仙人日記
 
 その113の22015年  卯月

4月2週・・・爆発する新星を抱く馬頭星雲

座禅峠からの日輪を戴くボン・シルバー
4月12日(日) 晴 中庭から


気が付いたら何と太陽が座禅峠辺りから出ているでは!
うーん、先日はもっと西の小倉山から昇っていたのに、
いつの間にか座禅峠へ?

考えてみれば、太陽の北回帰線への旅はあと2か月もすれば終わってしまう。
なんか、さっきまで未だ冬だったのに!


さあ菜花ともお別れ

とっても綺麗だけど
さらばの花よ!
4月12日(日) 晴 

昨夜も降り続いたらしく
畑はびしょびしょ。
しかしめげずに
耕運機掛けの終わっていない
残りの菜畑に分け入り、
唐鍬で花盛りの菜を
ばっさばっさとなぎ倒す。

葡萄畑の南側は葡萄棚が
低くなっているので、
屈まねばならず、
腰に無理な力が加わり
直ぐギブアップ!
腰を延ばし伸ばしどうにか
葡萄畑の菜を倒し、
更に林檎柵へ。

いつもなら朝飯前の畑作業は
この位で上がるのだが、
久しぶりに太陽が出たので
つい、張り切って
林檎畑まで遠征じゃ!
【勿体無い!
何故もう少し咲かせておいて
菜種を採らないの】
とか声が聞こえてきそう。

でも、こいつ昨年の菜花から
採った種で
白菜、青梗菜、小松菜が
互いに交配して
ハイブリッド野菜になっちまったんだ。

だもんで今年は菜種採りは断念。
白菜、青梗菜には
夫々の美味しさがある。
しかしこのハイブリッド野菜、
小松菜の強烈な生命に敗けて
白菜、青梗菜の
美味しさを失ってしまったのさ。

窓から観ると春そのものの菜花

だけどもうお前さんは食えない

夏の野菜達が待ってるからね


夜明けの光を浴びてでる山吹と水仙
4月12日(日) 晴 居間の鍵盤上


≪あら!どうしてボン・シルバーだけが夜明けの太陽を独り占めにしてるの?
早くシャッターもカーテンも開けてよ!≫
朝の腹筋103回、その他のいつもの筋トレ、ストレッチをしていたら、キーボード上の水仙と山吹が煩いのだ。
まー、そりゃここ数日、冬将軍が戻って来やがって山荘は再び零下の朝になったもんだから、
カーテンも開けず、ストーブがんがん焚いて筋トレ。
水仙め、きっとそんな軟弱な仙人が気に喰わなくて、嘲笑っているに違いない。

「はいはい、解りました。今すぐ開けますから、そう朝から騒がないで!」
3か所のシャッターのスイッチを入れ、カーテンを開くといきなり飛び込んできた太陽。
と、どうです、この水仙と山吹の歓び様。
さあ、折角キーボードに乗っているんだから、その歓びの光で鍵盤を叩いてごらん!



椿山荘の辛夷より美人だぜ!

池畔の水仙も中々の風情
やっと辛夷が咲いた

庭に出ると
一斉に花々がブーイング。
≪久々に太陽が出たと云うのに
いつまで寝てるのよ!
花の命は短いのよ≫

ここ数日雨模様だったので
庭の花なんて
すっかり忘れていたが、
いつの間に辛夷が満開になって、
例年数輪しか開かぬ
椿なんぞ今年は狂い咲き。
ほら、宇治の田原町から
季節限定の
桜葉緑茶が届いたでしょう?

≪茶葉5~6gを急須に入れて
お湯150cc程注ぎ
45秒待って
注ぎ分けてください≫と
態々注意書きまで
添えられていたでしょう?

さあ、山荘の花々を愛でながら
お飲みになったら!
京の香りを贈って下さった方の
心情が花弁に
映っているかも知れませんよ。

この枝ぶりイイネー

一気に咲き出した椿

羽衣も負けじと満開


桃源郷に聳える富士との白い花に迫るの花
4月12日(日) 晴 山荘ゲート前のソルダムの花


いよっほー!と思わず叫んでしまった。
そるだむの白銀の花弁が、どうも呼んでいるような気がしてゲートに出てみると
どうでしょう、桃の花の絨毯に白銀が重なり、
御坂山塊に棚引く春霞が、雄大な雪富士を天空に描き、その秀麗なること。

ただただポカーンとして眺め入り、山荘が展開する森羅万象の美に酔い痴れたのでした。



素焼き完了

釉薬の電動撹拌

箸置き花器の釉掛け
 大皿の四隅にポンズを使って
穴を開けようと
その最適な乾燥度を待っていた。
翌日の午前中と
踏んでいたが、忙しくて
轆轤室に顔を出したのは午後。

その僅か数時間の差が
致命的になってしまったのだ。
堅くなりすぎて
ポンズを回しても穴が開かず
割れてしまった。
ドベで接着したが、素焼きで剥離。
 
電動攪拌機による黒織部撹拌
素焼きしてしまってからでは
もう粘土に戻すことは出来ない。
唯の廃棄物。
悔しいので、割れた部分を
煉瓦用鋸で切り落とし
不格好だが再生して
本焼きしてみることにした。

