仙人日記
   その92の32013年文月


7月3週・・・湧水から山荘への長いパイプライン埋設工事開始
 

山百合に出現した大介&広介


めて咲いた山百合 奥庭

背後から日を浴びる山百合 奥庭
 7月18日(木)晴 奥庭

欲しくて彼方此方探して昨秋遂に手に入れた3つの山百合球根。
1つはホームセンターであとの2つは村上が貰ってきた。

山荘を開いて19年目にしてやっと咲いた花。
濃密で妖艶な香りに眩惑される。



黄星髪切 奥庭
ほんの僅かな夜明けの光を捉えて、
(ひぐらし)
が真っ先に啼き始める。
眠っていた森の虫達に活動を促すだけでなく
透明な哀しみを湛えた音色は
眠りから覚めつつある
大介と広介の息吹を運んで来た。
そうだ、いつも彼等が現われるのは
蜩の啼き始める今頃だったな。
今年は来ないのかな?
どれどれ、それじゃシリコンバレーからの
メールを開いてみようか!

にいにい蝉 奥庭



夕陽に燦然と謳う 奥庭
しりこんばれーからのの便り

広介は6月でミドル・スクールを卒業しました。 
9月からハイスクールです。
学校では最後の最後まで、
校長先生にお呼ばれしたり、
次から次へとゴタゴタいろいろありました。

なんとか卒業旅行には行かせてもらえたようですが
(大介の時はトホホなことに行けなかったのですよ…
成績が悪くて。 
何をやってたんでしょうかね。 思い出しただけで
こっちの胸が痛くなります)


この調子じゃ、ハイスクールに行っても
変わりそうにないし、まだまだ下らないことを
色々やらかしてくれそうです。 
 大介も特に変わりなく、毎日を過ごしております。
 そろそろ大学のこととか
考えなくてはいけないらしいけど、
本人も特に何かに興味があるわけでもないし
勉強したいことがあるわけでもないらしいし
(←親に言わないだけ、
とかそういうことではないのですよ)

どうしていいか分からないみたいで、
広江さんをヤキモキ(実際はそれ以上)させております。

大介も広介も、最近じゃ本も読まないみたいで、
私のアタマの中では
「どうしてこうなった?」という疑問が
渦巻く毎日であります。
今年の夏は子供たちの休みとうまく
都合が合わなくて、
家族で日本には行かないことになりました。

大介&広介参上 決壊する氷河湖 奥庭




山百合と蜩の邂逅

 ひぐらしのでるは《決壊する氷河湖》  
7月20日(土)曇晴 奥庭

昨年の雪辱戦だ!とか云って意識変革を成し遂げた本来の大介、広介に
逢えるかと愉しみにしていたのだが、残念。
日々流入する水量が増え,或る日突然決壊する氷河湖のように、大介、広介の意識も、
量から質への爆発的変換を遂げる瞬間はやって来る。

その変換が外部から観察出来るとは限らず、
場合によっては本人すらその爆発の意味を捉えられないこともある。
当事者である親としては深刻かも知れないが、校長に呼び出されたり、
成績不良で卒業旅行に行かせてもらえなかったりなんて,武勇伝を聞くと実に頼もしいと思ってしまうのだが・・・。

と語るはすっかり蜩に成り切って、濃密で妖艶な山百合の花弁に潜り込んだ仙人か?



循環ポンプ急始動 池源流
連想してニヤリ
7月20日(土)曇晴 山荘池

焦って慌てて
池と疏水源流を繋ぐ緊急ポンプを
稼働させ
池の水を循環させ死に絶えつつある
クレソンに水を送った。
新鮮な流れが途絶えると枯死する
クレソンは
果して甦るだろううか?

それから絶えず流し続けている
水栓バルブを点検。
バルブを大きく開くと水の流れる
力強い鼓動が確かに聴こえる。

った池の疏水 池源流
地下水を汲み上げている
ポンプは池源流まで
新鮮な水を運んでいるのは
間違いない。

となると池源流の貯水タンクで
何かトラブルが発生したと
しか考えられない。
貯水タンクの重い蓋を開けると
十数年放置された
タンク内には植物の根がびっしり。

タンク内の根を総て取り除き
地下水との接続管を探す。
こいつだ! 
 
遂に原究明 池源流
調べてみると池の疏水と
接続管を結ぶ緑のホースが
外れているでは!

