雪の摩利支天岳に舞う混沌仙人


その1362ー2017年  弥生
乗鞍岳(3026m)を背景にシーハイルする混沌仙人
3月17日(金)晴 摩利支天岳(2872m)からの下山(左から剣が峰、蚕玉岳、旭日岳)

一昨日まで雪が深すぎてラッセルが酷く、手も足も出なかったが、
昨日になって2日続きの好天で新雪がクラストし、やっと登れるようになった。
稜線直下はガラスのようなカリカリの雪壁で、緊張の連続。

と云うのも実は今回山頂を目指すのは止めようと、、ピッケルもアイゼンも敢て置いてきたのだ。
つまり氷で、てかてか光る山をピッケルもアイゼンも無しで
登るのであるから緊張して当たり前。



Bing Imagesより


【Ⅰ】 マイペースで行ける処まで   吐蕃子བོད་ཆེན་པོ(Bod chen po su)


9時20分登山開始。
いきなり始まる急斜面を登り出す。もう10数年も以前、遠征の事前トレーニングを兼ね、山スキーを履いて乗鞍に挑戦したっけ。
位ヶ原がガリガリのアイスバーンで転んでは起きを繰り返し、ものすごいエネルギーを消耗した。
スキーなのに、歩いて下るより時間が掛かった記憶がある。
そんな懐かしい日々を思い出しながら、急斜面を一歩ずつ登る。

ラッセルはいたるところにあるので、心配はないが、なかなか思うようにはスピードが出ない。
先を行く隊長に呼び掛け、落ち合う場所を決めておく。
1時2時3時に下のスキーデポ地点で待ち合わせ。
これで、隊長は頂上を目指しスピードアップするだろうし、私はマイペースで行ける処まで行けばよい。
いつものようにトランシーバーがあれば、毎時間の交信が可能だが、今回はそれがない。





よーし今日はあの摩利支天岳に登るぞ!(左から摩利支天岳、不動岳、富士見岳)
ピッケル、アイゼンを持って来れば
頂を目指すのは当たり前で、
そうなると昨年の遭難事故で
完全復帰できていない遅い村上を
置き去りにすることになる。

晴れてさえいれば問題無いが、
一旦ガスに巻かれると
広大な雪原の位ヶ原では、
方向感覚を失い
遭難の恐れがある。

例えラッセルトレールが残っていても、
そんなものはブリザートで
一瞬にして掻き消えてしまう。

アイゼン、ピッケルが無ければ
幾ら無謀な仙人であっても
山頂を目指すことはあるまいと、
信じて(?)いたが、
快晴の紺碧の空が
秋波を送るのだ。

その上、剣ヶ峰の北に聳える
摩利支天までもが、
妖艶な雪の様な
白い肌(当たり前)を曝し、
事もあろうに
≪あたしを抱いて!≫
なんぞと囁くではないか!

シュカブラに描かれる一筋のラッセルトレール(右:摩利支天岳、左:剣ヶ峰)



【Ⅱ】 嘗てヒマラヤ山脈を歩いた記憶
   
自分のペースで登ると決めれば心が定まって、雪の斜面が愉しくなる。
急な斜面もゆっくりならば足の負担は思ったよりも大きくないようだ。
それでも後から登って来るスキーヤーにどんどん抜かされ、少し歯がゆくはある。
スキーコースの林道まで来ると乗鞍岳の美しい純白の山稜が手招いている。
今の私にはその頂まで登る力はないけれど、こうして雪の斜面を歩けるだけで充分に嬉しい。

夕べ想像だけしていた時はあんなにも恐くて、上手く歩けない自分、
斜度を克服できない情けない自分ばかりが去来して、逃げ出したい思いだったのに、
雪を踏みしめる足は、嘗てヒマラヤ山脈を歩いた記憶をしっかりと刻んでいる。
心の奥に甦って来る感覚、それはチベットの山々を登ったときの、未知への憧れと畏れとを伴った熱く密やかなうねりのような感覚、
生命の高ぶりとでも言えば良いのか、
自分が一個の生命体なのだという実感と言っていいかもしれない。




