仙人日記
   その852012年師走

12月1週・・・キウイ・夜明け前の収穫

夜明け前のキウイ収穫 
12月2日(日)晴−4.1℃ 西畑


焦ったぜ!
村松友視原作、夏目雅子主演の
「時代屋の女房」が
面白くてBDの最後まで観て
伊藤計劃の「虐殺器官」を読んで
更に最新刊の宮部みゆき作
「ソロモンの偽証」まで
読み始めたら
眠れなくなって、ふと机の上の
時計と外気温度計に
目をやったのだ。

ありゃ、もう夜明けまで3時間。
その上外気温は
信じられないことにマイナス4℃。
ちょっと待てよ。
マイナス4℃では未だ収穫してない
キウイフルーツが
凍り付いてしまい全滅の懼れあり。
冷たくて手がいよ
大きくて美味しそう!

寝不足の目を擦り擦り毎朝のストレッチと筋トレをこなし
外に出てみると寒みーの何の!
こんな時は小倉山でも扇山でもさーっと登って体を温めてから
畑作業やキウイ収穫をすればいいのだが
キウイが寒さに震えているのを無視して仙人だけが
暖かい思いをする訳にはいかない。

そこで梯子を担いでえっちらこっちら西畑に緊急出動。
作業用の薄手のゴム手で金属梯子を握っていると
冷たいのではなく痛いでは。
これじゃまるっきり冬ではないか!
そうか考えてみたら、まるっきりではないもう完全に冬なのだ。



「えっ!タイトルだけ出して中身に全く触れないで《面白くて眠れない》なんて、そりゃないぜ」
と、お馴染みの高芝山が騒ぐので、あー高芝山はキウイ画像の背後に聳える三角形の蒼いシルエットだけど
山荘のシンボルでもあるこいつに騒がれては無視する訳にもいかないからちょっとだけ。

時代屋の女房
骨董店「時代屋」にふらりと現れた女・夏目雅子演ずる真弓と実在した「時代屋」を営む安さんとの恋物語なのだが
役者が実に巧くてめちゃ面白いのだ。
渡瀬恒彦、平田満、大坂志郎、朝丘雪路、津川雅彦と名優が雁首並べれば唯じゃ済まない。
原作は直木賞を取ってるが未だ読んでないので是非読んでみよう。

虐殺器官
作家デビュー後僅か2年、35歳の若さで肺癌により早逝した伊藤計劃の高く評価された「虐殺器官」。
これは前回の《今週のLivre》 bR4で紹介した「屍者の帝国」と異なり
共著でなく伊藤計劃1人で書いているので構成が一貫しており解り易く読み応えのある作品になっている。
3.11以降の激化するテロとの闘いに先進資本主義諸国は個人情報認証による厳格な管理体制を構築し
社会からテロを一掃することに成功する。
が、いっぽう後進諸国では大量殺戮を引き起こす虐殺の器官が・・・・。
さてどうなるか、未だ読み終わっていないのでワクワクドキドキ。

ソロモンの偽証
「ソロモンの偽証」は如何にも宮部の渾身の力を振り絞って書いたと思わせる長編力作である。
「小説新潮」に2002年10月〜6年7月まで連載され今夏12年8月に「光圀伝」や「屍者の帝国」と同時期に出版された。
1部だけで741ページ、となると1,2部で1400ページ前後の作品で「光圀伝」や「屍者の帝国」を遙かに超える長編である。
テーマはいじめだが単なるいじめ問題に終わらさせず読者の心を鷲掴みにし、ぐいぐいと
宮部ワールドに引き込んでいく手法は相変わらず見事である。

最大の魅力は人間の描き方にある。中心人物のみならず脇役の一人ひとりを実にリアルに描く。
森内恵美子教諭に届く速達をポストから抜き取る脇役の更に脇の垣内美奈絵すら丁寧に描きその行為の背景を描写していく。
その結果何故速達を抜き取ったかが何の違和感も無く必然性を伴って読者に迫る。
何しろ読み始めたら止まらないので総ては後回しにされる。山荘の畑仕事は停滞し、HP編集も等閑(なおざり)にされ
キウイの収穫だって後回しにされ・・・あれ!キウイ収穫遅怠の真相がばれちゃったかな?