他の作品と同じく釉掛けしたら
何だか隅っこで
肩身の狭い思いをしてちんまり。
安心をし、生かしてあげるよ。 
 
皿中央に黒織部
 
十数種の釉薬を撹拌
 
さて釉掛け終了



還元から生み出される星々
4月3日(金) 曇 窯入れ

この紅く揺らめく炎に堪らなく、心惹かれる。
酸素不足で不完全燃焼を起こし、一酸化炭素を含んだ炎は土や釉薬の鉄分に襲い掛かり
素地や釉薬に染み込み、高温で酸化鉄の酸素を奪い取り、土や釉薬の鉄分を
エネルギー状態の高い本来の鉄に戻す。
酸化鉄が還元されより活性の高い鉄は、釉薬が溶け始める頃に活発に動き、
予測できないゆらぎ、深い色合いを現出する。


孔雀釉の角皿

重ね釉の碗 (村上作品)
酸化焼成
OF(OxydationFlame)
還元焼成

RF(ReductionFlame)

安定した酸化鉄が
酸素を奪われ、
コスモスからカオスへと
還元される瞬間を、
この紅い炎が支配するのだ。


そう、敢えて
誤謬を恐れず云うならば、
変化を失い唯只管に
死だけを待つ老体は、
酸素を奪われ、
酸欠に喘ぎながら蒼褪めつつ
蒼い春に還元される。

そのエネルギー状態の高い
蒼い春の瞬間を、
この紅い炎が齎すのだ。

≪酸素を断って焼く≫
これが還元焼きの説明であった。
そんな馬鹿な!
酸素を断ったら大体、火が
燃える筈ないじゃん。

陶芸活動を始めた頃は、
まーそんな程度の認識であった。
が、よく調べてみると
酸素を断つと云うのは、
当然ながら
完全に断つのではなかった。

送風量を減らしてただ単に
不完全燃焼を起こさせ
一酸化炭素を生じさせることに、
還元焼きの手法はあった。

その一酸化炭素が、錆びついた
金属から酸素を奪い
生まれたての金属に戻し
再び激しく変容する
蒼い春を演出するのだ。

珊瑚海の三角皿

深い海を湛える碗 (村上作品)

礁湖の角皿



星たちが手をつないで、山荘にやって来た。
≪いらっしゃい、ようこそ!≫ と声を掛けたら、スキップしながら輪になって踊り出した。
あの真っ赤に燃える窯の中から、海の蒼と宙の藍をいっぱいに湛えて
とうとう山荘にやって来たんだね!


爆発する新星を抱く馬頭星雲
4月11日(土) 雨 大皿と碗(村上作品)コラボ

四隅にポンズを使って穴を開けようとして、失敗し割れてしまった 大皿。
今頃は唯の廃棄物となって、山荘の森に捨て去られていた筈。
それがどうだ!この通り蘇ったぜ!
それも、事もあろうにオリオン座にある暗黒星雲に生まれ変わってさ。


http://amanaimages.com/info/infoRM.aspx?SearchKeyより




沈紫・箸置き花器
紫釉、黒織部、蒼ガラス

沈紫・三角皿 

緑茶・三角皿 
織部釉、黒織部、蒼ガラス
 
緑・箸置き花器

鉄赤・箸置き花器

鉄赤釉、黒織部、蒼ガラス

鉄赤・三角皿  



雲海と共に迫り来る桃花前線を喰らうボン・シルバー
4月14日(火) 曇雨 中庭から


里では桃の花が満開で、何処も彼処もピンクの絨毯が敷き詰められ、正しく桃源郷。
でも先週の山荘は未だ寒くて、やっと李のソルダムの白い花が咲き出したところ。
未だだろうなと思いつつ今週も車で登って来たら、ピンクの絨毯は山荘に迫る勢いで、直ぐそこまで押し寄せているでは!
雲海の白銀のヴェールに包まれて、眠い目を擦りながらボン・シルバーにご挨拶。

≪未だちょっと早いけど、もう花見の宴の準備をしてもいいわね。
大口開けてあたしなんかを食べる振りするより、アスパラのばら肉巻でも作ってもらったら!
今年のアスパラは甘くて絶品だそうよ≫


採れたてアスパラをばら肉で
 
アスパラ巻を作ろう


ばら肉に黒胡椒を振って

ばら肉で硬く蒔いて
『存在の耐えられないさ』
Nesnesitelná lehkost byt
í
(チェコ語:)

l'Insoutenable légèreté de l'être
(フランス語: )


「私にとって
人生は重いものなのに、
あなたにとっては軽い。
私はその軽さに耐えられない。」
(テレサからトマッシュへの手紙)

ご存知、、チェコ出身で
フランスに亡命した作家
ミラン・クンデラが
1984年に発表した小説の題名。
冷戦下のチェコスロヴァキアを舞台に、
1968年に起こったプラハの春を
題材にした恋愛小説である。

内容はともかく、先ずこの小説の
題名に痛く衝撃を受けた。
この重い存在が
耐えられぬ軽さであるとの実感に
思い至ったのだ。
発表されて9年後の1993年に邦訳。
K2遠征準備、山荘建設に
追われていたその年、
何をさておき
優先して読んだ記憶がある。

《生きていることの重さ》
これと真正面から対峙して生きる術は
在るのだろうか?
高校生になって本格的な登山を
始めて以来、
心象風景の通奏低音として
流れてたのがこの疑問であった。

山荘の畑で採れたアスパラを
ばら肉で巻きながら
ふと若き日のその根源的な問が
蘇ったのだ。

もしかすると
こんな他愛もないアスパラ巻に
その問の解が
垣間見えたのだろうか?

焼き上がりアスパラ巻

池のクレソンを添えて

山荘ビアで決まり





次回5月は5日(火)に変更

毎月第一日曜に実施してる
陶芸活動5月は日曜の3日ではなく
子供の日の5日に変更。
妖精たちが来て
粘土遊びをするかな?



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