その90の2ー2013年皐月 |
さて伐れ味はどうかな? |
或る時は又、森のそむりえ 5月19日(日)曇 林檎畑の森 えっ!聞いた事が無いって? ほら辞書を引いてご覧よ、出てるだろ? 《森の料理店などで、食材の仕入れ、管理を担当し また客の相談を受けて 食材を選定・提供する専門職》 広辞苑より ・ つまりだよ、森の料理店で使う食材を育てている 山荘の林檎畑がだね この山桜によって日陰になってしまって そうなりゃ当然翳った分だけ じゃが芋やトンモコロシの生育は悪くなるわさ。 ・ となると森のそむりえとしては 生育の良くない食材を仕入れる訳にはいかんし 当然、生育の改善に努めねば。 何たって森のレストランの食材仕入先は 山荘の4箇所の畑以外に 無いのだからこりゃ深刻なんじゃ。 ・ で、どうするかって? そりゃ日陰を齎す樹を伐ればいいのだから 解決策は明白なんだが問題は この大きな山桜の高く太い枝を如何に伐るか? 何しろチェーンソウと云えば 手近にある凶器としては最強の殺傷能力を持った 恐るべき殺人兵器。 ・ それを平地でならともかく 不安定極まりない高い樹の上となると 扱いはとびきり難しくって ほんの僅かなミスで指や腕、下手すると 大腿部だって切り落しかねないぜ。 ・ 梯子の上で紐を引いてエンジンを掛けるのだって 両手を梯子から離さねばならぬし 勿論伐採の最中はしっかり両手でチェーンソウを 操作しなくちゃならないし。 でだね、本音を云うと森のそむりえなんて さっさと辞めてしまいたいのさ。 当然だよね。 |
先ず落ちぬようロープで体を固定してと |
危険な垂直梯子の上で両手を離すだなんて考えたくも無いが、なーにヒマラヤの雪壁や岩壁での過激な動作に較べれば 幼稚園児の遊びみたいなもんさ。 そうそうクライミングのロープ、カラビナ、シュリンゲ、ハーネスを用いて、ハーケンやナッツの代わりに樹幹を利用すれば ほら、御覧の通りばっちし身体は空間に固定されたぜ。 ・ これで落下は防げるが果してこの態勢でエンジンを掛ける為のリコイル・スターターが引けるのか? 左手でマシンを押え右手で恐る恐るリコイルを引いてみる。 うんともすんとも云わず、エンジンは沈黙したまま。明らかに引く速度が遅すぎてエンジンが始動しないのだ。 マシンを左手だけでなく更にロープでも固定して再度力を込めて思いきり引く。 バリバリバリと凄まじい爆音を立ててエンジンが吠えだす。 |
つい先だってまで咲き誇っていた山桜の輝く緑が眩しいぜ! |
よーし準備完了、これでチェーンソウを構え伐採姿勢を整えればいつでも切断可能。 身体をぐっと後ろに引いて樹幹と肉体を一体化させようとした途端、ハーネスに力が加わりハーネスが肋骨を締め付ける。 閃光が肋骨から脳に突き抜ける。究極の痛みが閃光であると始めて知った瞬間。 最早それは痛みなんて生易しいもんじゃなく正に光そのものなのだ。 ・ そうでした。左11番の肋骨は未だ折れてから19日目、コルセットで痛みを押えている身分をすっかり忘れていました。 《莫迦は死んでも治らない》 骨折も忘れて危険な作業に勤しむなんて、それは正に仙人の為の言葉だったのですね。 |
ほら畑に影ができちゃう |
光と成った激痛が 本人の意思を超えて全神経を コントロールし 瞬間的に両手を開き、恐るべき 殺人マシンを落下させたら 腹部か大腿部の致命的損傷は免れない。 ・ 意識の最奥部で微かに その最後の一線を超えさせてはならぬ との指令が発せられ 何とか仙人は 肋骨の激痛に耐えマシンを落とさず 持ちこたえたのでした。 ・ 数回深く呼吸を繰り返し痛みを やり過ごしてから殺人的爆音を立てる 刃を徐に枝に当て切断開始。 と、どうでしょう、 切り進むに連れて当然ながら 太い枝は重力に引かれ自らの重さに 耐えきれずメリメリと折れ曲がり マシンの刃を締め付け マシンの動きを封殺してしまったのです。 ・ さあ、こうなると 引いても押しても叩いても動かず 危険な梯子の上で立ち往生。 仕方なく手鋸で挟まれた刃の周辺を 切り開くしかありません。 果てしなくぎっこん、ギッコン、ぎっこん。 やっと外れた時の歓びと安堵。 |
枝とは云え太いぜ |
さて落ちる枝に直撃されぬよう |
ロープの緩みは無いかな? |
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やべー刃が食い込んでしまった |
どうやっても取れんぞ |
チェーンソウはぶら下がったまま |
高芝山とハンゼの頭を後に背負って絶景かな! |