帯紙の宣伝文を読んだだけであなたはもう「ソロモンの偽証」から逃れることは出来ない。
それでは新潮社の桜になって帯紙のCMをちょっとだけ。
クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。匿名の告発状、連鎖する犠牲者。校庭を悪意が呑みこんでゆく・・・。



水晶峠からの
やったー、やっと太陽だぞ!

先ずキウイ全体の観察。
例年にない豊作で
1つ1つの実の大きさも充分。
その上、鳥に穴を開けられたキウイは
たったの1つだけ。

と云うことは未だキウイは堅くて
鳥には手が出ない。
いや嘴が出ないと云うべきか。
つまり未だ熟していないし
凍結と解凍を繰り返して
ぐじゅぐじゅにもなっていない事を
意味しているのだ。

しかし触ってみるとカチカチに堅い。
厭な予感。
これは若しかして未熟の堅さ
だけでなく
凍結の堅さも加わっているのか?
眠りから覚める
光を孕むキウイ

水晶峠からやっと太陽が顔を出したと云うのに
辺りはまるで凍てついて白々。
それでも、いやだからこそ
キウイは全身で光を受け止め凍てついた身を
解き放そうと懸命に光を貪る。

そらもう少しの辛抱だよ。



笹子トンネルの惨事

この朝の甲府盆地の日の出時刻は116.7度の方向に6時38分。
水晶峠での日の出はその51分後なので7時29分。
この30分後の8時頃、山荘から116.7度の方向にある中央自動車道笹子トンネルの上り線で
死者9名となる惨事が起きたのだ。
トンネルのコンクリート板で出来た天井が崩落し走行中の車を直撃し火災発生。

1枚1トン以上もあるコンクリート板が330枚、距離130mに亘って落下したと云うのだから
想像するだに恐ろしい。
しかもその1トン以上もあるコンクリート板を直径僅か16mmの細いボルトで天井から吊るし
ボルトは深さ130mmの天井岩盤の穴に接着剤で留めただけ。
0.6m間隔で左右2枚のコンクリート板を4本のボルトで留めてあるので、
幅1.2m、1枚1トン以上もあるコンクリート板はたった2本のボルトで支えられていることになる。

最も問題なのはこの厚さ6cmものコンクリート板天井は必要無いということである。
天井は主に換気の為設置されているということだが、換気通路に何故重さ1トンもあるコンクリート板を使わねばならぬのか?
恐ろしさを通り越して呆れてものが云えない。

水晶峠の背後、山荘と峠を結ぶ直線の先数kmに笹子トンネルは在る。
山荘のすぐ近くに位置し山荘活動には欠かせないトンネルである。
この時間、キウイの収穫が無かったら山に行く為に笹子トンネルを走っていた可能性は充分あり。
キウイが引きとめてくれたのかな?



朝焼け富士とキウイ
梯子のてっぺんで収穫

薄く薔薇色に染まり始めた
雪富士が嘲笑う。
「可哀そうなキウイ。
ほらごらん、震えているじゃないか。
どうしてもう少し早く
採ってあげなかったの?」

可笑しなことに飛行機雲まで
雪富士に加勢して嗤う。
「やーい、呆け仙人!
回りの畑を観てみろや。
キウイの畑では霜が降りる前に
すっかり収穫を終えてるぞ」

キウイと愉しい一夏を過ごした芒が
冷たーい蒼穹に靡いて
仙人に語りかける。
「ほら、呆け仙人なんて云われてるよ。
何とか云っておやりよ」
1本の雌株から収穫72kg
実が無くなった裸枝が寒そうだね

そこで呆け仙人はごにょごにょ、訳の解らんことを呟くのでした。
「あのね、実験があってね、どうもキウイは収穫が遅い程糖度は上がり
酸含量は低下し果実硬度は低くなるんだ。
つまり甘くなって酸っぱ味が無くなって柔らかくなって美味しくなるって。
そりゃ凍結してしまえば美味しいどころか食べられなくなっちゃうから
その見極めが難しいんだけど・・・・。
えー、証拠を見せろって?そんじゃネットに載ってる長崎果樹試験報1995の
実験表でどうだい」


