えば解かってもらえるかしら?
あたしはあなたと交わらなければ生きていけないのよ。

ウェブ アニメータ

壁画のゼウスとわるかーまいん 二階イオの壁画
ウェブ アニメータ 

みんなはあたしのこと団扇サボテンの寄生虫だなんて呼んでいるけど
本当はあたしはあなたの連れ合いであなたと交わって、
あの美しいカーマインを産み出すんです。

あなたが海の彼方から昇って来るのを恋焦がれて
待っていたんです」

どうですか、そう叫んだかと思うとご覧の通りです。
あーでも500年以上も前のインカ帝国で、既に臙脂虫が養殖され
カーマインが造られていたなんてちっとも
知りませんでしたよ。

カーマインはゼウスと臙脂虫の情交によって500年も前から
産み出されていたんですね。



未踏の山
曲岳から鬼頬山、太刀岡山へ


《A》  3つ目のからのクリスマスプレゼント

ホワイトクリスマスのプレゼントワインで乾杯も済み、クリスマスイブの夜が更けようとしている。
テレビを付けたら明日の天気が快晴だと告げる。しかも明日のみ、これはもう山に行くしかないぞ。
まさに3つ目の天からのクリスマスプレゼントだ。

隊長にとってのクリスマスプレゼントが既に届いてるらしい。一つ目は華やかなお洒落セーター、二つ目は干柿ストックの為の冷凍庫。
そして極め付けが明日の晴天。
それからどの山に行こうか検討、山荘百名山のまだ登ってない山を探し、太刀岡山を選ぶ。
アイゼンの調節をしたり、カーナビのセットをしたりと明日の用意をして早々に眠りに着く。



曲岳尾根へのり付き
 
観音の看板マップ
 
ラッセルがあるでは!
 
めまい下トラバース
山荘百名山巡り 

山荘を取り囲む山々に
番号を付けてみた。
1番目は当然扇山、次いで小倉山、
[3]上条山、[4]滑沢山、[5]高芝山
・・・・・
[98]天子ケ岳、[99]毛無山、[100]富士山

未だ登ってない山は赤字で表わし
残りは僅か4つの山。
今回目指した太刀岡山は[31]番目で
これを登ると
山荘百名山踏破まであと4座となる。
 
岩のナイフエッジ



《B》
  先へ進むのは

夜明けの天空はまだ星の煌めきに占められている。
いつものとおり、具だくさんのカレーうどんの朝食を摂り、簡単な行動食を持って出発。山荘発6時45分。
塩山市内を走りぬけるとき、道の正面に朝日を浴びた雪の赤石岳の秀麗な姿が、まるで切り取ったように置かれている。
こんな出逢いもあるのかと一瞬の光景が心に焼きつく。これもプレゼントの特別編かな。

目的地近くまで路線バスが運行している筈なので、道路が除雪されているだろうという予想が当たり、
太刀岡山入口を確認、更にその先まで入ることが出来た。
林道をもうしばらくは入れると予測していたのに、<工事中迂回>の看板が登場、迂回路は除雪どころか、カリカリに凍っている様子。
しかもアップダウンがあり、先へ進むのは断念。

駐車場所を躊躇っていると、工事関係らしい車両が来た。降り立った人達に訊いてみると、観音峠までは3キロとも、5キロとも・・。
しかし駐車は可とのことなので、此処から歩くことにする。
林道入り口までくると、どちらにせよ此処からは冬期通行止めでゲートが閉じられている。




 
コースタイム
12月25日(水)晴
曲岳(1642m)、鬼頬(おにがわ)(1516m)、太刀岡山(1516m)
1925813km480m 615kcal

山荘発6:45→ノーアスランド分岐着8:20、発8:30→観音峠着9:20、
発9;30→曲岳着10:20、発10:40→八丁峠11:20→鬼頬山12:20着
発12:30→太刀岡山13:30→下芦沢14:20着、発14:35→山荘着15:40

分岐点の迂回路が路面凍結で分岐に戻る。
分岐から観音峠まで林道を歩く。曲岳の登り2箇所の岩場が凍結し思わぬ難所となっている。
八丁峠辺りはルートが複雑でラッセルが無ければ迷う。富士宮からの単独者に逢ったのみで静寂の山。
アイゼンを忘れ大失敗。まーどうにかクリアしたが急斜面多くアイゼンは必需装備。 

 山荘
ノースランド分岐42km、往復84km(往:1時間35分、復:1時間5分)