Bing Imagesより

剣ヶ峰(左(3026m)摩利支天岳(右(2872m)間の室堂平に迫る雲
3月17日(金)晴 位ヶ原上部の岩峰より

そうなるとあれ程登るまいと堅い決意をしてアイゼン、ピッケルまで置いて来たのに、
仙人は勝手な思惑を決意に重ねる。
「まっ、今日は高気圧に覆われているのでガスっても一瞬で、ブリザートに見舞われることもあるまい。

大体、村上は位ヶ原まで達することが出来るかどうか解らないし、
樹林帯を出なければ、少々吹雪いてもルートを失うことは先ずありえない。
どりゃ、摩利支天岳に登ってみっか!」



【Ⅲ】 シュカブラが美しい波模様

命が剥きだしで輝く時。
登るに従い大気の孕む冷気が身を包む。登りの汗がたちまち奪われるのが分かる。
長い急登を終えたところでザックの中から上着を一枚出して着こむ。
緩やかな斜面の所どころに岳樺が顔を覗かせている。広大な白い大地が広がる。
スキーの跡に従って歩いてみたら、一歩ごとに足首から膝近くまで潜ってしまい暫しのラッセルを味わう。

傾斜がほとんど無くなり、シュカブラが美しい波模様を描き、白い広大な海のようだ。
表面がカリカリ凍ってうっかりすると滑りそう。
山頂に向かって登って行くトレールがくっきりと刻まれ、登山者の姿が豆粒ほどに見える。
さすがにその中に隊長がいるのかどうかは確認できない。
それが確認できる処まで進もうかと思ったものの、時間を見ると12時半を回っている。3時間歩き続けた訳だ。

1時までは進もうかと迷ったが、足を過信することはできない。
それに下山時は最終的には、かもしかの急なゲレンデを歩いて降りなければならないので、時間の余裕が必要だろう。
位ヶ原の末端までではあるが、目標を達した。欲張らずに、下山しようと決める。
ザックの中のアイゼンを取り出し、装着するが意外に手間取って、手が冷たくなり痛いくらいだ。
こんな穏やかな天気であってこれでは、悪天の中では凍傷になってしまうぞと戒めながら、
昔からこの紐アイゼンには苦労したなと想い出す。




最後の岳樺(位ヶ原)

ゲレンデ上に聳える乗鞍岳

おいおい幾ら、なだらかな
ハイキングコースの様な
乗鞍岳だとは云え、
それは氷雪に覆われていない
夏山シーズンの話。

1年で一番積雪の多い3月に
アイゼン、ピッケルも持たず、
氷で武装した3千メートルに登ろうなんて
無謀どころか、
自殺行為に近いのではないか!


一瞬のスリップで
このコンクリートのようなカチカチな
氷の壁を滑り落ちたら、
ピッケルを打ち込んでの滑落停止も
出来ないし、アイゼンの爪を
立てることも出来ない。

とか何とか思い惑う振りをし、
休暇村始発の8時半のリフトで出発し、
12時45分には
摩利支天岳稜線に達し仙人は
よれよれになって
無事下山したのである。

右から摩利支天岳、剣ヶ峰、高天原

赤い屋根の位ヶ原山荘(位ヶ原から)


【Ⅳ】 1年前はギブスに松葉杖

アイゼン歩きは足にどうかと不安に思っていたが、雪面を踏む足は思った以上に安定して、また一つ難問突破の気分で嬉しくなる。
それでも絶対に転倒するようなミスを犯してはいけないと緊張しながらの下山である。
1年前はギブスに松葉杖、もう2度と雪山に登ることなどあり得ないだろうと覚悟させられたものだ。
それが今、頂上は無理でも、2000mを越えて登り続けることが出来るなんて、本当に夢のような事実だ。

