仙人日記
 
 その110の22015年  睦月

1月2週・・森の出初式


天空を逍遥する仙人

巨樹の中には山桜や檜、小楢が混在し
山荘から見下ろすと
なかなかの風情でお気に入りの森。

だがしかし、数年前に植樹し
甘くて大きな林檎を実らせてくれた林檎の木が
3本枯れ、残り2本も枯死寸前。
どうも原因は、この東の森らしいのだ。
昨年は新たに柿苗木も植樹したし
このままでは柿木も危うい。
思い切って小楢に切腹してもらうことにした。
の為に泣いておくれ!

昨11月、林檎畑に新たに3本の林檎の苗木と
柿の苗木3本を植樹。
問題は林檎畑の東側の森の巨木たち。
こいつが林檎畑の半分を日陰にし
果樹の生育を妨げているのだ。

 
天網と大日とのコンチェルト


2015年は柿年じゃ!

切腹の介添え人として
誰がいいか干し柿たちに問うてみた。
「そりゃ云うまでもない。
仙人以外にありゃせんよ」
と柿達は宣う。

なんか、柿たちに責任転嫁したような
後ろめたさを抱きつつ
仙人はチェーンソーを持って
矯めつ眇めつ、
ウロウロただ逡巡するばかり。




さらば!数百年の年輪

さて切腹をしてもらうにしても
どの位置で伐るかによって、その後の
森の命運が決まるので
何処でもと、云う訳にはいかん。

上部で伐れば、その上にツリーハウスを作ったり
ツリークライミングのロープをセットしたり
色々に活用出来そう。
小楢よ、さらばじゃ!

やがて≪山荘の出初式じゃ!≫
とか何とか、ひと声吼えたかと思ったら
もう既に仙人はチェーンソウを抱えて
東の森に居るでは!
 
天空に還る小楢の巨木


い込むチェーン

小楢のめ付け
小楢の逆

なんちゃって、上部切断を試みたが
いやー、難しくて危険で
その上、7年も使っているチェンソー
の刃が鈍ってしまい
切れ味の悪いこと、この上無し。

不安定な高い梯子の上で
強力な殺人兵器ともなり得る
チェーンソウを操るのは
出初式の曲芸より
遥かに危険!


そこで君子危うきに近寄らずと
早速撤退を決め
地上作戦に変更し、切断開始。

ところがどうだ!
伐り込むに従って倒壊方向に
圧力が掛り
チェーンソウを噛んでしまったでは!

そりゃそんなこともあろうかと
充分に倒壊方向を見極め
噛まれぬよう反対側から伐り込み、
木には話しかけたのだ。
「どちらへ倒れるか
倒れる前に教えておくれ!」

岩をにして打ち込む

一難去ら又一難



さて、どちらへれるか?体重を掛けて腰で伐る
本日は樵なり
果樹と森の交代

伐られる小楢だって必死、
そんなの教えてくれる
筈がない。
巨木の全体重を掛けて
チェーンソウの刃を
噛むもんだから、最早チェーンは
びくとも動かず。

そこで小石を楔にして
鉄の大槌で打ち込み、僅かな
隙間が出来ないかと
新たな戦いを展開するが
そんな小手先の業を
巨木は唯ただ嘲笑うだけ。

このままでは、食い込んで動かないチェーンソウを
放って置くしかない。
よし、壊れて元々、最後の手段じゃ!
大きな鉄の槌で、直接チェーンソウをぶっ叩き
チェーンを外すしかない。

とは云え、出来るなら壊さずに
外したいので、何処を叩けば鉄槌での破壊を
免れるか、慎重に見極める。
どうやらチェーンを抑える支持ハンドルは
金属製で最も頑丈に
出来ているような感じ。、
おそらく鉄槌の打撃に耐えられるのでは。

しかし鉄槌の直径と、
ハンドルと燃料キャップの隙間は大差無し。
果たして打ち込めるのか?
ちょっとでも手元が狂えば
チェーンソウ本体を破壊してしまう。
緊張の一撃、ビクともせず。

2、3撃と打ち込むが、全く外れる気配無し。
5撃目、バリンと音を立て
金属製だと思っていたハンドルが割れた。
何と、強化プラスチック製だったのだ。
動揺した6撃目も逸れて、
燃料キャップを直撃。
一気にガソリンが流れ出し、最悪!

即、地元のホームセンターに駆け付け
部品を発注したものの
巨樹の怨念に憑依された仙人は、
この先まだまだ多くの難題を
投げかけられ
熾烈な戦いを余儀なくされるのである。

あれ、仙人の方にれそう!


果樹の苗木を求めて

迷ったが車とバイクでは大気汚染度が圧倒的に異なるので、着込んで完全保温にし
バイクで石和と御坂の境にある前島園芸まで往復50kmを走る。

石和と云っても西湖に出る若彦トンネルの手前なのでめちゃ遠い。
その上バイクにカーナビはないのでグーグルマップを印刷して、停車しては地図を確認と面倒なこと。
ラフランス1本(1200円)、甲州百目柿3本(3600円)、林檎富士3本(3600円)を 計8424円で購入。
帰宅後、苗木を半分に切って植樹。

掘り出した際に根が半分以下になってしまうので、苗木も半分に切らぬと枯れてしまうとか。
根の近くに接ぎ木の痕が残っているが、この部分に土を掛けるとそこから接ぎ木前の木の芽が
出てきてしまうので、土を掛けないこと。

この2点に注意し林檎畑に林檎、柿を植樹。
葡萄畑の梨の木近くにラフランスを植え、たっぷり散水。
果たしてこの苗木が結実するのはいつのことやら!
(11月22日の記録より) 



炎と土のembrassement


さあ、今年は
≪うんこ≫作り卒業して
轆轤の免許皆伝になるぞ!
(馬淵君の年頭所感)

初窯を祝う奥庭の陶房棚

今年は陶芸にち込んで
納得のいく作品を
ものにするわ!