汲み上げられた地下水は総て
その下に在る排水溝に
流れ込み疏水には流れ込んでいない。
たったこれだけのことだったのか?
根本的解決には
山荘原野の湧水をパイプラインで
引き込むしかない。 

クレソンが大介&広介で
慌てふためいているのが陽介君?
と連想してニヤリ。




木漏れる宇宙のと向日葵・T
7月20日(土)曇晴 西畑

ただ単に15年、17年と云う時間が蓄積されただけでなく、確かに脳にも筋肉にも何か得体の知れぬものが溢れつつある。
それが脆弱な氷塊によって辛うじて堰きとめられていて、崩壊寸前であることも知覚出来る。
それ故に蓄積された得体の知れぬものが生み出す衝動の予感に怯え、崩壊寸前の危機感に苛まれる。
怯えも危機感も具体性を持たないので言語化出来ず、他者への伝達なんて思いつきもしない。

それが結果として《どうしていいか分からない》ように映るのではないだろうか?
そう例えばこの向日葵の背後の木の間から、僅かに洩れる宇宙の蒼のように見えなくもない。
若しかするとその得体の知れぬ蓄積の崩壊が、あの無窮の美しい宇宙へ連なるかも知れないと、ふと思う。 



原野に現れたユンボ 山荘原野
仙人の実態
7月20日(土)曇晴 山荘原野

どだい電気を使って地下水を
くみ上げて疏水を造るなんて
邪道なんじゃ!
山の中腹に建てた山荘なんだから
山の上から
水を引けばいいのだ。

そらそら、またまたそんな
無責任な戯言吐いて
誰がどうやって山の上から水を
引くんだい?

水源は何処 山荘原野
 実はなもう十数年も前から
考えてはいたんじゃ。
だが山荘は尾根上に在り
水源の谷まではかなりの距離と
高低差があり人力での
作業は無理。

あのフランスのメーカーが作った
ユンボを使わぬことには
湧水地点に貯水槽を埋め込むことも
森に溝を掘って
パイプラインを埋め込むことも出来ない。

水源地への道造り 山荘原野 

そこで2年前からユンボを借りて
操縦訓練を始めようと
計画だけは立てたんじゃ。
が、仙人が化けた黄星髪切やにいにい蝉
山百合の中の蜩を観てご覧。

黄星は左の翅が割れてるし
にいにい蝉の右翅は破れ
左翅は折れて羽ばたけないし
蜩の右脚は無残に切断されている。

この姿こそ正しく老いた仙人の実態。
そこでユンボ操縦は諦め
業者に委託と云う
何とも情けないことに相成った訳さ。 




木漏れる宇宙のと向日葵・U
7月20日(土)曇晴 西畑

確かに突然の氷河湖の崩壊は恐ろしい。
特に氷河湖近傍の住民たる親にとっては、時に致命傷を負い得体の知れぬ蓄積物に押し流され死に至るかも知れぬ。
しかし決壊した氷河湖の蓄積物は流れるに従い、安定した豊かな水路を形成し下流域に豊饒を齎す。
ほら気のせいか向日葵の背後の蒼が、幾つもの蒼い宇宙に分かれ微笑んでいるように見えはしなかい?

あの美しい蒼い宇宙が10数年後の大介、広介に見えるんだが、きっと陽介君は嗤うんだろうね。
「うーん、相も変わらず先生は現実から乖離しっぱなしですね」と。


これからが夏本番だと云うのに
最早一足早く紅葉を
始めたのはワイン用赤葡萄の
アルモノワールHarmo noirでは。
どうしたんだろう?

ワイン用葡萄の葡萄苗を4年育て
これから本格的収穫期を迎え
ワイン造りを愉しみにしていたが
害虫に喰われ枯死。

農薬を使わない限りワイン醸造は
出来ないのかな?
と諦めかかったが思い直し
再度無農薬栽培への挑戦を決意。

早くも葉? 葡萄畑
今度こそとしっかり葡萄樹の研究をし
葡萄研究所長の推薦する
アルモノワールを選んだのだが
昨年、移植2年目に1本枯らしてしまい
残った1本が育ち結実。

しかしこんな早く紅葉するなんて変だ。
これは枯死の前兆なのでは?
せめて樹にかかる負担を減らそうと
心を鬼にして摘果に踏み切った。
と云うと潔く聴こえるが
実は結実した葡萄の5分の1程しか
摘果せず。
これで果して救われるのだろうか?

べ頃のオクラ 葡萄畑
稔りの夏を堪能

今年のオクラこそ堅くなる前に
収穫しようと連日チェックし
早めに摘むようにしているが
それでも堅い実になってしまう。
僅か1日の違いで
堅くなり食べられなくなるのだ。

朝トレで森から里に出たらいい香り。
足元を見たら
大量の桃が捨てられているでは。
傷ついた桃はジュース加工に
回されるのだが収穫が忙しくなると
捨てられてしまうのだ。
摘果され捨てられる葡萄と桃。
やっぱり勿体ないな!

熟すのが遅いので
奥庭に存在してることすら
忘れていた李が赤く熟れて
芝生の上に落ち始めた。

冷蔵庫で冷やして早速ワインと愉む。
甘いのだがしっかり酸っぱく
おーこれぞ山荘の李と
山荘産枇杷や桃、ソルダムと共に
稔りの夏を堪能。
蒼い宇宙になった大介、広介を
想い浮かべながらさて
それではもう一杯!