林道から岳へのルート

曲岳から頬山を経て太刀岡山へ


《C》
  岩場には何本ものロープが設置

歩きはじめるが、かなりの積雪があり、林道といえども雪を踏みしめ歩くのはむしろ楽しい。
工事車両なのか轍が深く刻まれているのでそこを歩くが、幅が狭いので意外に歩き難い。
日蔭は未だ震えるほど冷え込んでいる。日向に出ると全身を太陽に包まれ、なんて暖かいんだろうとほっとする。
北風と太陽の童話を思い出しながら、ふかふかした気持ちで歩く。

1時間足らずで観音峠へ到着。左手の緩やかに見える尾根は茅ヶ岳へと通じる登山道だが、初心者には厳しいコースだとのこと。
更に林道を進むと、反対側の傾斜のある尾根が曲岳への登山道入り口。
連休中に入った登山者があるようでしっかりと踏み跡がある。
ラッセルのお蔭で迷う心配はなさそうだが、落葉樹の裸木の間を抜けぐんぐん登っていくと、結構な斜度はあり、登りにくい岩場もあり、
思っていた以上に手強い登りとなる。
岩場には何本ものロープが設置されていて、普段なら使わなくても済むだろうが、雪壁となっている今は大いなる助けとなった。
更には狭い崖のトラバース道、滑らないよう慎重に歩く。



自分撮り

曲岳山頂で単独者と
 
遅れてやって来た村上と



《D》
  目のには雪の八ヶ岳

次々に障害物競争のようで下山が心配になってくるほど。
最難関は大きな一枚岩の乗越しで、これはロープがあっても緊張を強いられた。
やっと核心部は過ぎたようで、急な登りが続くが、ラッセルを辿れば不安なく登れる。前方に人影、隊長かと思うがそれにしては遅い。
他にも登山者が居たのだと意外な想いで登る。

間もなく曲岳山頂に到着。ちょうど居合わせた先ほどの登山者に写真を撮ってもらう。
隊長は此処から更に鬼頬山を経て太刀岡山へと縦走予定。
私はピストン下山して、太刀岡山入口へと車を移動することに。
熊笛を忘れた隊長に笛を渡し、山頂でトランシーバーの具合を確認の上、別れる。雪に足が慣れたせいもあり、下山は楽しい。
<見晴らしブリッジ>では岩の先端までいってみる。
遮るものなく広がる風景はいい。目の前には雪の八ヶ岳が、清々しい蒼空を背景にして大きく美しく迫る。




曲岳稜線からの北アルプス高連峰



《E》
  ひらひらと色の記憶が揺れ騒ぎ

しばし見とれる。誰もいない山の中で、豊かな時が流れる。
今年登った幾つかの山の記憶が鮮やかに立ち上がる。その向こうに遠いヒマラヤの記憶がさらさらと連なっている。
重い荷を背負って冬合宿を行った八ヶ岳の遠い記憶、
その彼方に覗く北アルプスの峰々にも小さな足跡の記憶が・・。

現在(いま)は一つの頂から眺めると、あちらにもこちらにもたくさんの想い出を刻んだ頂が呼びかけて来てくれる。
ずいぶん長い時間をかけて、
たくさんの山々に出逢えたんだなと、歩いてきた時の彼方を振り返ってみる。
解かれたリボンのようにひらひらと虹色の記憶が揺れ騒ぎ、やがて又折りたたまれる。
今年最後の山も、思いがけない雪と岩の体験をさせてくれた。




岳から焼岳への稜線 (曲岳稜線から)



《F》
  あと何回山に行かれるのか

これもまた、虹色の記憶の小箱に詰め込んで、さあ、出発しよう。
途中でザックの中のアイゼンを、せっかくだから試してみようと思ったのだが、調節がきつ過ぎたようで上手く靴と合わない。
幸い凍りついた個所がなかったので、アイゼン無しでもなんとかなった。
ワンタッチアイゼンが装着できる冬山用登山靴を新調しようかどうか迷っている。

あと何回雪山に行かれるのか、だけど、たった一回であったとしても、きちんとした装備がなければ危険であることに変わりない。
さてどうするか・・・今春の西穂登山で長年愛用してきたプラブーツが崩壊したので、
次なる靴をどうするかが悩みの種なのだ。
初期の頃やっていたように革靴に紐アイゼンを復活してみるのも方法だが、
おそらく革靴の重さに耐えるのは、もう難しいのでないかと感じている。




南アルプス・石岳から荒川三山 (曲岳稜線から)



《G》
  誰にも出うことは無かった

人は一度楽をしてしまうと、
きっと元には戻れないのだろうなと思いつつ、ちょっとチャレンジしてみようかなという気持ちも何処かにある。
来年は古い革登山靴を復活させてみようかな。
いずれにしても、隊長のペースに合わせることはできないのだから、マイペース登山で自分のスタイルをもう一度考えてみよう。
そんなことを考えていると、ちょっとワクワクするから不思議だ。