どうしてコルセットまでしている身で敢えて危険な高所の伐採何ぞをするかって? どうしたって危険を愉しんでるエキセントリック(Eccentric)な莫迦者としか思えないんだけど。 あーこのあまり使われないこの言葉、仙人の口癖で数学で離心的とか偏心のとかの意で使われるんだ。 つまり中心から逸れていると云う意味で 仙人は生まれて意識を持った頃に、既に自らがエキセントリックであるとの自覚を抱いていたとか。 ・ でね、雨が降って更に危険が加わった濡れた森で伐採を始めたのはその所為かと思ったのだが どうも今回は止むに止まれぬ理由があるらしい。 |
手鋸でギコギコ伐って |
おーやったー!外れたぜ! |
さあ、伐れ落ちる瞬間だ |
この森の下に在る林檎畑では 先週蒔いたとんもころしが発芽し始め 霜害にやられたじゃが芋が どうにか復活したところ。 ・ 同時に山桜も花が散り 葉がぐんぐん繁り とんもころしもじゃが芋も日影に なって成長が遅れ 結実もままならないと予想される。 |
さてどっちに落ちる? |
で何故、今伐らねばならぬかと云うと 発芽した芽が来週には もっと大きく成り伐採した樹が 畑に落下すると その芽が折れて全滅してしまうんだ。 ・ 何しろ枝は太くて落ちると 畑のかなりの部分を直撃するから 3本も伐ると被害は 畑全体に及ぶんだよ。 |
じゃが芋畑に直撃 |
ほら、こんな調子さ。 とても1本の枝だと思えない程 大きいだろう。 止むに止まれぬ理由と理解出来るかな。 ・ 森のそむりえとしては 先ず優れた食材を優先せねば ならないからね。 その為には骨折や高所での危険作業 を乗り越えて濡れた森であっても 敢えてやらねばならぬとか。 まー森のそむりえも楽じゃないさ。 ・ でもそれが 堪らなく愉快なんだ。 ほら次の画像を観てご覧よ。 森のそむりえをやっていると こんなこともあるんだぜ! |
この後は解体の枝伐り |
絢爛たる花弁から 生れ出ずる虹の女神アイリス 5月17日(金)曇 前庭 |
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石卓を彩るアイリス 前庭 じゃーまん・アイリスと云うからには ドイツ以外の国名の付いたアイリスがあるのだろうと 調べてみたらオランダ、英国、スペイン国名の付いた ダッチ・アイリス、イングリッシュ・アイリス、スパニッシュ・アイリス、 があり更に小型のレティキュラタ・アイリスなんてのもある。 ・ 栽培歴史も古くエジプト王トゥトメス3世が 紀元前15世紀にシリアから持ち帰ったといわれ 古代ギリシアやローマでは香水に使われたとか。 で、じゃーまん・アイリスには3枚の外側の花弁・外花被に 固有の花髭があり 他のアイリスと趣きを異にしているのだ。 ・ うーん、そんな事知らんかったな! |
あいりすに乾杯! 5月17日(金)曇 前庭 そこで早速、チリ産の赤ワインと山荘のバンローゼを 凍る寸前まで冷やして アイリスの咲き誇る石卓に並べ 山荘で収穫し調理したとんもころしやパン 干柿とカマンベールの重ねスライス、新鮮な野菜サラダ等を 添えてさあ、乾杯! |
山荘朝定食・ワイン、パン、唐黍、果物、野菜 前庭 |
早速、筍料理 テラス |
芝生に出てきた筍 奥庭 |
新玉葱も美味しい テラス |
蕗と蓮根とクレソン テラス |
先週刈ったばかりの芝生に にょきにょきと 何の断りもなしに勝手に生えてきた筍。 放っておくとあっという間に 竹薮になってしまう。 ・ 急いでちょん切り早速調理。 序に採り立て玉葱、蕗、蕪、小松菜 春菊も調理。 蓮根が寂しそうだから ちょっくら蕗とのコラボレーションを。 |
赤蕪とタンドーリチキン、帆立貝 前庭 |
やっと咲いたクレマチス 前庭 |
絢爛アイリス 前庭 |
蝮草も花盛り 座禅公園 |
山追人 晴れると身体がムズムズしてきて 落ち着かなくなって どうしても山に行きたくなる。 ・ 山の中に棲んで居て朝には 朝トレと称して山に登っているのに それでも晴れると 身体が訴えるのだ。 「早く山に行こうよ!」 |
咲きそうアンネの薔薇 奥庭 |
そこで溜まっている畑仕事に目を瞑り バイクに跨りビュイーンと ハンゼの頭を目指して竹森林道へ。 ・ 閉鎖ゲートを通り抜け 誰も居ない山荘専用路を飛ばしながら うん、これぞ正しくマイウエイ なんぞと独り悦に入っていたら 突然現われた大型ダンプと 路上に山と積まれた伐採木材。 小回りのきくバイクでも とても通行出来そうも無い。 |
偽アカシア花盛り 福生里 |
辺りを見回すと つい先日まで鬱蒼と茂っていた 檜の森はすっかり禿げ上がってしまい 太陽が燦々。 ・ 目標変更でバイクをUターンさせ 偽アカシアの白が点描する小倉山へ。 麓の森は座禅草が茂り 頂は躑躅が満開。 ・ 山から戻りテラスでビアを傾けていると 紅い羽を広げて不器用に よたよたと飛ぶ紅扁虫が テーブルクロスに着陸。 「おいらにもビア呑ませてよ!」 |
躑躅に燃える頂 小倉山頂 |
すっかり繁った座禅草 座禅草公園 |
紅扁虫(べにひらたむし) テラス |
庭園標識には山追人ならぬ夢追人と 福生里 |