足は決して快調という訳ではないのだが、自分にとっては此処まで回復できたことが奇蹟のようで、感謝して余りある。
歩くことは実に単純なことなのに、何事にも増して素晴らしいことである。
高みへ向かって一歩ごとに歩を進めることが出来れば、やがては宙へと登っていくことだってできる。
谷間に向かって一歩ごとに慎重に下っていけば、豊かな水が滔々と流れる大河にたどり着くことだってできる。



稜線からのシュプール決まったぜ!
3月17日(金)晴 天空と混沌仙人の反転合作

疲れが酷く顔面浮腫、全身の筋肉の痛みに襲われながらも、
≪生きていることは素晴らしいことなんだ!≫ 
なんぞとほざいているのであるから、72歳にもなって仙人は救い難き阿呆でしかないと
しみじみ思うのである。

下山後、かもしかゲレンデから夢の平までスキーを走らせ、休暇村に戻るため再びかもしかゲレンデに戻り、
休暇村に向かって滑り始めると、総てのリフトが停止。
地震を感知しての自動停止らしいが、数分遅れたら休暇村に連絡するリフトに取り残されたままになるところ。
1時間もリフトに放置されたら寒くて堪らん。
無事休暇村にもどり先ずは冷えた体を露天風呂にドボンと放り込む。



露天風呂にはビアじゃ!

標高2000mの登山口に立つ村上

月齢18夜の月が沈む
 ≪床に氷が張って危険につき
露天風呂は入れません≫
そんな莫迦な!
それでは外に出した足が凍るか
試してみよう!
と相変わらず仙人は救い難いのだ。
露天風呂の後は
よく冷やしたビアに決まってるじゃろが!
とレストランへ。
バイキング料理なのに
何故か3日目からは特別料理が
追加され食べきれない。

黄昏の乗鞍岳

3泊目から特別料理が追加



【Ⅴ】 人生の束の間の贅沢

転んだら起き上がり、光りに向かって歩いて行けばいいのだと大きな何かに励まされるようで、
歩ける幸せをもう一度確かめるように、雪面を強く踏みしめた。
隊長が下って来て合流できた。
位ヶ原までは登ったと知るや余程意外だった様子の隊長に、今の心境を伝えたいような気がしたが、言葉が上手く紡げない。

かもしかのゲレンデの端を垂直に下る。最後まで慎重に気を抜かずにと
長い斜面を降り切るまで緊張を緩めることなく無事に下山ができた。
スキーで休暇村まで、途中で1回転んだが、これも無事に起き上がれた。
夕陽が沈むのを眺めながら、深い充足感に満たされて透明な源泉に身も心も解されてゆく。

人生の束の間の贅沢、忘れられない1日となるだろう。




下山後の汗の結晶が黒シャツに珊瑚礁を描く
3月17日(金)晴 摩利支天岳下山後の仙人のシャツ

露天風呂に飛び込んでビアを呑もうかと、お気に入りの黄と黒のヤッケを脱いで吃驚!
黒シャツの背中に白く泡立つ珊瑚の環礁波がくっきり。
外海の激しい流れが珊瑚に激突し、飛沫を上げて舞い上がり描いた静と動の辺境。
山巓への意志を抱き60兆個の星々を駆け巡った血潮は、
繰り返し繰り返し肉体を打ち、嘗て海であったことを追想しつつ白波を蹴立て静と動の辺境に潮を吹く。

≪そこにさ、ほらさっき摩利支天岳から降りてきた画像を突っ込んでみたら!≫
ありゃ、又しゃしゃり出てきた原始仙人。
そうか、いつもは山荘の書斎でパソコンにへばり付いているが、今回はパソコン持参で来たので
お前まで便乗して付いてきたんだな。
解ったよ、やりゃいいんだろ!ほんじゃちょっと画像をちょん切ってと。
こんなんで、どうだい!



望遠カメラとPC,右の数千曲を入れたMP3と読書本


いえいえ、そんなことは決してありません。
今回こそは露天風呂三昧でスキーや音楽、読書を愉しみ、
まー時には雪の森を散歩して写真でも撮ってと
堅い決意で来たんです。

いけないのはあの摩利支天岳です。
仙人が誘惑に弱いのを熟知していて、
昼は勿論朝な夕なに、しきりに秋波を投げかけ誘うのです。
なにしろ未だ見習い仙人ですから、
心の修行が足らんのです。ハイ!
パソコンを休暇村に持ち込んで編集じゃ!