途中の<めまい岩>でも寄り道して先端まで行ってみたが、Uターンするのも怖いぐらいであった。
確かに覗きこんだらめまいがしそうだ。雪の森を楽しみながら、下山してきたが、誰にも出会うことは無かった。
林道からの交信は上手く入らないが、かろうじて、隊長が予定通り進むらしいことが分かった。
朝には無かった下山する足跡が2人分ほどあったが、きっと茅ヶ岳からの下山者ではないかと想像する。




八ヶ岳連峰・阿弥岳(左)、赤岳(右) (曲岳稜線から)

 
甲斐駒ケ岳と利支天(左) (曲岳稜線から)



《F》
  出没注意の大きな看板

駐車場所に到着。そのまま、太刀岡山入口の駐車場へと向かう。
車を止めて、集落の途中にある登山道入り口へと向かう。幾つもの道標が立てられているので間違いようがないが、
そうでなければ分かりにくい民家の裏から登り口がある。
この村でも、獣の被害を防ぐための防御網が巡らされて、山荘の裏山と同じように頑丈な扉が設けられている。

扉を開けて登山道に入ると、熊出没注意の大きな看板。如何にも何か出そうな檜の森、笛が無いので、大きな声で歌いながら歩く。
此処にはさすがに雪は全く見当たらない。勾配のきつい登りが延々と続く。
しかも、植林帯の中なので眺望は全くないし、面白くも無い。
隊長からは太刀岡山山頂から見ると、曲岳の由来が良く分かる、山の形が確かに曲がってるのが見て取れるとのこと。
30分上がっても変化がなければ、下山しようかななどと考えていたが、
やがて植林帯から雑木林へと周りが変化してきて、大きな岩がむき出しになっている。




えっ!じゃないの?
曲岳から1630m峰への稜線で
右の平見城へ下る分岐を確認。
そのまま突き進み
1630m峰へ出てから標識を観て驚いた。
動いた感覚とは逆の標識。

こうして自分で地図を作ってみると
解り易く問題は無いのだが
実際は4つの尾根が絡み合って登山道は
曲がりくねり複雑怪奇。
ラッセルトレイルに導かれなかったら
完全にリングワンデルング。

どうなってんの、ったぜ!



おにがわとはめないぞ!

雪に覆われた道峠

岡山のてっぺん

ちた太刀岡山頂標識 (背景は茅ケ岳
曲岳を越えてから
どの頂にも人影が無いので
嬉しくて
どうも自然に笑いがこみ上げて。

ほら独り撮り写真も
何となく笑っているように
観えないかい?

山頂からの富士の




《G》  今年一ありがとう

更に登ると巨大な岩場が出現。
オーバーハングした岩肌にボルトが打ち込まれてる。ここはきっと知る人ぞ知るクライミングルートに違いない。
大岩の下には小さな社まで在る。暫く、この巨岩を見上げてからトランシーバーに向かって、現在地を確認。
そろそろ出会ってもいいころではと思ったが、まだ岩は見えないとのこと。
少し進んだあたりで、隊長がハサミ岩に到着したとの連絡。

さっきの巨岩がハサミ岩かと思ったが、まだ先だったようだ。コールすると暫くして笛の音が聴こえ、やがて隊長の姿が現れた。
クライミング岩まで戻って、隊長もその岩場には驚いて、しばし写真を撮ったり岩肌に取りつて見たり。
後は一気に下山。駐車場へ戻る途中の道から、曲岳の一寸曲がった形が良く眺められた。
ハサミ岩もその先端がなるほど鋏の様だと、下から眺めるとその大きさが良く分かる。
今日の山は、天からのホワイトクリマスプレゼント。青い宙の彼方に向かって、そっと、今年一年ありがとうと伝えよう。




おーいハング!
移動性高気圧に覆われ
風も無い
素晴らしい登山日和となった。
明日からは全国的に雨や
雪との予報で
今年最後の好天であった。

思い切って狙っていた
北アルプスの不帰岳の撮影へと
心は騒いだが
なんせ1日だけの好天では
どうにも動きが取れず断念。

しかしこうして新雪の林道を逍遥し
雪の稜線を駆け抜け
岩壁に触れて太陽に包まれると
もうこんな低山登山が
御似合いだなとしみじみ思う。

低山と云えどこうして登れる幸せを
誰に感謝しよう。

ザイルでの確が無いと

へばりいてみたが!

岩のゲレンデ

さらば曲よ!



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