(村上さんの年頭所感)
 
やや、形になったぞ!

「先生出来ました!」
まさか、と轆轤室を覗くと
ほんとだ!
均整のとれたカップが
轆轤の上に鎮座してるでは。

しかし底が厚すぎて
側面とのバランスを欠き
その上、土の水分が取れきれず
後日の焼成時に爆裂し、
周りの作品を傷つけ無残な姿に。

こうして馬淵君の初作品は
惜しくも、短命にして
お亡くなりになったのである。 
 
初作品にしては上出来




釉薬掛けした作品

黒織部と貝殻を砕いて作った乳白釉を入れたバケツに
撹拌スクリューの着いたモーターを沈め
スイッチを押す。

静かな振動が、胎動であるかのように
釉薬液を震わせ、嬰児のプレリュードを囁く。
さあ、もうすぐ大地と太陽の子が
やってくるぞ!
奥庭の枯葉の絨毯に、厳冬とは思えぬ、
暖かい光が燦々と注ぐ。
陶芸用テーブルを組立て、奥庭に出し
作陶した作品を並べ、釉薬掛けの準備をする。

蒼ガラスをアクセントに 


初窯の土とあんぶらっすまん
2015年1月11日(日)晴 朝8時山荘窯火入れ

今まさに、大地と太陽の抱擁・アンブラッスマンによって生み出されんとしている、
太陽系第三惑星の嬰児たちを紹介しよう。
左端に、燗が冷えぬよう厚めに作陶した徳利が観えるだろう。
実はその下に、もう一段棚板があって、そこに今回の目玉作品である大皿が隠れているんだ。

従って今見えているのは、二段目の小物類と三段目の大皿の一部。
二段目の徳利の上には、海牛みたいな変なフォルムの花器らしきものがあり、小さな壺、小皿、蓮華も見えるだろ。
問題の馬淵君のカップは、最初の作品だからと大切にして、二段目の中央に置いたので
この位置からは見えない。
実はそれが裏目に出て、この後爆裂し周りの作品に破片が飛び散り、酷い目に遭うことになるんだよ。



初窯に着火

1250℃に達した窯内部の炎

さて大物の皿の命運は!

ほら、これが二段目の
爆裂現場の画像だ。
1辺が割れている
三角形の皿の左に原型を
とどめぬ円形の破片が
あるだろう。

それが爆裂した馬淵君の
生前のカップだ。
辺りに飛散して破片が
小鉢や皿、蓮華等の釉に
ひっついているのが
解るだろう。

破片が着いた作品は
最早使うことは出来ない。
だから爆裂の危険性が
少しでもある作品は
窯に入れてはいけないんだ。
この判断を誤ったのは
仙人の責任だな。


二段目の馬淵、村上の作品は無残な姿

まー好意に解釈し
この爆発は、超新星の爆発と
捉えて、きっと再び
超新星のように、
煌めく星々を生み出すと
信じて、次回の
馬淵作品に期待しよう。


三角形の皿は村上作品
なのだが、これも
残念なことに、たたらで
立ち上げた1辺が
割れてしまった。

原因は皿の底面と
立ち上げた側面の接着が
不充分であったこと。
それと底面と側面のたたらの
粘着度が異り
乾燥速度に差が生じたこと。


三段目の大皿は度焼いたが失敗
 
一段目の大皿は様もくっきり
 
中川の小は綺麗に焼けた



窯内部の炎と呼応してえる木星のランチョンマット
を放つ木星
初窯を祝って乾杯!

大地と太陽の抱擁だって!
陶芸で使う粘土が
大地だってのは解るけど
炎が太陽ってのは

ちょっと行き過ぎじゃないかい?
窯の炎は石油が
生み出したんだぜ!

出ましたね!
そうイチャモン付けるのは
ワイングラスの下で
太陽の光を浴びて妖しく
煌めく山荘のシンボル・木星君。

解っているよ木星君。
窯の中の炎は
直截、太陽の炎でないけれど
元をただせば
やはり太陽の炎だと
ほんとは知っているんだろ?

嘗て太陽の光で育った
森や動物たちの生物遺骸が、
百万年以上の長期間にわたって
厚い土砂の堆積層に埋没し、


高温と高圧によって
油母 という物質に変わり、
次いで液体やガスの
炭化水素へと変化した≫
なんて実は
よーくご存じなんだよね。

それなのに敢て
イチャモン付けるのは・・・、
そーか、若しかすると
今、光り輝いている木星君の炎は
太陽の反射光でなく
自らの炎だと言いたいのかい?

ふんふん、そうなると
木星君も
初窯の炎になって
大地との熱いアンブラッスマン
を願っている、と云うことなのかな?
ちょっと無理があるけど
まーその創造主たらんとする
意気込みは
中々悪くないね!

それじゃ木星君の炎に乾杯!

炎となった木星にワインを注ぐ


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