アイゼン、ピッケルを置いてきたのに
態々パソコンを持ってくるなんて、どうなってんじゃ!
さては3000mの冬山を甘く観ているな。

 
さて、ほんじゃ今日の編集でもすっか!





人影の絶えた雪の森を堪能

堅雪かんこ、凍み雪しんこ!
3月16日(木)晴 雪森散策

原始仙人め、どうしても一緒に行きたいと駄々を捏ねるんじゃ!
≪裸のお前が雪の森を散歩してたら洒落にもならん≫
と懇々と云い聞かせたのだが、返事だけはいつも≪ハイ!よく解りました≫
でもって森に出て、のんびり雪の森を逍遥していると、何やら気配。
後を振り向いても、だーれも居ない。

そういえばあいつちんぽこみたいに、大きくなったり小さくなったり、ひょいと森陰に隠れたりはお手のもん。
そこでこちらも木の陰になって擬態していると、ほーらやっぱ現れたぜ!



狐の尾を引いた跡が点々

豊かな森に抱かれた乗鞍岳

残照が描いた森の記憶

自らの足が産み出す可能性の大きさ、
人は翼の代わりに
足を以って自由の空間へ
飛び出すことが
出来るのではないかとさえ思う。

純白の大地、碧い空、
その境目を小さな命が
ただただ歩き続ける。
そうしてその行為が終わった後、



今日は牛留池まで散歩!

小さな命は大きな大きな力を授かり、
何か一つの壁を乗り越えて、
新しい世界への扉を
潜ったことに気がつくのだ。

チベットの未踏峰を、
ヒマラヤの高峰をただひたすら
歩み続けた時間が、
おそらく今に繋がっているのだろう。
宿した小さな結晶が
今も私の核に存在する。


窓から見える庭はしーん!

善五郎の氷瀑にも行ってみよう!

リフトに人影無し



【Ⅵ】 
新しい地平が見える

自分の中の弱さと強さに翻弄され辛くもあるが、厳しい山へ向かうといつもその葛藤が
避けがたい課題として私の前に待っていて、丸ごとの自分と対峙せざるを得ない。
だからこそ一歩が踏み出せたとき、生きる歓びが沸々と体の中を巡っていくのが実感できるのだ。
行動出来て良かった!その歓びを噛みしめながら、眼前に広がる高みからの風景をしみじみと味わう。

新しい地平が見える。ふとそんな気がした。
今までに観たことのない新しい風景が広がる予感,それはどんな色彩を放ち、どんな手触りをしているのか・・
心の奥底に眠っていたワクワク感が次第にせり上がり、光りの粒を吸収して、きらきらと輝く空間に広がり同化して行く。
何時か還って行く世界、その大きな広がりが自分を包んでいる安堵感と不思議な揺らぎが、
誰もいない広大な雪の斜面で、一瞬の幻想のように訪れた。



お日様がまっ白に燃えて百合きちらし雪をぎらぎら照らしました.
3月16日(木)晴 雪森散策


【Ⅶ】 動物の足跡が自在に森を

今日はスキーの半額割引サービスが使えないというし、
体を雪に慣らしたい気持ちもあるので、隊長とは別行動で、雪の森に散策に出ることとする。
フロントで散策コースの地図を貰うが、冬用のものではないから牛留池くらいまで行ってみたらとアドヴァイスされる。
のんびりと10時ころに外へ出る。
森へ入ると今朝歩いた跡は無いようだが、既にトレールが付いているので迷うこともなさそう。

気持ちの良い森の散歩になりそうで、どんどん歩く。牛留池には行かないで奥へ奥へと進むと、
白樺の原生林が続く美しい森が広がり、地図で確かめてみるとあやめ池に出た。
完全に氷結した池はどこまでが池か分からないほどだが、近くにはキャンプ場があり、夏場は賑わうのだろう。
とにかく何処を歩いても人っ子ひとりいない。
動物の足跡が自在に森を走っている。朝は曇っていた空もいつの間にか真っ青に晴れ上がり、雪の白さが一層眩しい。