てられた桃 福生里

Harmo noir葉? 葡萄畑

ほら南 葡萄畑

泣く泣く 葡萄畑
 
ゴーヤーもラホラ 葡萄畑

やっと李がした 奥庭




谷から尾根へのパイプライン
原野から森へ、湧水へのルートかれる
7月22日(月)曇 山荘の森

左側が山荘の建つゆぴてる峰中央尾根で右側がピーク2峰の支尾根で、この真上に扇山峠がある。
2つの尾根に挟まれ一応、浅い谷間にはなっているが山が浅いので水流が確認出来るのは、
年間を通しても数日程度であろうか?
従って当然湧水と云ってもごぼごぼ溢れるような勢いのあるものではない。
地層からじわっと滲みだしてくる程度なので、これを如何に集め貯水するかが問題なのである。

しかし嘗て里人はこの水源から水を引いて、畑や生活に使っていたと云うのだから、その問題の解決方法はある筈。
さてそれらの事情を知り尽くしている筈の地元業者は、どう工事するのかじっくり観察するとしよう。


邪魔な大岩を去 

この辺りに水タンクを

タンクのりにガラを敷いて

このガラから湧水を
先ず古い貯水タンクや大岩を
ユンボで取り除き
ヒューム管と呼ばれる底付きの
コンクリート槽を埋め込む。
この槽の下部には穴が空けられ
ここから地層の水を
取り入れるらしい。

地層の土が穴を塞がぬよう
又滲み出した水が
集まり易いように槽のぐるりを
ガラと呼ばれる小石で覆う。

さて取水管の位置であるが
槽の上部に取り付けると思ったが
槽に空けられた穴の
僅か10cm程上なのである。
つまり穴から取り入れられる水が
槽の上まで満たされなくても
取水可能となるよう考えているのだ。

果たしてこんな状態で
本当に水が
取り入れられるのだろうか?
若しかするとこれは
とんでもない徒労工事に
終わるのではと不安が過ぎる。

ヒューム管に25mmを接続して

パイプラインの削開始

此処から々と山荘まで掘削
 湧水から山荘への長いパイプライン設工事開始
7月22日(月)曇 山荘の森

「北の国から」でも手作業で谷の水を引く場面が出てくるが、まるっきり嘘っぽくて期待してたj映画だっただけにがっくり。
リアルであるよりも観客を納得させるような映像を撮る為だったのだろうが、やはり不自然である。
そう、半端でない北海道の寒さが忘れられた作業なのである。
導水に地上部に露出している筧を使っているが、よほど水流が強くない限り冬には凍て付いてしまい使えなくなってしまうのだ。

地上に露出して凍て付かないなら、何も業者に工事を委託しなくても仙人にも出来るのだ。
しかし北海道ほど寒くはならないが、山荘もマイナス10度にはなるので導水管は地中に埋設しないと凍て付いてしまう。
さあ、此処から延々と山荘まで、木の根を切断しながら穴を掘り導水管を埋める作業が始まる。



一重の菅草 福生里

清々しい立 福生里
「谷の水が、尾根上に在る山荘に
流れ込むようになったら
そりゃ嬉しいけど
水流のない谷にそんな
期待を掛けて
全くお目出度い仙人だこと」
そう、ぶつくさ云うのは
葡萄畑の大きな富士薊。
「そうよ、そんな訳のわかんないこと
するより、その資金を
原野開発にでも使ったらたらどう?」
と里の花々も一斉にシュプレヒコール。

どうもこの里の住人である花々は
仙人の今回の決断を
嘲笑っているようなきがするな!

大きな富士 葡萄畑

枯葉のからにょきにょき 扇山


 二重ガラスの虚像
卒業式での広介:イケメンやな! ボーイスカウト活動の大介:静かな微笑みが良いね!

7月21日(日)曇 山荘テラスからの最近画像

山荘のドアや窓ガラスは保温の為総てペアガラス(二重ガラス)になっている。
従ってテラスのドアガラスに映る山々も2枚のガラスに夫々の稜線が翳を落とし、二重の世界を描き出す。
その世界を観る度に手前のガラスに映る像が本物で、2枚目のガラス像は偽者なのか又はその逆なのかと思ってみたりする。

さて大介&広介の住むシリコンバレーの在るサンノゼは、山荘からほぼ真東に位置するので
この虚像と実像を映すドアガラスにカメラを向ければ、彼らの虚像と実像が捉えられるかも知れないなんぞと
埒も無いことをつらつらと思う。
そんな仙人の気配を察したか陽介君がつい先日卒業式を終えたばかりの背広姿の広介君の画像と
ボーイスカウト活動に勤しむ大介君の様子を送ってくれた。

こうして幼い頃から見守ってきた2人の顔を眺めていると、実に頼もしい好青年の実像であり、
よくぞ此処まで育ったと感無量なのだが、
父君である陽介君にとっては虚像と映るのであろうか?
若しかすると陽介君自身が、保温性を高める為いつしかペアガラスになってしまい、常に実像と虚像に幻惑され
その事実に気づいていないのでは?
なんぞと再び埒も無いことをつらつらと思う。

どうやら2人共、ペアガラスに映っている二重像はどちらも虚像なのにと嗤っているぜ!、


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