収穫日 糖度% 酸含量% 果実硬度kg/cm2
11月13日 7.3 3.14 4.79
11月20日 8.7 2.78 4.61
11月27日 10.2 2.84 4.73
 12月04日 11.0  2.69 4.66 


ほらこんなに沢山採れました。
でも耳を近づけるとキウイがなにやらぶつぶつ
ワイワイ騒いでいるような。
さては「どんぐりと山猫」の裁判のように
我こそ一番と怒鳴り合っているのかと思って
よーく耳を傾けて聴いてみると
どうも違うのです。

「この12月04日のデータで収穫日を
決められたら堪んねーぜ。
問題はこの後の追熟に遅い収穫がどう
影響するかが問題なんだ。
ほんとうに仙人はあっぱらぱーでこまるな」
と云ってるでは!
そんでもって未熟仙人はもう一度しっかり
長崎果樹試験報を読んでみたのです。
やっぱりキウイの云うことは
正しかったのです。

収穫72kg
追熟実験表
収穫日 糖度% 
1/22日  4/15日 
11月08日  13.2%  13.8% 
11月13日 13.6 13.4 
11月20日 13.6 13.4 
11月27日 13.6 12.9 
 12月04日 13.4  13.3 

「ほらね、約3カ月後の1月22日の
糖度をよく観てご覧。
早く採り過ぎた8日のも遅すぎた
12月4日のも11月中旬収穫のより
糖度が落ちているだろう」

キウイはこの僅かな糖度の違いこそ
遅すぎた収穫にあると
仙人に訴えたかったのですね。





凌霄花(のうぜんかずら) の観賞用アーチ造り
11月30日(金)晴 石段

前庭の凌霄花を中畑に挿し木したら見事な花を沢山付けた。
前庭では欅が邪魔をするのかそう陽当たりは悪くないのに例年花数が少なく
さてどうしたらいいものかと作戦を練っていたのだが
試行錯誤の結果、中畑の挿し木が成功。


薔薇アーチ組み立て開始

湾曲部はこうしてと
成功したのは嬉しいのだが
中畑で幾ら美しく咲き乱れても
食事をとるテラスや石卓から
観えないのだ。

観賞するには石段を降りて
中畑までわざわざ出向かねばならない。
なんとか山荘から直接
観る工夫は出来ないものか?
そこで着目したのが凌霄花の蔓性。

こいつを這わせるアーチを
テラスから見える位置に造ってやれば
問題は解決する。
石段の幅や傾斜に合うアーチを
手造りすればいいのだが
金属加工用の道具はドリルと鉄鋸しか
山荘には無い。

実は薔薇で無く凌霄花用のアーチなのだ
金属ポールの素材は手軽に求められるが
山荘石段の幅に合わせて
湾曲し2列のポールを繋ぐボルトを
ポールに取り付けるのは難しそう。

手造りを諦めて
あちこちのホームセンターで
アーチのキットをウォッチングしてたが
薔薇用のアーチを遂に発見!

既に設置してある石段上部の
薔薇アーチと異なり
大地との固定具が着いて無いが
工夫すれば何とかなるだろうと
早速購入し組み立て開始。

右のポールまで迫る凌霄花

完成したぞ!奥のアーチが凌霄花

石段の大きな石にボルト用の穴を開け台座を固定しておいたが
果してこの以前の台座にポールが嵌るか?
おーぴったり!
次に台座の間隔が新しく購入したアーチの幅と合うか?
恐る恐る乗せてみるとこれまたぴったり!

たかがアーチにJIS規定があるとは思えないしメーカーが違えばポール直径、アーチ幅は異なって当然。
にも拘らずこうまでぴったり一致すると嬉しくなって背後で観ている高芝山に感謝したくなるぜ。
ありがとう!これで来年の夏からは
咲き乱れる凌霄花がテラスから愉しめるかな?





Index Next