リフトに人影は在りません

ほら此処にも誰も居ません

広ーいゲレンデは雲の遊び場
優雅なり!
広大な乗鞍岳を独り占め

人影の絶えたリフトに揺られ、
正面に乗鞍岳を見据え
早春の光を浮遊する。

スキーヤーの居ないゲレンデは
スキー場であることを
すっかり忘れ、乗鞍岳そのものに
なりきって仙人と戯れる。

さあ、この広大なキャンパスに
どんな線を描こうか?
先ずは小さな雪沓を履いて
「雪渡り」に出てきた四郎とかん子へ
連なる素描としよう。


鳥居尾根ポールバーンも仙人だけ
広大な雪のカンバスに
シュプールを描くスキーヤーが
居ないもんだから、
雲の奴、カンバスに翳を落として
お絵かきしている。

其処に頂から飛んできた風が
≪まーぜて!≫と一声。
ぐるぐる、グルグル雪面に幾つもの
輪を描いて
 ≪ほら、かまいたちよ≫

鎌鼬と呼ばれる竜巻は彼方此方
駆け巡り、やがて
リフトにまでやってきてご挨拶。
≪やーいらっしゃい!≫


複雑手術からの復帰スキー

ボーゲンが出来るようになった!




【Ⅷ】 5時間近い森の逍遥

ゆっくり歩いて帰りには牛留池により、再び出発点へ戻る。
まだ時間は十分にあるので、善五郎の氷爆を見学に行く。
ところがこの氷爆への階段が完全に凍ってつるつるの滑り台、恐る恐る滑らないよう降り滝壺の前まで行く。
午後は日が翳り鬱蒼とした感じだが見事な氷爆だ。一人だけ見物人がいた。

本日森で初めて出会った人だ。
帰路も滑らないよう慎重に登り返し、休暇村へ戻る。
5時間近い森の逍遥で得た心地よい疲れを、露天風呂に沈み静かに解しながら、何と
も豊かな1日だったなと思い返す。



乗鞍岳の高天が原にむ月!
3月16日(木)朝7時09分晴 月齢18夜の月 300mm長焦点カメラで
(右から高天が原、大日岳、剣ヶ峰

冬の槍・穂高を駆け巡った日々、その厳しい闘いの後にいつも訪れる山、それが乗鞍岳であった
ヒマラヤ遠征の隊員養成とチームワーク作りに、冬の槍・穂高は欠かせない。
特に最も雪の深い3月の槍・穂合宿では、人影の絶えた山稜で腰までのラッセルに喘ぎ、重いザックを背負って
凍てつき切り立った氷壁を登らざるを得ない。
長く苦しい闘いの終わりは、新穂高温泉か中の湯への下山で迎えることになる。

当然ながらザックには未だ予備食が充分残っており、このまま山に別れを告げ帰京するには未練が残る。
中の湯から乗鞍岳は目と鼻の先だし、新穂高温泉からは西穂高か安房峠を越えれば、乗鞍岳に出られる。
そこで冬の槍・穂高合宿の後はここ乗鞍にやってきて、森にテントを張ったり、
鈴蘭の欅山荘に泊まったりして、温泉とスキー登山を愉しんだ。

つまり雪の乗鞍岳は、厳しい槍・穂登山で疲労困憊した肉体を癒す山であったのだ。
ところがどうだ。その癒す山で恰もヒマラヤの未踏峰でも登った如く疲労困憊し、ヨレヨレになって下山。
そのヨレヨレ仙人の、いつもの聞き慣れた言い種には嗤ってしまう。
≪こりゃ、いいわい!態々ヒマラヤに行かんでも乗鞍で充分じゃ。安上がりでいいのう!≫
ほら、月齢18夜の月も嗤っているよ!



Index
next